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夏村晴明の非日常  作者: 空き缶
第二章 『異世界機関』
18/27

空亡

本日は4話投稿します。次の投稿は3時頃です。

 大地が流動する。

 人の体が異物を排除しようとするように、うごめく大地がアリスを押しつぶそうと四方八方から襲い掛かる。


 「【火炎割岩(オーバーフレア)】!!」


 魔術名を唱えると同時にアリスは地面を強く踏み鳴らす。すると、そこを起点に爆発が起き、襲い掛かってきた大地は根こそぎ吹き飛んだ。爆炎により生まれたマラドーナの影が蛇のように形を変えアリスを(とら)える。マラドーナは舞い上がった瓦礫を剣へと変質させアリスに向けて一斉掃射。無数の剣が雨となってアリスに降り注いだ。


 「………これでもダメか……」


 マラドーナが吐き捨てる。土煙の向こうでは紋様のようなものが刻まれた球体が剣の雨を防ぎ切っていた。


 「防護魔術……」


 魔術、錬金術、体術。自分が使えるあらゆる技はすべて試したが通じない。マラドーナは相手の強さに驚愕し、笑みがこぼれる。

 一方でアリスもマラドーナの持つ力に驚愕する。


 (まさかここまで魔術や錬金術を使えるなんて……術式は荒いけど術の発動に大切なイメージがしっかりとしている)


 故に、中途半端に回避はせず魔術を用いてことごとくを相殺した。


 「……ひとつ訊きたいことがる。貴方はサンジェルマン伯爵のクローンでしょう! 何故、私にそんな敵意を向けてくるの?」


 自分の両親を殺したサンジェルマンを恨むことはあっても、恨まれる筋合いなどない。ましてやクローンに敵意を向けられるとなると、なぜ敵意を向けてくるのか訊きたいと思うのは当然のことだろう。

 

 その問いに対してマラドーナはあざける様に答える。


 「ああ……やっぱり気づいてたんだ、僕の正体。――以前にも言ったけど僕が君を敵視するのは君からしたら理不尽以外の何物でもないよ、訊いたところで気分が悪くなるだけさ」


 「構わないわ。それが分かった上で訊いてるの」


 マラドーナは一度深呼吸をして答えた。


 「君の言う通り、僕はサンジェルマンの模造品だ。機関の実験を指揮する幹部たちは異世界に渡ることを目標に掲げている――」


 話をしているマラドーナは不気味なほどに落ち着き払っている。


 「『来訪者』、君は『裂け目』のことは知っているかい?」


 「……ええ、異世界とこの世界の間にある通り道のようなものでしょう」


 「そう。その『裂け目』は時折どこかに現れては誰にも知られずふさがり、また別のどこかに現れる――特殊な力を持った武器……日本になじみ深いものを上げるなら『三種の神器』とかがあるね!あれらはその裂け目を通ってこの世界に落ちてきた異物だ。君と同じくね」


 ほかにも例を挙げるなら神隠し。人がこつぜんと姿を消す現象は、人間がこの『裂け目』を通ってしまい異世界へと渡ってしまう現象だ。


 「それが、あなたが私に敵意を向けるのと何か関係が?」


 「急かすなよ。話すにも順序ってものがある。ともかく、機関の幹部連中はこの『裂け目』を利用しようと考えた。彼らは世界中に散らばって『裂け目』を発見、調査してきた。けど残念なことに大人が通れるようなでかい『裂け目』は中々できなくてね。彼らはさぞ苦い思いをしたことだろう――目的の場所は目の前にあるのに自分たちはそこへ行けない」


 マラドーナの話に熱が入ってくる。


 「まず彼らはこう考えた、『裂け目』を広げることはできないだろうかと。研究に研究を重ね、魔力を用いれば『裂け目』を広げられるとわかった。けど残念、この世界の住人である彼らは魔力を持っていない。どうすればいいか悩んだ果てに最低なことを思いついた――」


