113話 知略と武術と魔術と政治と学問
長らく投稿を止めていて申し訳ありません。本日からまた頑張っていきたいと思います。
本当に1週間に1話投稿していたらこれが37話目になっていたはずなんですが、、、
もっと精進していかねばと思っています。
元々自己満のために書き始めた小説ですが、これを読んで楽しんでくださる人がいてくださるというのは嬉しいものです。
王城で暮らし始めて数日。
ここでの生活にも慣れてきた。ちょっとずつだけど敬語も使えるようにもなった。
相変わらず迷路のようなところで道はわからないが。
今日もデーズハイルにカーテシーの練習で散々扱かれ、語学の勉強をした。
「今日はここまで。」
「え、なんで?」
「用事。」
ああ。
この前聞いたんだけど、デーズハイルは家庭教師もメイドも副業らしい。本業がなんなのか気になって聞いてみたけど教えてくれなかった。きっとその本業での用事なんだろう。
「わかった。9番、いる?」
「いますですの。」
「午後ってなんか用事ある?」
「いえ、サルト様は公表まで王族としての仕事は全て免除されておられますので、何もないですの。」
困ったな。暇になっちゃった。
自習するべきか?
嫌だな。別に勉強が好きではないからね。やらなくていいならやらない。
うーん。どうしようか。
そんな風に迷っていたら9番が提案をしてくれた。
「御兄弟様達にお会いになってはどうでしょうかですの。プライセ様はいつでもチェスの対局をする準備は整っておられるとのことですの。12番によりますとプライセ様の今日の午後の仕事は少なく、自由時間が取れるとのことですの。どうされますの?」
「そうね。行きましょ。」
「はい。ではプライセ様の自室まで案内しますの。12番を通じて連絡も入れておきますの。」
というわけでプライセとチェスをすることになった。
セレナルコの分身同士でなんか謎の繋がりがあることには気づいても気づかないふりをしておく。もう何でもありだな。
コン、コン、コン
「どうぞ。」
9番に案内された部屋に入ると、そこは別世界だった。
大量の棚で壁が見えなくなっていた。そこにありとあらゆるボードゲーム、カードゲーム、知恵の輪、ジグゾーパズルまで所狭しと飾られてあった。
チェスだけでも木彫り、石製、金属製、ガラス製と種類が豊富。
見たことがない形の駒のボードゲームもあった。
唯一壁の見える区画には世界地図が画鋲で留められていて馬の形や車の形をした小さな模型がその上を移動していた。
プライセは机に足を組んで座っていて丁寧にハンカチで立方体の物を拭いていた。
そんな彼の横にいたセレナルコの分身が彼に何か耳打ちしたら、突然机から飛び降りてお辞儀をした。
「こんにちは姉上。誘いを受けてくれてありがとうございます。」
その言葉にカーテシーをして返す。
「こちらこそありがとう、プライセ。チェスはルールを知っている程度の実力なのでお手柔らかにお願いします。」
プライセが持っていた立方体を置いて、机の直ぐ側の棚に手を伸ばして板と箱を何個か取り出した。
あ、よく見たらプライセが持っていた立方体、ルービックキューブじゃん。智数が初めて自力で解いた時の達成感にあふれた顔が懐かしいわ。
「姉上はどれがいいですか。木彫り、石製、それともガラス製でしょうか。」
ガラス製のチェスも気になるけど、ここは妥当に
「木彫りで。」
普通の木でできたチェス盤とイメージ通りのチェスの駒が机に置かれた。
9番か12番か見分けがつかなかったけど、どちらかがスカートの中から椅子を取り出して座らせてくれた。
「サルトが先行でいい?」
智数がチェスは先行の方が圧倒的に有利だっていつしか言ってたし。
「もちろんです。」
ということで対局開始。
智数がいつも右から4番目のポーンを2マス前に出す。
多分それが定石とかなのだろう。
それに倣って真ん中の白いマスにあったポーンを2つ前に進めた。プライセも同じように動く。
数分間互いに駒を動かし続けた。
某魔法学校の物語に出てくるウィザードチェスと違って動かすのは手動だし相手の駒を破壊したりしない普通のチェスだ。
「ナイトc7ですか。それならこちらは攻めます。クイーンc3、チェックです。」
「えっと、こいつをここ、で、こいつはこっちだったっけ。」
「あ、姉上。チェックされている時のキャスリングはルール違反です。」
「あ、そうだったか。てへっ。じゃあ、しょうがないからここのビショップを戻すか。」
そんな感じで指していたら千載一遇のチャンスが訪れた。
プライセのクイーンが簡単に取れるところに置かれた。
うん、確実にビショップで取れる。
流石にノーマークとまではいかないが、ビショップとクイーンの交換なら安い物だよね。
これは勝てるのではないか?
