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71話 フィールドワーク(ゼノス視点)

43話の後書きで、

『2000から500桁の巨大数。』

という文がありましたが、正しくは5000桁です。

本文の方は正しいので気づいた人はいないのではと思いますが、直しておきました。

ミロクは感覚で大体5000桁と言っていますが、魔力量が膨大すぎて全然正確ではありません。


作者、つまり、うちの設定した魔力量は正確には5895桁です。

10の895乗の違い。

ミロクの感覚は大外れですね。


階乗される前の魔力量も2000ちょうどではありませんので正確な値を求めたい人は電卓やウェブサイトやAIなどを活用して頑張ってみてください。

答え合わせは次回、73話にて行います。

ゼノス視点


このクラスを担当し始めてから1ヶ月半。


俺の担当する1組はフィールドワークでC級魔境の『クラゲの巣窟』の探索をすることになった。場所や課題内容は生徒が決めて俺ら教師は軽く確認して可能かどうかを見るだけだ。そして、ハンターズギルドのクラゲの巣窟支部のギルドマスターに4日間クラゲの巣窟に入るハンターの人数に制限をかけてもらった。生徒が他のハンターと揉め事を起こしたら面倒だし。

少し危険はあるが、このクラスメンバーなら大丈夫だろうと判断した。


フィールドワーク初日。


馬車で移動し、生徒が護衛をしている。

そのまま特に何も問題がなくクラゲの巣窟に着いた。


収納魔術師がいない班にはアイテム袋を配って生徒たちを送り出した。


流石に初日でジェリーフィッシュキングとアリゲーターレックスを見つけて倒してくるとは思えない。



いや、ミロクならやりかねない。あいつの底が知れない。

大人でも苦戦する魔物を魔術なしで軽々と倒してしてしまう。


魔法戦でも実技試験の成績、2位のルナと3位のソーナを圧倒している。

ルナとの勝負は、攻撃系魔術を使わず、収納系魔術と防御系魔術を応用してルナの攻撃を全て無効化し、射ち返して勝利。

ソーナとの勝負は、またもや収納系魔術と防御系魔術を活用して難なく勝利。


彼の攻撃方法は脅威度7のグラトニースライムに似ている。

相手の攻撃魔術を吸収し、そのまま射ち返す。簡単に聞こえるが、できる人は限られているだろう。熟練の時空魔術師、しかも魔力量が多い人でないとできないだろう。

基本的に魔法戦は、初めに大きな攻撃をして一気に決めるか、なるべく魔力消費を抑えて攻撃と防御を使い分けて慎重に隙を伺うのが鉄則と言われている。


だから、人族がこんな戦い方をするのは、相当珍しい。

ミロクが、固有属性の使い手でなかったら間違いなく使わなかった戦術だ。


だが、容易に使えるようになると厄介な戦術でもある。


加えて、鉄扇でアーノルに勝ち、剣術部部長のルーとやりあえるくらいの武術の力があるのも知っている。

アーノルとの勝負もこっそりと見学さしてもらったが、2人とも国の武道大会に出場してもそこそこいい成績を残してくるだろう。

アーノルは剣速を追求した剣術。

ミロクは細かい間合いを意識した軽い身のこなし、加えて鉄線の見た目からは想像もできない重い攻撃。


それぞれに強みがあり拮抗していたが、最終的にミロクの勝ちとなった。


俺とまともに勝負出来そうな1年生は初めてだ。

あの鉄壁は破るのは骨が折れそうだ。



それと、もう一人気になる生徒がいる。実技試験の成績は6位だが、ミロクと同じで、固有属性の使い手だ。


よく分からんが鉄や銅などの物質を作り出したりするみたいだな。あとは入学時に行ったクラス分け試験で使っていたような魔物を溶かす液体を出す事もできるみたいだ。


彼女が使うあのものを溶かす液体についてリーナ先生に聞いたが、

「魔物を溶かす魔法薬ですか? 大抵の物質を溶かせる”デソルージョン”っていう魔法薬がありますが、材料の調達が非常に難しく、すごく高価で取引されますよ。高すぎて生物の表皮だけを溶かす魔法薬、”エディパーモリシス”の方がハンターなどには人気ですね。私は1度だけ”デソルージョン”を仕入れることができましたが、真っ赤なドロッとした液体でしたので、先輩の言うような無色透明な液体とは違うものだと思います。ですので、先輩の生徒さんは私の知らない魔法薬を自作したのだと思いますよ。先輩の力になれなくてすみません。」

