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私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
二章
26/45

【スキル】増えました

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【錆落とし(レコー)】(お酢)

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《解析》

酸性を持つ液体。さび落としなど、金属や床の洗浄に使われる。

ただし臭いが強いので、洗浄後、消臭作業が必須。

(酸味のある液体。調味料として使われる)

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「きたーっ!!」


その時、私は歓喜に声を上げて叫んでいた。

とうとう見つけた。この世界にもあった。調味料っ。

まさか掃除用品になっているとは。

ちなみに↑の説明文が何故出ているのか。それは私が新しい【スキル】を覚えたからです!


【鑑定】


それが私の新たに手に入れたスキル。

まだLv1だけど、これのおかげで今まで見えなかったものが見えるようになった。

私はウキウキしつつ、他に見つけた調味料、味醂みりん山椒さんしょう胡椒こしょうを並べる。それぞれお酒やら靴の下に入れる暖とりやら、違う使われ方をしており、名称も異なっていたため分からなかったがこの【スキル】のおかげで発見することができた。

そもそも私がどうやって【鑑定】を手に入れたのか。

それを語るには事の始まりである一昨日まで遡る。




ヘンレさんとの取引が終わり、宿に戻る前にお姉さんにつかまり、商品を見ていくことになった私達。

そこにあった魔道具に目をキラキラさせている少年二人をしり目に、私は一冊の本を手に取った。


「これは?」


その本は鎖のようなもので施錠されており、中を絶対に開けないようにされている物だった。

ただ、表紙には【鑑定の書】と書かれていて、これは何かあると思った私はお姉さんに聞く。


「それは【グリモア】だね」

「グリモア?」

「そう。【スキル】を封じてある本の事だよ。それを読めばそれだけで【スキル】が手に入る本で、作れる人がほとんどいないんだ」

「え!? それすごくないですか!?」

「それがそうでもないんだよね。製作には【錬金】っていう【スキル】がいるんだけど。どうしてか【錬金】を【グリモア】にすることができないんだよね。だから他の人に【錬金】を覚えさせて【グリモア】を作らせるのは出来ないし。しかもその人の持ってる【スキル】しか閉じ込められないって制限まであるし。おかげで出回ってるのは基本【鑑定】と【魔術】。たまに【調合】なんかもあるけど、レアなものはないんだよね」

「【錬金】を持ってる人は基本的に【鑑定】も持ってるということですか?」

「ああ。持ってるよ。素材を見聞きするのに都合がいいからね。どうやら最初に【グリモア】を作った奴が【錬金】以外に持ってた【スキル】がそれしかなかったらしくて、手当たり次第にばらまいたのが始まりらしい。それから【錬金】を覚えた奴は【鑑定】の【グリモア】を作るのを目標にするって風習が出来ちまっててさ。もうちょい大きい町ではやたらと出回ってるよ」

「……へー」


お姉さんの言葉通り、この本の価値はそれほど高くなかった。

【スキル】を読んだだけで覚えられる本なのだからてっきり高価なものだと思ったのに。それでも金貨3枚が相場だったけど、どうやら【錬金】を手に入れた者の最初の目標はその金額を稼ぐこと、という風にも取られるらしい。