 「それが……」


 「ああ……自分たちが魔力を持たないなら魔力を持つ存在に『裂け目』を広げてもらえばいい。そこで目を付けたのがサンジェルマン伯爵、彼の存在は『裂け目』を調べていくうちに知ったらしい……吸血鬼はすべてヤツから始まった。なら吸血鬼を調べて解明していけば(おの)ずとサンジェルマンにたどり着く。機関は最低な執念をもって調べ上げ、ついにはクローン技術でサンジェルマンを再現するところまで成功した」


 マラドーナは本当におかしなことのように笑いながら話す。アリスはそれを見て、壊れた人形のようだと思った。


 「最初にできたのは失敗作。姿はそれっぽくできたが魔力を持たず、ろくな知能もない。次も失敗、知能はあるが魔力を持たない。また失敗、今度は人の形すら取れていなかった。そんな失敗を何度も繰り返して機関は手法を変えた、今度は胎児の状態で生み出し一から作ってみよう、と―――その目論見は成功したよ。胎児はスクスクと成長して五歳になったあたりで魔力を持ち始めた。それを見た連中は大喜びだ。で、問題はここからさ、彼らはその胎児になにをしたと思う? ―――まずは魔力を使用できるかの確認、彼らはそのために魔力を持たずに生まれた失敗作を、魔力を使って殺すように命じた。そのあとは他者でも同じことが可能かどうか、それを確認するために妙な薬を体に打ち込んで腕やら足を切り刻まれたっけ……」


 酷い話だと、アリスは思ったそう思うほかない。


 「僕は研究所にいた連中を恨んだ、そして油断している隙に殺してやったよ! そのあとなにも無い部屋に監禁されたけど、処分はされなかったなぁ。彼らからすれば僕は唯一の成功作……むやみに処分して二度と作れなくなりましたじゃあ大変だからね」


 「随分長いですね。まだ話は終わらないんですか?」


 「まあ、訊けよ。もう少しで終わるからさ! ――で、そこからなんだけどあいつらはビビりでね、幹部は姿を隠して僕に居場所を悟らせなかった。いくら調べても見つからない。そうなったら次は元凶だ、僕と同じ血の流れるオリジナル、サンジェルマン伯爵に復讐を考えた。けどこっちはもっと難しい、なにせ百年単位で行方をくらませてる化け物だ。この前、『亡骸の王』に居場所を訊いたんだけど使えないことに知らないと答えやがる。加えて、僕にはクローン故の短命さもあった。こうなったらもうお手上げだ……でもこのまま諦めるなんてできない。そこで次の復讐先として見つけたのが――」


 「私……か………」


 「その通り。伯爵と同じく異世界の魔術師である『来訪者』アリス・エインズワース……謝罪はする、君にとってこれは極めて理不尽なことであることも理解している。けど、この怒りを抱え込んだまま寿命が尽きるまで待つなんてことはできない、僕が殺した失敗作(ぼくたち)のためにも――お前はここで殺す!」


 話し終えると同時に、マラドーナはアリスに向けて魔術を放つ。数にして六つの風の固りがアリスの足元めがけて着弾した。土煙が舞い、アリスの視界がふさがる。マラドーナは大声で合図を出す。


 「ミシェル!!」


 上で観戦していた悪魔憑きの少女が不気味な魔力を解き放つ。

 

 「がっ……は………!!」


 世界が歪む。そう錯覚させられるほどの攻撃。

 マラドーナは両手で地面に触れると、そこに大量の魔力を流し込んだ。


 発光。地下に刻まれた巨大な術式がマラドーナの魔力を流し込まれたことにより作動したのだ。


 「アリス・エインズワース! わざわざ地面をぶち抜いて、この地下に落としてくれて助かったよ。おかげで自分でやる手間が省けた」


 それはマラドーナが考案し開発した、異世界にも存在しえない彼だけの大魔術。


 その名を―――


 「【空亡(くうぼう)】」


 魔力が爆ぜ、大気が悲鳴を上げる。

 それは、包み込んだすべてを消し飛ばす絶対にして慈悲の光。

 

 



大通りのところにそんな戦える地下空間なんてあったの! と驚かれる方もいるかもしれませんが、安心してくださいありませんでした。

あの地下空間はマラドーナが後から錬金術でせっせと作り出したものです。

大魔術の術式に関しても同様です。

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