と言われた。

セリンデブル王国で1番と言われている魔法薬調合師が知らない魔法薬を魔術学院に入る前に自作したとなると数百年に1度の天才だとしか言えない。


それに、彼女の得意属性の権能から考えて、この前の実技試験では手を抜いていたように見えた。

彼女には実力を隠す理由があるのだろうから深掘りはしないことにした。




結局、初日にジェリーフィッシュキングかアリゲーターレックスを取ってきた班はいなかった。

そりゃそうだ俺だって1日で見つけて倒せる自信はねえ。




2日目もミロク班とルナ班がジェリーフィッシュキングを生け捕りしてきた。急所がないジェリーフィッシュキングは魔力切れを待って生け捕りしたほうが連れて来やすいからな。




1番大変だったのが3日目だ。ミロクとルナの班がシャークロードに襲われそうになったらしい。

それぞれのリーダーが足止めをしてるらしい。


ルナ班はカルトス先生がルナと共闘して撃退できたらしいが、ミロク班には先生の中でも1番戦闘能力の低いローレル先生をつけてしまっている。


俺の予想ではミロクはローレル先生より強い。というかローレル先生は付与魔術師としての力が評価され、パレス学院の教師に就任できたが、Fランク程度の実力しかない。

ミロクがいる班だからとローレル先生を配置したのが失敗だったか。


2人がかりでもシャークロードに敵うとは思えない。それにローレル先生はサボりがちで、昨日と一昨日の報告を聞く限り水深40m以上は潜っていないと推測できる。


今もルナ班はカルトス先生から報告があって、ミロク班はミロクが足止めしている間に逃げてきた5人から話を聞いた。学院に戻ったらマイル学院長と学院の精霊に報告せねばならんな。


脅威度8のシャークロード。いくらミロクと言えど村1つ破壊するほどの威力のある攻撃をする魔物に勝つことはできないだろう。

ここは俺が行かねばならんのか?

だがこの集合場所に教師は俺しかいないからな。ここの安全を優先すべきか?