ちなみに【錬金】の主な効果は金属の形状変化と溶接であり、剣や盾の修理が仕事の大部分だそうだ。

魔物の素材で武器を作ったりもできるそうだが、特殊なことは【グリモア】の製造ぐらい。

同じく金属を扱う【鍛冶】の【スキル】を持っている職人とは犬猿の仲になりやすいそうです。わーお。

で、私は当然【鑑定】のグリモアを買いました。

その結果。


現在に戻る。


「できたーっ」


そこにあるのは、寿司。

【鑑定】のおかげで無事、お米も見つけることが出来ました。

まさか鶏の餌として販売されているなんて。もったいない。

ちなみに醤油はありませんでした。

こればっかりは仕方ないよね? 他の物と違って天然物はあるはずがない訳だし。

でも久しぶりのお米。見つけたときは精米されていなかったけど、私はネアとの家から持ってきた家庭用精米機があったりするので今では綺麗な白米になっている。

それに加えて、今回偶然見つけたマグロらしき魚を市場で発見。

私はその切れ身を乗せたお寿司を、さっそく口いっぱいに。


「メリルっ! できたか!?」


ち、入ってきたか。勘のいい奴め。

私は一度口からお寿司を離して、皿の上に乗ってるもう一つを差し出した。

何となく、回転寿司みたいな感じにして見たかったので小皿の上にネタを二つ作ってある。

その片っぽを差し出すとカーダは、おぉ! と目をキラキラさせた。


「寿司だ!」

「見れば分かるでしょ」


カーダは、おうっ、と元気良く答えるとそれを掴んだ。

そして私達は一緒にお寿司を口に入れて。


「んっ、この寿司なんか甘いぞ?」

「お醤油なかったからね。お酢を濃い目にしたんだけど。んー、ちょっとしつこかったかも」

「そうか? めっちゃ上手いぞこれ。この間まで食ってた飯がゴミみたいだ」

「ゴミは失礼でしょ……食材に」

「作った奴がゴミだと言ってないか、それ」


そんなことは言ってません。

少なくとも明言はしないでおくからね。

まあ、レベルが低すぎるとは思ってるけど。

そもそもこっちの人は【調理】の【スキル】を持っているのかすら怪しいし。


「うーん。この味だと普通に出すより軍艦巻にした方がいいかな? 幸い、海苔は大量にあるし」


そう。海苔があるのだ。

この世界にはてっきりないと思っていたのだが、意外なことに海苔の産業は結構本格的に行われていた。

主に手が汚れず食品と一緒に口に入れられる便利品として。

まあ、用途は間違ってないけどね。ただ、味の組み合わせなどをガン無視してたところはいただけないけど。

でも今は作ってしまった酢飯の消費にかかる。

海苔は日本のものと違って、サイズが揃ってないので大きめのものを出してその上にしゃりを乗せる。

平べったくして、長いマグロの切れ身や他、野菜に卵焼きなどを乗せていく。

ちなみにこれらは【神速作業】でちゃちゃっと作ったからどっから出したとかは気にしないでね。


という訳であっという間に出来る軍艦巻。

いざ試食。


「お、いいなこれ。さっきよりさっぱりしてるし、なんか口の中でうめえ何かが広がってる気がする」

「『旨味』ね。でも、うん。これならいいかな? リックを呼んで来てくれる?」

「おう。呼んで来たらもっと食っていいんだよな?」

「晩御飯だし、しゃりがなくなるまでは食べて大丈夫だよ。私はささっと作っておくからマスt――」

「おっしゃああああああっ」


カーダは前半部分を聞くと、全力で走って行った。

久しぶりのお米が本気で嬉しかったみたいだ。


「……マスターも呼んどいてもらおうと思ったけど。いっか」


その日、マスターは当然のように食いっぱぐれました。

いや食堂には来たんだよ? ただ、その頃には料理がなくなってただけで。

成長期の男の子恐るべしだね。

そうそうリックにお寿司を食べさせた時、ちょっとした発見というか、そごがあったのが分かってね。

なんとリック。

日本人ではありませんでした!


いや、だからどうした? って話なんだけども。

とりあえず、なんでこんな話になったのかというと。リックが「お米って始めて食べたけど美味しいね」と言ったからだ。

その時の衝撃は大きかった。

私とカーダが日本から来たものだから、てっきりリックもそうだと思っていたんですよ。

でも考えてみると、私達のいた世界には日本以外にも国はいっぱいある訳で、むしろ同じ国の出身である私達の方が珍しいのではないだろうか?

ただリックはそれに「そんなことないと思うな~」と朗らかに返してきた。

理由を聞いて、返ってきた答えには先ほど以上の衝撃を、受けたけど。


「僕のいた国だと、みんな死ぬときは『仕方ない』とか『ここまでか』とかって自分から諦めて死んで行ったからね。そういう考えを持っているとこっちには来られないらしいんだ。つまり生きることを諦めた人は自殺したのと一緒ってことなんだよ」


彼、もしかしてかなり壮絶な人生を歩んで来たんじゃないでしょうか?