「いただきます。」
クイーンを取った瞬間プライセの口角が少し上がった気がした。
嵌められた!
いや、1番強いクイーンを取ったんだ。勝てるはずだ。
そうは問屋が下ろさないらしい。
「チェックメイトです、姉上。」
最後には負けた。
プライセが何を考えているのか分からないけど数十手先が読まれていた気がする。
「すごいです姉上。中盤は少しヒヤッとしましたよ。ですが、いくらクイーンが取れるといっても守りを疎かにしていけません。」
「クイーンを取らせたのはやっぱりわざとだったか。目の前の餌に釣られちゃったよ。すごいねプライセ!」
そんな感じでプライセとのチェス勝負は終わった。
結構面白かったからまたいつかしてみたいな。今度は他のボードゲームも試してみたいな。
「ではありがとうございました、姉上。」
「こちらこそありがとう、プライセ。」
っと、プライセの部屋を出るとまた暇になる。
今度も9番が提案してくれた。
「グリム様が本日、武術場にて槍の訓練をされているそうですの。」
グリム兄さんか。いい人だとは思うけどほんのちょっぴり苦手な相手なんだよね。
「そうなのね。それなら武術場に向かおうか。」
「では、案内しますですの。」
この広い王城とはいえ、どこにそんなスペースがあるのか。とか考えていたけど、階段をたくさん下りていくと自然と気付く。
地下だ。
たくさん歩いた。何個階段を下りたか分からない。大きな広い階段も通ったし、細くて暗い螺旋階段も通った。
地下は上階が小学生対象の迷路パズルのように簡単な構造をしていたのではないかと錯覚するほど複雑だった。蟻の巣という例えすら生ぬるい怪奇的な空間。
1つの廊下に数十個の扉が等間隔にある。それだけなら地上と然程変わらない。扉がどこに繋がるか9番にも分からないらしい。完全な乱数みたい。
ならずっと1つの扉を開け閉めしていたら目的地に着けるのでは?
って思ったけど、そう上手くは行かないらしい。人が通ってからでないと行く先は変わらないし、通って同じドアを通っても同じ場所に戻るだけだと言われた。どこを開いても扉だらけの廊下だから本当に移動しているのか怪しくなってくるけど。
37回目の挑戦で遂に扉を開けると鉄の撃ち合う音が聞こえた。
「はあぁ! これでどうだ! 閃々葬槍!」
「甘いですよ、殿下。流水受剣。」
その部屋にはグリムともう1人体格の大きい屈強な見た目のおじさん。
そんな2人の攻防は何も見えなかった。グリムの木槍は速すぎて何突きしたのか分からない。対するおじさんはそれが微かな障害にすらならないという風にそれを全てその手に持つ大きな木刀で受けていた。
理解できたのはそこまで。別格の戯れって感じ。
グリムを片手間に抑えておじさんがこちらに気づいて声をかけてきた。
「そこの2人は武術場に何用だ? 片方はセレナルコさんの分体じゃねえか。グリム殿下を迎えに来たのか?」
「私は8番ではありませんですの。サルト様に武術場を案内していますの。」
「おお。あなたが最近来られたという第2皇女様でしたか。お初にお目にかかります。俺は王国軍陸上戦部隊隊長のラーナー・ロトルセーグ。グリム殿下の相手をしながらの自己紹介になって申し訳ない。」
「ご紹介に預かりました、第2皇女サルト・セリンデブルです。気にしないでください。」
お互いにお辞儀をして自己紹介をした。カーテシーの練習を毎日続けているから、綺麗にできた自信はある。
「妹君が来られておられるのにまだ続けるのですか、殿下。水柔剛剣。」
今の会話の間もずっとラーナーに1撃入れようと責め続けていたグリムにラーナーが勝敗を決めに行った。
あの重そうな大剣を豪快に振り下ろしてそれを防ごうとしたグリムの木槍すらも真っ2つの叩き割ってグリムの脳天に当たる直前で止めた。
「参りました。」
グダっとした様子で座り込んだグリムがそう言った。
「殿下じゃ俺にゃ勝てませんよ。地力が違いますから。あくまで魔術を使わなかったらの話になりますがヘルファスとならいい勝負ができると思います。誇っていいですよ。まあ、俺はあと10年は殿下に負けるつもりはありませんので。ガハハハ!」
「ならば3年で超えてやる。待ってろよジジイ。」
「何度も言いますが俺はジジイと呼ばれるほど年は食っとりません。」
そんな師弟愛溢れる会話を横目に観覧席に着いた。
それからも2人は何度も模擬戦を行なっていた。どちらも速すぎて何も見えないのと決まってラーナーの勝利で終わるから途中から眺めているのに飽きたところに9番がスカートの中から眼鏡を取り出してきた。
「こちらは速いものをどんな人でも知覚できるように付与が掛かった魔道具ですの。」