そうこう考えてるうちにまさかのミロク本人が集合場所に来た。


シエラがミロクに抱きついていた。凄く心配したんだろうな。

ミロクに話を聞くところではシャークロードを少し足止めして逃げてきたという。

少し気になる点はあるが生きて帰って来たから良かった。



そう安心したのも束の間。


俺のスキル『接近感知』に反応があった。巨大な物体がもの凄いスピードで飛んできていた。


ヒュードーンバシャーン


着弾点は少し離れていたが、湖に落ちたから大きな波が来るだろう。


「アースウォール」


取りあえず津波の対処だけして生徒の安全を確かめるのが第一だ。


ミロク班、ルナ班、セロ班、ソーナ班はここにいるから無事だな。

アーノル班とサルト班にそれぞれ付いているスヴェル先生とリービル先生は少し変わっているが戦闘においては俺と同等かそれ以上だな。


スヴェル先生は攻撃系魔術は少し不得手だが防御と支援に適した魔術をたくさん会得している。

リービル先生は驚異的な魔術構築速度と高火力の攻撃魔術を使って、闘うならば厄介な相手だな。


心配はないだろうが⋯


数分後には魔法回線で両班の担当先生から無事だという連絡が来て安心した。


シャークロードに巨大隕石に、今日は本当にトラブルが多過ぎる。

今日はもう、探索続行はできないと判断して、アーノル班とサルト班には集合場所に戻ってもらうように連絡した。


集合場所に全員揃ったことを確認して、さっさと生徒を全員テントに戻らせた。


それから、俺はスヴェル先生とリービル先生と隕石のところに行った。

ただの自然現象かもしれない。が、人為的な魔術の可能性もある。

後者の時が危ない。何が起こるかわからない。何らかの要因で爆発する可能性もあるし、湖に悪影響を及ぼすかもしれない。


俺ら3人は鑑定系のスキルや魔術は持たないから、見るだけじゃ何もわからない。

「アースランス!」

「ハッ!」


俺の大地魔術とリービル先生の無詠唱の暗黒魔術で隕石を傷つけようとした。スヴェル先生がいつでも防御障壁を張れるように準備してくれていた。


俺が使ったアースランスは地面から土の針を突き刺す魔術。

リービル先生が使ったブラックアローは闇の矢を射ち出す魔術。10本出してきて一斉に隕石を襲った。

傷1つつかなかった。爆発する可能性を恐れて弱めに攻撃したからかもしれん。


「もう一度。アースブロック!」

「ブラックアロー!」


先程より強い魔術で壊そうとした。

今回は巨大な土の塊を出して押しつぶす魔術、アースブロックを使った。

リービル先生も闇の矢の本数を増やして30本出してきた。


自然現象による隕石なら、今の攻撃で確実に割れている。

そのはずなのだか、割れなかった。その上、少し欠けただけで割れそうにない。


とりあえず俺らの中では魔術によって生み出された隕石であり、自然現象ではないと結論づけた。

そして、刺激しても特に強い魔力反応を見せたりしなかったから、爆発したり、異物を放出する可能性は限りなく低いということも分かった。




最終日の4日目の朝、生徒を集めて、念のため、隕石には近づかないよう伝えて、送り出した。


今日は特に大きな事件は起きず、全班が上々な様子で魔物を提出してきた。


結果、アリゲーターレックスとジェリーフィッシュキングを両方提出してきたのは、ミロクの班のみ。

ジェリーフィッシュキングのみを提出してきたのはルナ班、サルト班、ソーナ班。

アリゲーターレックスのみを提出してきたのはセロ班。

どっちの提出できなかったのがアーノル班。


だいたい予想通りの成果だ。


アーノル班はリーダーであるアーノルが得意属性が火炎属性の剣士だから、クラゲの巣窟内ではどうしても弱体化してしまう。その上、残りの6人の班員も、半分が火魔術使いという、バランスが悪すぎる上に地の利が相手に傾いているパーティーだからね。

どうしても残りの3人に頼りきりになってしまうパーティー構成をしているからこの結果になって当然だと思う。


セロ班も、納得の成果だ。

リーダーのセロが魔力を体外に放出できない人だから、炎や土を打ち出す魔術が使えなかった。そして魔力嚢の中に魔力を溜めすぎると体に毒なので、吸魔の腕輪という魔導具で魔力を吸い出してもらって生活していたらしい。

だが、要は体外に放出せずに魔力を使えばいいのだから、その魔力を身体強化魔術に使ってみろと俺がアドバイスしたら元々自衛のために剣術を少しやっていたというのもあり、みるみるうちに強くなって気づいたら実技試験で5位を取れる力の持ち主になっていた。

班員も水魔術師と回復魔術師、土魔術師、風魔術師、収納魔術師というバランスがいいパーティー。


ソーナ班も、アリゲーターレックスはそもそも見つけるのが難しい魔物だから、見つからなかっただけで見つければ討伐は可能だと思う。

リーダーのソーナが強すぎる。彼女の両親が共にBランクハンターで幼い時から毒魔術のいろはを教え込まれたのだろう。ミロクとの魔法戦の時もそうだったが、魔術の制御が上手い。魔術の制御の能力だけを評価するなら第1学年で1番だろう。

その制御能力で水の中でも毒の液体が周りの水にとけ出すことなく相手に攻撃できるみたいだ。そのため、水中でも陸上とほとんど強さが変わらない。使える魔術も多く、魔力量もおそらく学年で、ミロクについで2番目に多いだろう。あの毒を喰らったら大抵の生き物は死ぬし、Cランク程度の実力はあるかもしれない。

毒が回るまでに時間がかかるから、基本的に魔物が絶命するまでの時間で評価する実技試験ではどうしてもルナより低い評価を受けてしまうが、直接対決ではルナより強い。


ルナ班も、ソーナ班と同じような感じだな。

ルナの虹光魔術は水の影響を受けないし、魔力量もミロク、ソーナ、セロについで4番目に多いと思う。

班員は水魔術師、土魔術師2人、風魔術師2人、光魔術師。と、まあまあなメンバーだ。


サルト班は、メンバーが充実している。全員の実技試験の成績が15位より上で、特に、強力な攻撃系魔術を使う生徒で構成されているからアリゲーターレックスも見つけさえできれば討伐は可能だっただろう。


最後に、ミロク班は、6班の中で1番バランスがいいパーティーだろう。

防御、回復、収納ができる鉄壁リーダー、4元素の火・水・風・土を使える器用貧乏、闇魔術師、魔道具使い、探索魔術師、料理魔術師。足止めと守りをミロクがしている間に2人が攻撃をする。それで大抵の敵は倒せる。

そしてこの班の最大の利点は、魔道具使いのシエラと探索魔術師のヘレネがいることだろう。この2人がいるだけで索敵が一気に楽になる。ジェリーフィッシュキングとアリゲーターレックスの両方を討伐できたのはこの2人の力も多いだろう。

それと料理魔術師のマヤルは戦闘では貢献できないが、美味しい料理が食べられるというのは大事なことだ。

他の班は取れた魚や肉を焼いて食べているのに対し、ミロク班だけすごく美味しそうなスープを食べていた。美味しい食事というのはこのフィールドワークはもちろんのこと、ハンターや騎士が外で活動するを上でとても大事な要素だと俺は思う。

だから、ミロク班はパーティーとしてとても優秀だ。


そんなこんなで4日間のフィールドワークが終了した。

本当に生徒が皆、無事に帰って来れたよかった。

ゼノス先生視点の話はこれが2回目ですね。

83話にまたミロク以外の登場人物からの視点の話をするつもりです。誰か予想してみてください!

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