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結婚式 前編 

「おばあちゃん、ここはどうするの?」


アルマちゃんが縫い合わされたスカートの裾を詰まんで私に聞いてくる。

見た目から気の強い子と思われて誤解されがちだけど、本当は控え目で大人しく優しい、私の2番目の孫。


「ここは、こうして」


手にした生地を裏返して仮縫いしていた糸を引き抜く。

ウェディングドレスのオーバースカートが綺麗に広がりアルマちゃんは目を輝かせた。


「おばあちゃん凄い!」


手を叩いて喜ぶアルマちゃん。

[針子]の神託を持つ私は昔から主人の服やアルクの服を全て手作りしていた。

これぐらいお手の物と言いたいが、


流石にウェディングドレスは大変だった。

お金を出せば今作っている物より遥かに素晴らしいドレスは手に入る。

だけど私は手作りにこだわった。

今度こそ私の娘達(・・)の結婚式に着て欲しいから。


「おばあ様、ベールはこの生地を合わせれば良いのかしら?」


アルフィーネちゃんは一番上のお姉さん、お母さんのローゼスちゃんに似て、とても美しく気品がある。

でも本当は少し甘えん坊さん。


「そうよ、アルフィーネはセンスがあるわね」


「あ、へへ...ありがとうございます」


はにかんで笑う表情までローゼスちゃんにそっくり。


3ヶ月前から準備をしていた。

ローゼスちゃんやフレアちゃんに気付かれないか心配だったけど、ローゼスちゃんは仕事が忙しく、フレアちゃんも研究室に籠りがちだから大丈夫だった。


昨日初めて孫達にウェディングドレスを見せた。

ラルクは男の子だから余り興味は持てなかった様だけど、女の子の反応は上々で今日は朝から最後の仕上げを手伝ってくれている。


(お母さん達はアルクが目覚める日は1日一緒に過ごすのが決まりなの)


「お祖父様大丈夫かしら?」


「大丈夫よ、ラルクも手伝ってくれるし」


主人はパーティの料理の材料を商会に受け取りにラルクと一緒に出掛けた。

そのままグレンさんの自宅に材料を持ち込んで料理を作る手筈になっている。


材料の注文は町の食堂からにしたからローゼスちゃんに気付かれて無かった。

グレンさんの奥さんは凄く料理上手、町の女の子達にも診療所が休みの時は料理を教えている。

田舎料理しか出来ない私だからパーティの料理は完全に任せていた。


「ただいま」


「「ラルクだ!」」


店の扉が開き男の子の声が聞こえる。

2人のお姉ちゃんは顔を上げて微笑んだ。

もちろん私も。


「おかえり、お父さん(お祖父ちゃん)は?」


一人で帰って来たラルクに尋ねた。


お祖父ちゃん(お父さんのお父さん)お祖父ちゃん(お母さんのお父さん)とお酒を飲み始めちゃった」


「あらあら」


主人は昔からグレンさんと仲が良い。

貴族のグレンさんは40年前にこの町へ医師として赴任して来た時から平民の私達に優しくして貰い町にとって欠かせない人だから...


「おばあちゃん?」


「あ、ごめんねラルク。しょうがないお祖父ちゃん達ね」


いけない、いけない。

もう20年も経ったのに...あの時の悪夢はなかなか消えない。


アルクの呪いは今も解けない。

でもローゼスちゃんやフレアちゃん、アスタのお陰で今は半年だけど過ごす事が出来るようになった。


それだけでは無い。

こんな可愛い孫達に囲まれて幸せな老後を過ごせるとは思わなかった。


14年前ローゼスちゃんにお願いしたのだ。

『孫の顔が見たい』と。


ローゼスちゃんがアルクをどう説得したのか分からない。

でも私達の夢が叶った。

全てローゼスちゃん達のお陰、本当に感謝している。


だから今度は結婚式を挙げて欲しい。

ローゼスちゃんは

『(アルクの)呪いが解けるまでは』って言うけど、やっぱり私達が元気な間に見たいもの。

(グレンさん夫婦も同じ考えだった)


「びっくりするでしょうね」


ウェディングドレスを着た娘達(・・)の姿を想像する私の心は幸せに包まれるのでした。


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