67話 帰るまでが遠足です
「起きて。ゼノス先生が緊急集会開くって。」
最終日の4日目。
昨日の彗星の件で緊急集会が開かれることになったらしい。
つまりうちのせいだ。
「緊急集会を始める。昨日の隕石は偶然降ってきたものとして教師の間では結論付けられた。幸い、怪我人も死者もいない。一応、あの隕石には近づくな、近づいたら何が起きるか分からん。いいか? 報告と注意事項は終わりだ。それじゃあそれぞれの班に分かれて湖の探索を続けろ。解散!」
ちょっと制限が増えてしまったがとりあえずは今まで通りやっていこう。
ダイヤを迎えにテントに一度戻ると、巨大なヘビと戯れていた。
長さ10mはあるんじゃないかな? 脅威度5のフレアサーペントだな。火属性の魔術を得意とするヘビ型の魔物だ。クラゲの巣窟の近くに住んでいるからか、こいつ水魔術も習得してるらしい。
ダイヤが楽しんでるのがわかる。
友達の友達は友達だよな?
「数学魔術・友愛数、220、284」
うん。うちに敵意が無い分、簡単に懐いてくれた。そこからはダイヤに巻き向いて一緒に行くことになった。仲間が増えて嬉しいな。
「名前は、コーダで行こう。」
今日はアリゲーターレックスを早く探すために道中の魔物はダイヤのスピードで闘わず、湖底に着いた。
それから、移動しながらアリゲーターレックスを探すこと20分程、ついに見つけた。長さは4mくらいで見た目は地球にいる鰐と全く一緒だ。違う点といえば水魔術と闇魔術を使ってくることだな。
早く終わらしたかったからな。水魔術と闇魔術の攻撃をスクエアで無効化して、円周率πで首を切ってやった。
瞬殺だった。
「ミロク、そんな攻撃魔術手に入れてたのかよ。脅威度6が真っ二つやん。久々にびっくりしたよ。」
シエラがそう言っているが、残りの4人はびっくりしすぎて声すら出せていない。
まあ無理もないか。
アリゲーターレックスを収納してパパッとその場を後にした。
アリゲーターレックスをゼノス先生に提出して、雑魚狩りを始めることにした。
「集合時間までまだ3時間程あるからな。カレールをたくさん貯めるぞー!」
「「「「「おおーー!」」」」」
うんうん。 気合入ってるね!
そこからちゃくちゃくと雑魚魔物(雑魚と言っても脅威度2から4だから一般人からしたら強い魔物だが、)を狩っていき、先生に提出した。
このフィールドワークでのうちらの戦績は、
脅威度2が20匹
脅威度3が26匹
脅威度4が17匹
脅威度5がジェリーフィッシュキング1匹
脅威度6がアリゲーターレックス1匹
脅威度8がシャークロード1匹
与えられるカレールは(脅威度)×(匹数)×(死体の質(10段階評価)×(10カレール)で計算される。
今回は合計16290カレールもらえた。6人で分けて1人2715カレールずつ儲けた。
シャークロードは提出していない。そもそもシエラにすら見せていない。
班員と先生にシャークロ ードをどうしたと聞かれたときは少し足止めしてからタクシーで逃げたと説明した。シエラだけは騙せた気がしないが。
収納に入れておけば、そのうち役立つだろう。
学院に帰る時間が来た。
皆が馬車に乗っていく。
帰りの護衛は行きと順番が逆らしい。
セロ班からの護衛交代の報告が入るまで暇だってことだな。
因みにダイヤとコーダは班員以外誰にも明かしていないので、気付かれない程度についてきてもらうことにした。
そういえば、新しく手に入れた魔術を1つ検証してなかったな。
「数学魔術・ユークリッド空間」
目の前に見える景色が突然変わった。座席に座っていたうちは尻もちをついた。
うちが今いるのは端が見えない明るくも暗くも暑くも寒くもない空間だった。
地面と、前と左にある透明な壁のようなものには、1メートルおきに格子状に線が引かれている。
一度戻らないとみんなが心配するな。
「帰還!」
馬車に帰ってきた。
馬車が移動してるからユークリッド空間に移動したときにいた座標に戻るかもと危惧していたが、大丈夫だったみたいだ。
「どこに行っていたんだ? 心配したんだぞ!」
シエラにしっかりと怒られた。10秒くらい消えてただけなのに。
セロたちが来るまでにいろいろ検証しておこう。うち以外をユークリッド空間に招き入れる事ができるのか、それにどんな条件があるのか知りたいな。
「シエラ、こっち見て。」
「なぜ、そんなことしにゃい⋯」
「数学魔術・ユークリッド空間」
消えた。どうやら本人の意思は関係ないよ うだ。4人も入れちゃえ!
「数学魔術・ユークリッド空間」
ということでうちの班を全員ユークリッド空間に招き入れた。
というよりは無理矢理転送したと言った方が正しい気もするが。
「これは何だ? ミロク?」
シエラが怒ってるのがわかる。まあ無理やり引きずり込んだからな。
「うちが手に入れた新しい魔術。まあ見ての通り広い空間だ!」
「はー。」
シエラは怒るのはもう諦めたらしい。呆れてる感じかな?
