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近代乙女怪談物語集  作者: 白百合三咲
第2章 乙女人形物語
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私の妹 第2話

「美沙、その話聞いた事あるわ。」

みやこと一緒に話を聞いていた夏江が口を開く。

 夏江は神社の娘だ。美沙が夏江と出会ったのも去年の夏に行われた神社の怪談大会に参加した時だ。夏江の父である神主の話に号泣して手を握って慰めてくれたのが夏江だった。

「父から聞いた話なんだけど」



 江戸時代金持ちの商人の家で火事があって一家全員が亡くなった。御屋敷の跡地からは一人娘であるお嬢様が大切にしていた日本人形が見つかった。

「綺麗!!」

それを見つけた長屋に住む貧しい八百屋の娘が持ち帰ってしまった。その翌日から長屋で不思議な事が起きた。

 朝起きると娘の部屋に文があった。

「妾の妹返すべし、焼けた御屋敷の跡地より迎えに参る。」

焼けた御屋敷とは火事があった商人の家だろう。最初は誰かの悪戯だと思い捨てしまった。しかしその翌日も娘の元に文が届く。

「妾の妹返すべし、河原より迎えに迎えに参る。」

翌日もその翌日も娘の元に文が届く。魚屋、宿屋、芝居小屋とどんどん娘の住む長屋に近づいていく。

「妾の妹返すべし、汝の長屋の門より迎えに参る。」

とうとう文に書かれた場所娘の長屋の部屋の前になってしまった。

 その夜娘は眠れずにいた。もし明日の朝になったら戸の前に誰かいないか。娘は戸の方を向いて眠る。その時


ズズッ ズズッ ズズッ ズズッ


外から衣を引き摺る音がする。

(誰?)


ズズッ ズズッ ズズッ ズズッ ピタ


長い髪に打掛姿の女性の影が戸の前で止まった。

(お父ちゃん!!お母ちゃん!!)

隣で寝ている両親に助けを求めようとしたが声が出ない。戸がゆっくりと開き外から腕が伸びる。腕には焼けどの痕がある。

(逃げなきゃ)

娘は起き上がろうとするが身体が動かない。金縛りだ。

「妹、妾の妹」

部屋の中に女が入って来た。打掛に長い髪の女だ。顔にも火傷があり打掛も焦げた痕がある。

「妾の妹、返すべくし、返せ!!」

女は娘の腕を掴む。





『きゃあ!!!』

夏江の話を聞いて美沙とみやこが抱き合う。

「お姉様、それでその娘はどうなったのですか?」

「目が覚めた時には朝だったの。」

「夢だったって事ですか?」

みやこが夏江に尋ねる。夏江が首を振る。

「娘も最初は夢だったと思ったの。だけどいつも寝るときに抱いている日本人形がいなくなっていたの。そしてふと部屋の隅にある姿見に映る自分を見た時にあったの。何者かに掴まれた痕が。」

「つまり昨晩現れたのは火事で亡くなったお嬢様の霊で人形を取り返しに来たって事ね。」

みやこの1言で3人は人形の方へ視線を向ける。

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