あなたと一緒に 中編
(...解除)
最後にそう心の中で呟き意識を失ったフレア、私は直ぐに駆け出したい気持ちを抑え後ろを振り返る。
「ローゼス何か分かったか?」
フレアの父がアスタの体に包帯を巻きながら尋ねる。
アスタの傷は自己修復のスキルを持つ聖女だ。
即死で無ければ1日で治るが傷の痛みを何とかしてやりたいのだろう。
「説明は後程、フレアを宜しくお願いします」
2人ともアスタに掛かりきりだ。
呪いで死なないフレアだが心配くらいしたらどうなんだ?
少し怒りを込めてフレアを隔離室のベッドに寝かせた。
両手足を失い、目はおろか鼻と口も焼けただれたフレア。
この状態で私が来るまで意識を失わなかった精神力に驚く。
診療所を出てアルク様の家に体を向ける。
「[脱兎]」
スキルを発動させ駆け出す。
[脱兎]それは盗人が逃げる際に使うとされるスキル、中腰の体勢で走る姿が独特で道行く人は驚いた顔をするが構うものか。
「アルク様!!」
アルク様の店の扉を乱暴に開け返事を待たず中に入る。
いつもの私なら考えられない無作法だが構ってる暇は無い。
「ロ、ローゼス、アルクが!アルクが!!」
「ローゼスちゃんアルクが!」
アルク様のご両親が部屋の前で狼狽えている。
どうやら間に合った。
「失礼します!」
急いでアルク様の眠る部屋の扉を開けた。
「グゥ...!!」
ベッドの上でアルク様は大粒が汗を掻いている。
凍結は解除され意識が戻られたが、再び襲った激痛で混濁しておられた。
「睡眠」
急いでアルク様を眠らせる。
これで一時痛みからは開放されるはずだ。
「ローゼス、アルクもう大丈夫なのか?」
「ローゼスちゃん、アルクは治ったの?」
口々に聞かれる、その質問に答えるのが躊躇われる。
治ってる訳が無い、あの苦悶の表情を見れば分かるはずなのに。
「アルク様は...まだ治っておりません...」
「そうか....」
「あぁ...アルク」
私の言葉に崩れ落ち居たたまれない。
「説明して貰って良いかな?」
食堂に場所を移した私達はテーブルを挟み座る。
アルク様のお父様が沈痛な面持ちで尋ねられた。
「分かりました」
しっかり頷き説明を始める。
アスタがハンクによって薬物だけでは無く媚薬や催淫剤を使われた事により誠実の契りを破って呪いを受けた事、
発作が激しく発狂してしまった事、
アスタの呪いを解くにはアルク様からもう一度誠実の契りを結び直して貰わなくてはいけない、その為フレアはアスタの魔法を自ら受けて昏睡状態になった事を。
「なんて事だ...」
「...フレアちゃん」
話を終わるとアルク様のご両親は呆然としてしまわれた。
「フレアはアルクの呪いよりアスタの呪いを解く方を優先したのか?」
「フレアはアスタを救う為だけに自らの身を危険に晒した訳では有りません、アルク様を救うにはアスタの協力が必要なればこそなのです」
これだけは説明せねば。
「でもローゼスちゃん、アスタはアルクを...」
「分かってます。しかし呪いは裏切りが大きければ大きい程強いとされています。
アルク様がアスタに恨みを抱く筈がありません。
アスタへの呪いはアスタ1人のアルク様への懺悔と後悔の気持ちなのだと思います」
「そうだな...そうだ、あれは正気じゃなかったんだ...」
「ええ...」
言葉少なに俯かれるご両親。
頭では分かっておられるのだが、やはりハンクと訪れた時のアスタの冷たい態度が忘れられないのだろう。
3人並んで床に頭を擦り付けたのはハンクが命じたのだ。
アスタの力を貸して欲しいならやってみろと言われ、私達はハンクとアスタに...
止めよう、私までアスタを切ってはアルク様を救えなくなる。
「しかしアルクがあの状態では」
「ローゼスちゃん、眠らせたままじゃ無理よ」
「分かっております、苦痛を取る方法はありますが」
「まさかアルクに死...」
「お父様!!」
思わず大声が出る、アルク様の死など言って欲しくない。
「す、すまん」
「ローゼスちゃん『お父様』って」
「も、申し訳ありません」
しまった、私は何て事を。
「良いのよローゼスちゃん」
「え?」
「分かってます。早く会いたいものね...」
何と言う事でしょう、あくまでアルク様にお仕えする身でありながら私は...顔が熱い。
「それで苦痛を取るには?」
「そ、それにはアスタのスキルが必要です」
「アスタのスキル?」
「ええ、明日連れてきます。
言いたい事は山程あるでしょうがどうか...」
「分かった」
「ローゼスちゃんが言うなら、フレアちゃんも命懸けでした事ですし」
納得はしないだろうが分かって貰った様だ。
これで先に進める。