そんな物があるなら初めから出してくれればよかったのに。とか思いつつもありがたく使わしてもらう。
その眼鏡を掛けた瞬間、さっきまで扇風機の羽根のように部分的にしか見えてなかった物が見えてきた。改めて見るとやはり相当なことをしていた。
グリムはとにかく速い。魔道具の力を持ってしても速いと感じる。
ラーナーの方はその速さに着いていけているだけでなく、大剣の無駄な動きを極力減らし、最適な角度、最適な剣筋、最適な力加減で槍を受け流している。熟練者の技って感じ。愚直に突き刺すだけのグリムとは歴然な差があるのが見てとれた。
なんて分かっているかのように評価してみたけど、ほとんどは9番の解説があって知った。
すごいという言葉でしか言い表せないほど語彙力がないもので。
武術戦は初めのうちは面白い。武器の動きを目で追えたら尚楽しめた。ただ、途中からは代わり映えのしない2人の闘いを見るにしても面白みに欠けると思って暇になった。
そんな時だった。
武術場の扉が開いて2人の女性が入ってきた。その片方が入ってきて早々に大声で言った。
「グリム! あんたね、武術場の鍵は8番に預けなさいっていつも言ってるでしょうよ。あの鍵がなければここまで大変時間がかかるのよ。」
入ってきたのはエリタナとそのお付のセレナルコの分体だった。
「悪かったよ、姉さん。以後気をつけるぜ。」
「それを聞くのはこれで10回目だけど、私は寛容だからね。許してやるわ。今回も8番から逃げてきたのでしょう? ちゃんと謝りなさいよね。あの子、あんたに突き放されすぎて自分のアイデンティティを見失ってグレちゃったんだよ。可哀想だわ。」
「分かりました。」
姉に叱られて消沈する弟。なんか前世の自分が弟妹たちを叱った時か投影される。
「あら、サルトが見に来てたの?」
「はい。久しぶりです、姉さん。」
エリタナがこちらに気づいたようで話しかけてきたから、軽くお辞儀して返した。
「姉さんはどうしてここに? そのセレナルコは何番? それと鍵って何の話?」
「ふふ。質問が多いわね。まず、私の部屋だと具現化できない大きなものの絵を描いたからもっと広い所を求めて来たわ。それとこの子は私の侍女のナーちゃん。セレナルコの7番目の分体だからナーちゃん。そして、えーっと鍵のことか。王城の地下は扉がどこにつながってるか分からない太古の昔からの迷宮なんだよ。その行き先を指定できる魔道具がこの鍵。」
エリタナがどこからともなく出してきた筆の尻をグリムに向けた途端、グリムのズボンのポケットから古びた鍵が飛び出てきて電灯に集まる虫のようにエリタナの手元に吸い込まれていった。
「最初の扉に鍵穴があったでしょ。あそこにこれを挿せば武術場にすぐに来れるのよ。だから普段はセレナルコたちの共有収納の中に保管されてるはずなのに、グリムが8番を放って1人で来るものだから鍵なしでここまで来ないといけないのよ。」
そうだったんだ。
「そうだったんですね、サルトも気をつけます。と言っても、まだ9番がいないと王城のどこに行こうにも迷子になるけど。それで部屋で具現化できない大きなものの絵を描いたというのはどう言うことですか?」
「それなら、今からナーちゃんに出してもらうよ。」
そうエリタナが言うと7番はスッとスカートの下から大きな長方形を出してきた。
キャンバスだ。
目算は苦手だけど大体横25mの縦20mくらいだと思う。そんな大きなものがどうしてスカートの中に入るのかは謎だ。
目を見張るのは大きさだけじゃない。その絵には帆船が描かれていた。筆のタッチとか長さの比率とか、そういった絵の技術はさっぱりだけど、暴れ狂う波と荒れた天気の中こちらへ向かってくる帆船の躍動感は半端ない。
「皆、高い観覧席に移動して。」
エリタナの指示に皆、すんなり従って移動した。エリタナは皆が揃ったことを確認したら詠唱を始めた。
「我が魔力を使いて我が前の絵を現実のものに顕現せしめんことを、ピクチャーマティリアライゼーション!」
その瞬間、突風が吹いた。キャンバスから海水が溢れ出た。風に乗った雨粒が顔に襲い掛かる。
ギギギという音を立てながら、帆船が絵から飛び出てきた。
木の甲板には人は誰もいない。幽霊船てやつだね。2本の柱にかかるマストは風に押されピンと張っている。日本のクルーズ船とかと比べると小さい気がするけど十分大きい。
もうそこは武術場なんかではなかった。もう一生到底見ることのないような景色がそこに広がっていた。
「すげえ。」
「すごーい。」
グリムと2人、感嘆の声が同時に漏れた。
魔術の天才を自称するだけのことはある。こんな魔術は見たことがない。