普段どこか抜けているのも、実は達観してるが故だったり。


「そう考えると、僕は本当にラッキーだったよね~。おかげで魔法使いになれたし」


あ、魔法馬鹿は変わらずだけどね。

それと、リックの話では転生者は日本人がほとんどで、他の国の子供はあんまりこっちには来てないらしい。

フィーナ情報なので当てになる。

様は日本人が一番転生するのに条件が揃い易いと、ただそれだけのこと。

……なんだけどねぇ~。

ちょっと気になってしまう。リックの過去。

でもこの世界にやって来てすぐに教え込まれた転生者の約束、自分と同じ転生者に出会ったら、その人の過去を無理に聞こうとしないこと。

きっとろくな思い出ではないからと。

それは、私自身の過去を考えれば良く分かる。

私は寂しいのが辛い人生だったけど、リックも、おそらくカーダもそれぞれの苦しみがあったと思うしね。

だから聞かない。


「にしても、メリルに付いて来たのは正解だったよな。三食ともすげえ旨い飯が食えるし」


お腹をぽんぽんと叩いてカーダが言う。

ついて来てと言うのはそのまんまの意味だ。

今、二人には私と同じように宿の手伝いをしてもらっている。

私とマスターだけだとうまく回しきれないからだ。

幸いなことに二人はそこそこ優秀だった。

始めのうちは少し戸惑っていたけど、すぐに慣れて、注文の間違いもなくなった。

バイト代も宿泊費と食事だけでいいと言うので、マスターも快く受け入れている。

まあ、男三人はマスターの部屋に押し込んでいるが。

マスターは唸っていたが、二人は自前の布団を持ち込んでおり、邪魔にはなっていないので文句も言えなかった。

私? 堂々と一室使ってますが何か?

元々そういう話で手伝ってる訳だし、客達にも私があと数日でいなくなるという話は通しているのだ。

何人か「行かないでくれ」とせがんできたが、私のこの先の方針を考えたら、ここに残るという案はない。

明日、護衛の依頼受理の為、ギルドに行ったら今日中に書いておいたレシピとレクチャー書を持って商隊に、向かうつもりだ。

そこで翌日の集合時間を聞いたら、宿の仕事に取り掛かって翌日にはさよなら。という流れだ。


その日、食いっぱぐれたマスターに晩御飯をせがまれた。

当然「自分で作れ」と追い返したけどね。

自室に戻る途中でマスターがレシピと格闘しているのを見つけた。

内心、ようやくか、と思ったね。

さて、お湯お湯。

寝る前に体の汚れ落とさないと気持ちが悪いから、私は出来る限り体を拭くようにしている。

お風呂に入りたいけど、この宿にはそんなものないし、公衆浴場も存在しないから仕方ない。


……丁寧に拭き取って、と。

最後に、買ってきた洗髪用品を取り出す。

最後にするのは髪が長くて時間がかかるからだ。

ちなみに部屋は魔法で結界を張っている。

覗きは撲滅しておかないとね。

さて。


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洗髪剤ムース】(オリーブオイル)

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『解説』

頭皮についた汚れを落とすのに使われる。お湯と混ぜて使うと良い。

(植物から取れる油。よく燃える。下味や調味料として使われる)

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………………。


「ここにもあった!?」


また一つこっちの世界で調味料を見つけてしまった。

わー。しかも油かー。

お肉がおいしく焼けるし、ドレッシングのバリエーションも増えるね。


「あ」


油があるなら『あれ』ができるじゃないか。

皆大好き『あれ』。

食材は揃ってることだし、一回作ってみようかな。そしたら壷か何かに入れて【アイテムボックス】に突っ込んでおけばいいし。

そうと決まれば食材探しだ。

明日は濃い一日になりそうだった。

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