「面白いな。使いようによってはすげー強いぞ。」
アリソンがそんな当たり前なことを言っている。それからはどのくらいのサイズの物がしまえるのか、戻る場所は決めれるのかなどいろいろ検証していった。サイズに関係なく魔力がある限り何でも入るっぽい。意思があるものを空間に引き込むよりないものを入れる方が消費魔力量が多いこともわかった。
この中ならダイヤとコーダを隠すことができるな。
戻る場所は移動する前に立っていた地面の上に限定されるみたい。うちに触れていたら、うちが元々いた場所に皆で移動するみたい。とても便利だ。
セロがうちらの馬車に来て交代の伝達をしにきた。まだまだ検証はしたいがしょうがない。
うちがいなくたって何とかなるだろう。
みんなが護衛をやっている間にダイヤとコーダを迎えに行った。
新しい魔術について簡単に説明して、早速入ってもらおうとした。
でも、今のままだとただの広い空間だから過ごしやすいように岩とかに土とか木とか水とか入れないとあかんな。タクシーで2kmくらい離れて400m×400mの森を丸ごとユークリッド空間に入れた。
結構魔力を使ったな。
ユークリッド空間でダイヤとコーダに新しい住処を紹介してやった。
多分喜んでくれただろう。
太陽がないからすぐに枯れるだろうけど。
深さ6mで綺麗な正方形に切り取られている地面を見て恐怖で震える人が多発したことをその時のうちは知らなかった。
その後はすぐに馬車に追いついて上から班員の様子を見守っている。
結局、時間が終わるまで特に苦戦することなかった。
面倒だか、交代の伝達はリーダーの仕事だ。
行くか。
「護衛交代です。」
「はいはーい! ありがとう。こっからは任せて。ルナとソーナに勝ったって聞いてるけど、良かったらサルトとも勝負してもらえないかしら。」
緑色の目と薄ピンク色の髪。
長い髪に金色の糸が編み込まれた白色のリボン。
どこかの貴族かと思ったが、家名を名乗っていないから違うのかな。
なぜがわからないが、どこか懐かしいような雰囲気がする。
っていうか一人称が自分の名前なのか。
強いのか?
確か実技成績6位だったかな?
おそらく強いのだろう。
「いつかにもよりますが、いいですよ。」
「ありがとう。じゃあ明後日の授業終わりね。大丈夫よね。」
「分かった。あ、訓練場を使う許可は要らない。治癒魔術師はそっちで用意しといてくれないか?」
「分かったわ。」
また、勝負することになったとシエラに伝えたら諦めたのか、
「そうか。」
としか言われなかった。
「さて、検証の続きをするか。」
格子が描かれている壁や床はスクエアのような魔力を凝縮した物質でできているみたい。少し光を放っているからシエラたちでも見えるみたい。
この壁の向こう側に行けないかな。
「簡単です。『xマイナス領域』と唱えてみてください。xが負、yが正、zが正の領域に転移します。」
わ! びっくりした。スリープモードに入ったんじゃないのかよ。てか他の奴らに聞かれたりしないのか。
「マスターがお困りのようでしたから、一時的に起動しました。私の言葉はマスターの脳に直接送られているので周りに聞かれる心配はありません。」
おう。そうか。
それで、それぞれ赤青緑の互いに垂直に交わっている直線が3本あるのだが、どれがx軸でどれがy軸でどれがz軸なんだ?
「現在マスターが向いている方向に対して左右に連なる赤い直線がx軸。上下に連なる青い直線がy軸。最後に、前後に連なる緑の直線がz軸となっています。」
了解した。
「xマイナス領域」
「注。転移先はマスターの座標をx軸に対して対称移動した地点になりますので気をつけてください。現在のマスターy座標は6ですので、6mの高さから落ちることになります。」
ダイヤとコーダのために取ってきた森の地面の高さの分、この空間内の座標としては高くなってしまったのか。
「うちが転移する前に言え! このアホボイスが!!」
トポロジートランポリンで何とか耐えたから良かったものの、うちじゃなかったら大怪我してたぞ。
確かに壁の反対側に転移した。
壁の向こうに地層がはっきりと見える。つきに見せたら喜ぶだろうな。
「x,yマイナス領域」
今度はしっかりと床に足をつけて転移したから落っこちる心配はないのだが、yがマイナスの領域の重力がどうなっているかわからないので一応、トポロジートランポリンがいつでも使えるように準備して転移した。
結果は床に対して重力が働くみたいだったから、完全に上下反転した。
床に敷かれた鏡の中に入るような感じ。
うん。バッチリ理解できた。
ありがとう。名前も知らない謎の声さん。
「・・・・・・」
スリープモードに入っちゃったかな?
そろそろ学院に着いた頃かな。
「帰還」
馬車に戻って窓の外から確認すると学院の門のすぐそこまで来ていた。
馬車を降り、第1訓練場に集合した。
「いいか、寮に帰るまでがフィールドワークだ。夕飯時だが寮に帰って荷物を置いてから食堂に向かうんだ。わかったな。よし、じゃあ解散!」
ゼノス先生にそう言われ、みんなぞろぞろと寮の方向へ向かった。
四次元収納に荷物は全部収納しているから荷物なんてないのだが、うちとシエラも寮へ向かった。
歩いていると突然後ろから声をかけられた。
「ちょっと、そこの黒髪の子、ツラ貸せ。」
聞き覚えのある声だが、誰か思い出せない。
声的に女性であることに間違いはないと思うが。
できれば厄介事に関わりたくないから丁重にお断りしたいのだが。
「ゼノス先生に寮へまっすぐ帰れって言われてるから、ちょっとすみませんが、お断りします。」
「ゼノスの指示なんかどうでもええ。私はアンタに話があるんや。」
教師統括部のゼノス先生の指示に対してどうでもいいと切り捨てられる者なんてこの学院じゃマイル学院長か、
「学院の精霊である私が学院の精霊権限を行使して、第1学年1組のミロクに命じる。ちょっとツラ貸せ。」
そこまで言われてしまったらどうしょうもないな。大人しくついていこう。
「はい。分かりました。スクリナさん。」
スクリナに連行されたミロク。
要件は何だったのでしょう。
ユークリッド空間が有能過ぎますね。
謎の声さんは一体誰なのか。