2分ほどその船が波に踊らされているところを眺めていたら、
「今日はこんなもんだね。」
って言ってエリタナが倒れた。同時に船も海も消えた。
「えええぇ!?」
1人焦ってると、7番がエリタナを背負った。
「エリタナ様はいっつも夢中になりすぎると魔力切れを起こすまでやっちゃうんやさかい、困りますんよ。今日はグリム様とサルト様にいいところを見せたい思うっとったんかも知れへんけど、こんなザマじゃ逆にダメな姉に見られてまいますよ。」
そんな小言を言いながらキャンバスをスカートの中に捩じ込んで武術場の扉を出ていった、にやけ顔のエリタナを背負って。
その後をついていくようにグリムとラーナーも帰っていった。
「サルトたちも行こう。他の兄弟のところにも行きたい。」
「では、カーフェル様のところへ向かいますですの。あの方は忙しいので数分ほどの滞在になりますが。」
「うん。案内して。」
入る時は大変だった扉だらけの地下は出る時は実にあっけなかった。武術場を出たところの廊下にあった鍵穴のある扉にさっきグリムが持っていたような鍵を鍵穴に挿して開くと地上に出れた。
そこから9番についていったらとある部屋に着いた。
ぱっと見はプライセと自分の部屋と変わらない。
コン、コン、コン
ノックをした。
が、
中から返事がなかった。
その代わり中から扉が開けられた。
あ、やべ。やっぱり大事なお貴族さんとかと話してる最中だったのかな。と思ってけど杞憂に終わった。
中から出てきたのはセレナルコの分体だった。ちょっと悪い笑みを浮かべていた。
「あぁ、開けないでくれって頼んだのに。悪戯はやめてください4番。」
その声の主は地面に散らばっていた大量の書類を必死に集めていた。
「ええっと何があったんですか。」
状況が掴めないから聞いてみる。
「4番から君が来るって聞いてね。こんな散らかった部屋を少しでもマシにしようとしていたら君がきてしまったってわけだ。少し待たせておいてと4番に頼んだのに悪戯心の強い子でね、開けてしまったってわけだ。」
「そんなことが。サルトは散らかっていても気にしませんよ。」
実際前世の部屋は化学の蔵書とか脱ぎっぱなしの白衣とかが落ちていて足の踏み場がほとんどないものだった。実験器具は危ないから全部棚に丁寧に収納されていたけど、この部屋とあまり変わらない状態だったと思う。
「そう言ってくれると助かるよ。テーブルにお茶が飲めるスペースは開けておいた。」
ちょっとお話をしようかというその時。
「主人に迷惑をかけるなど言語道断なのですの。チーフに言いつけますですの。」
9番の怒号が聞こえた。それに気圧されて4番は完全にさっきのグリムのように肩落としていた。
そこから9番のメイドとはいついかなる時も主人の意にそぐわないことはすべきではないという説教が延々と続いた。
最初の怒号はびっくりしたけどそれ以降は関係ないことだということで2人でお話をした。
お茶を飲んでいると机の端に置かれていた法案の書かれている紙が気になった。
『未亡人の一夫多妻についての法律改定案』
と書かれていた。
聞いてみると、
「この国は基本的には一夫一妻制だろ。ただ法律上は未亡人なら2人目の妻として娶っても良いということになっているんだ。もちろんお互いの合意が必要だがな。それは数代前の国王と王妃の間になかなか子供ができず、2人目の妻を迎えるかどうかという話になったからできた法律だと教えられた。結局その国王は王妃との間に子供ができ、側室との間にも子供ができ、ということになり少々王家がややこしくなった。結局王妃との間の子が国王に即位し、側室の子は分家という形で今のセリンデル家やセリステラ家の初代当主となった。そんなわけだがそれ以降この法律が放置されたままでね、最近になって改定案が議会から届いたって感じだよ。」
てな感じらしい。
分かったような分からなかったような。
政治って難しいんだね。
言語の勉強は順調かとか、王城生活に慣れてきたかとか、そんな優しく心配してくれるよな質問をたくさんされた。
王城での生活がどれほど楽しいか、デーズハイルの授業のことなど。たくさんのことを話した。
結局40分くらい居てしまった。
9番の4番への説教が長かったんだ。うん、そういうことにしておこう。
「長いこと滞在していて申し訳ありませんでしたの。4番には悪戯は控えるようにガツンと言っておきましたですの。」
「ありがとう、兄さん。また来ます。」
そういってカーフェルの部屋を出た。
「今度はアルヴェイン兄さんのところに行きたい。」
「そうおっしゃられると思いまして既に連絡は入れています。」
有能だよ、このメイド。超有能!
