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近代乙女怪談物語集  作者: 白百合三咲
第2章 乙女人形物語
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私の妹 第1話

「みやこ、お姉様。上がって。」

大正10年。美沙は女学校の帰り道同じ級で親友のみやことお姉様の夏江を自分の家に招き入れる。お姉様と言っても血の繋がった姉妹という意味ではない。美沙の通う女学校では上級生が1人の下級生を導き守るという伝統が創立時からある。生徒達は英語で姉妹を現すSisterの頭文字をとってエスと言っている。

「この娘ってこないだ話してた人形の事?」

夏江が視線を向けた先には外を向いて窓際に座る人形があった。ブロンドの長い髪に白いドレスのフランス人形だ。和室で木の机、座布団、卓袱台が並べられてる中に窓際の棚に座る人形は異質だ。

「はい」

美沙は人形を抱いてみやこと夏江が囲む卓袱台の上に置く。

「こないだ嵐があった次の日沖合に難波船があったでしょ」

美沙の父は漁師だ。数日前いつものように舟を出そうとしたら外国船の残骸が引き揚げられていた。

「きっと嵐にやられたのね。」

船員や乗客の中に生存者はなく船内に残っていた遺品は漁師達で分け合う事になった。

「それで父さんがこの人形をもらってきてくれたの。」

「まあ、少女雑誌に描かれてるプリンセスみたいだわ。」

みやこが人形を抱き上げる。

「そうね、白いドレスの裾がバレリーナみたいだわ。」

夏江も呟く。

「そうでしょ、みやこ、お姉様。私も最初はそう思ったわ。でも」

突然美沙の表情が暗くなる。

『でも?』

みやこと夏江が同時に尋ねる。

「ふぅ」

美沙は一息してから口を開く。

「この娘が来てから奇妙な夢を見るの。」



 父が人形を持ってきた日美沙は自分の布団に人形を入れて眠った。その晩夢を見た。

夢の中で美沙は船が引き揚げられた浜辺にいた。

「浜辺に女の子がいたんです。この娘と同じような姿の。」

美沙は人形を指指す。女の子は人形と同じ白いドレスを着ていてドレスの裾も人形と同じでふんわりと広がっていたという。 

「どこからか可愛くも悲しげな音楽が流れてきて女の子は踊り出したのです。」

踊る女の子の顔は分からない。顔を見ようと傍に行くと目が覚めてしまうのだ。

 翌日も美沙は似たような夢を見た。人形と同じ白いドレスを着た女の子が踊る夢。しかし今度は海辺ではなく教会のチャペルの中であった。 

「ギブバ ギブバ マイ」

女の子は何か言ってるが美沙は聞き取れない。 

「ねえ、何と言ってるの?」

美沙は女の子に尋ねるがまた目を覚ましてしまう。

「翌日も、その翌日も女の子が私の前に現れたのです。ただ現れる場所はその日によって違くて教会の次は喫茶店、その次は公園。どんどんと私の家に近づいてきてるのです。昨日はとうとう私の家の玄関の前にあの娘が現れました。」

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