てな感じで、アルヴェインのところに向かった。
みんなと変わらない扉の部屋。
コン、コン、コン
これまで通りノックをする。
「どうぞ。」
「失礼します。」
その部屋は1言で言うと『普通』だった。
最初の家具の配置から何も変わっていない、完全ノータッチ状態。
今までの入ったことのあるプライせとカーフェルの部屋に比べると個性がないって感じ。学問が好きって言うからもっと本とか学会の資料とかが置いてあるかと思っていた。偏見だったけど。
アルヴェインはデスクでせっせと仕事をしていた。なんか紙に目を通しては判子を押していっていた。
「久しぶりだね、サルト。遊びに来たのかい?」
「お話しに来たよ。」
「いたいお茶、淹れちゃるけん、ちょっと待っときまい。」
「ああ、よろしく。」
アルヴェインの側近のセレナルコの分体は訛りが強すぎて何を言ってなのか分からないけど、お茶を淹れてくれるということでよろしいのだろうか。
「何か困り事があって相談しに来たってわけじゃないんだな。」
「ただお話に来ただけ。」
「そうか、勉強は順調か?」
「うん。デーズハイルの授業にも慣れてきた。」
なんのかんの色々話した。魔術学院でどんなこと学べるのか、魔術学や魔工学について。1番面白かったのは魔法薬学について。
化学の実験で薬品を扱うのに似てるっていうのなか。化学反応には化学エネルギー、熱エネエルギー、電気エネルギーなどが関与してくる。その化学反応を活用しって現代日本では薬を作ってきた。それに魔力エネルギーというものが関わってくる。
どんな世界でも未知で不思議な現象というのは心を擽るものだよね。
「イメージしづらいかもかしれんが竜の血というのは魔力が豊富に含まれているから、マナオドソウから作られたマナポーションに混ぜると魔力回復だけでなくでなく、体力回復、疾病改善などの様々な効果がある万能薬に成るんだよ。素材が素材だから高価なだけどね。面白いだろう。他には……」
自分の知識を自慢したいという気持ちが伝わってくる。こっちはそれを知りたいという知的好奇心でいっぱいなので嫌な気はしないけど。
たくさん話した。6番に出してもらった紅茶が冷えてくるくらい長時間、熱心に話をした。
あれ? そういえば今日は勉強の暇を貰えたから兄弟達に会いに来てるはずだったような…。面白くて学問についてたくさん話しちゃったよ。勉強は勉強でも化学と薬学は別腹だよね。そうよね。
「今日は色々教えてくれてありがとう、中兄さん。」
「中兄さん?」
「うん。アルヴェイン兄さんっていうと長いから。上兄さんがカーフェル兄さん、中兄さんがアルヴェイン兄さん、下兄さんがグリム兄さん。」
「そういうことか。私は構いませんが。グリムがどう言うか。グリムは自分の認めた相手以外には下に見られるのは好まない性分をしているからな。下兄さんと呼ばれていい思いはしないだろうね。」
「そっか。うん、そこは気をつける。」
というわけで中兄さんとのお話も終わったことだし、そろそろメインディッシュに。
我が愛しの弟と妹に会いに行こうではないか!
今回はまたすごく長くなりました。
当初の予定より伸びたからサルト編の話数はもっと伸びるかもしれません。
ミロクの方がうちと考え方が似てて書きやすいのです。あ、別にうちは縄で縛られて擽られたいとかそんな歪んた性癖の持ち主ではありません。女装趣味もありません。
変人である自覚はありますが、決して変態ではありませんので勘違いしないでください。
頑張って明日明後日には次の1話を投稿したいのですが、どうなるかはわかりません。




