表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の平穏はどこにある!?   作者: 崎坂 ヤヒト
二章
27/45

【スキル】成長しました。

「今日はここまででーす」


店先に出て私が言うと、周囲から不満の声が上がった。


「そんなっ、俺日の出くらいから並んでたのに!」

「なあ。あと一食。一食だけどうにかならない?」

「すみません。食材が完全に切れてしまいまして。夕食の時またおこしください」

「「「「そんな~」」」」


まあ皆肩を落とすよね。

何故なら、この宿でメリルが料理を作るのは今日が最終日なのだ。

この世のものとは思えないほどの美味というメリルの手料理。

どうしても食べたいと開店前から行列が出来ていたほどだ。

しかし。


「ふ、残念だったなお前ら」

「彼女の料理は最高にうまかったぜ」


泊まり、及び店先野宿組がいたせいで、いくら朝早くから並ぼうと前日から待ってた馬鹿共には勝てないのだ。

正直そこまでした連中に内心引いた。

あ、泊まった方は完全な勝ち組ね。

5日ほど前から泊まってる人変わってないけど。


という訳で一先ず列を散らす。

中には夜までここで待とうと片手に食料持ってる人がいるけどダメだからね?

ていうか、食べるために食料持ち込むって馬鹿じゃないの?


『並ぶのは少なくとも昼過ぎから。

昼より前に並んでたら、店に入れません』


私は店先に貼紙をしておく。

さて、買い物の準備準備。



※店先の行列視点

メリルがその場からいなくなると、列に並んでた住人達は一斉にその張り紙へと集まっていく。


「おい、これなんて書いてあるんだ?」

「いや。俺文字は……」

「……並ぶのは……昼?」

「えっ? 今日昼も開くのか!?」

「まじかよ。俺絶対行くぜ」

「あ、でも昼前は並ぶなって」

「なぬっ!?」

「つまり開店と同時に……」

「こりゃ月が回ってきたぜ!」

「「「戦争だあー!!」」」


勘違いも甚だしい。

皆、昼『過ぎ』という大事なところを読み飛ばしていた。

そして、この勘違いのせいでメリルの一日は恐ろしく忙しいものになるのだった。




※メリル視点

「おーいっ、メリルちゃんこれ持って行け。いくらか見繕っといた」

「はい、これっ。今から選んでたら大変でしょう? 予めまとめておいたから」

「メリルちゃんっ、これも」

「ちょっとメリルちゃん。こっちおいで」


…………なにこれ?

なんか市場に来た途端それぞれの店の人から大量に食材を渡されたんだけど。

しかも皆今日はただだと言う。

代わりに昼時が過ぎたら材料持って行くから、何か作ってくれと、そんな約束を取り付けられ……。


「はああああああああああ!?」


何故か食堂が昼も開くことになっていた。

調度ギルドでヘンレさんに出会い、依頼の受理をした後にそんな話を聞かされたのだ。

実はヘンレさんもその話を聞きたくて、今日は絶対来るであろう私をギルドで待ちぶせていたという。


「その様子だと。本人は知らなかったみたいだね」

「知りませんよっ。ていうかどうしてそんなことに?」

「どうやら張り紙を勘違いしたらしいよ」

「張り紙?」


そういえばそんなもの張ったような……。

…え? マジですか?

そんな勘違い、する?

あれで。


「どうやら一部読み飛ばしたらしい」

「え?」

「昼過ぎの過ぎのところを」

「なるほど。それでだったのか」

「いやいや。なにそれ?」


あ、ちなみに話している人は私とヘンレさん以外にもう一人います。

声と顔面のギャップが激しいギルドマスターさんが。


「でもそうなると君も大変だな」

「え?」

「すぐにでも帰って、食事の用意をした方がいいんじゃないかい?」

「え? なんでですか?」


だって昼に開くっていうのは勘違いなわけで、実際には……。


「町中の噂になってるからね。たぶん、引っ込みつかないんじゃないかな?」

「中には食材不足を防ごうと食材を持参して作ってもらおうとか、無茶な発想をしている者もいるらしいね」

「……………」


私は笑顔が張り付いた顔で固まる。


「もし店を開けなかったら?」

「そりゃ。……柄の悪い人達が暴れる、とかがあるかな」


ギルドマスターさん。オブラートに包んでくれてありがとうございます。

つまり暴動ですね。

え~、そんなに影響力強いの?

確かに毎日人が溢れるほどやって来るけど。

メリルは知らなかったが、メリルの作る料理は、実はこの世の物ではないのではないか? と言われるまで町中に誇大されていた。

そしてその噂を聞いた者が一度でもいいから食べてみたいと言えば、食べたことがある者がその味を誇大させて語る。

そして実際に食べた時に今まで食べていた料理とのあまりに掛け離れた差に噂通りだと語るのだ。

つまり、低すぎるレベルしか知らない者にとって、メリルの料理は迷宮で見つけた秘宝も同然なのである。

そんなものが食べられるチャンスが増えるのだ。

誰だって飛びつくだろう。

帰路につくと、町中が仕事そっちのけで【ヘドック】に突撃準備をしているのを見かけてしまった。


これは…………開けない訳にはいかない。よね?


私は張り紙を剥がして中に入る。

仕方ない。


「やってやろうじゃないか!!」


ほとんどやけくそだった。

暇そうにしていたカーダとリックをひっ捕まえて、準備を手伝わせる。

どうせだから昨日集めた調味料もふんだんに使ってやる。

油も全面使用。魚のフライを作ってやった。

ちなみにこれが、この世界初の揚げ物料理であったことをメリルは知らない。

軍艦巻、パスタ、サンドイッチ、シチューetc

【神速作業】のスキルを全開使用して、次々に明らかにこの世界には元々なかったはずの料理を作っていく。


「あ、そうだ! あれも」


そこに置いてあった食材で、昨日作ろうと思っていた調味料を思い浮かべる。

すると。


ピカッ


「っ…………へ?」


ボールの上に黄色い半液状の物体が出来ていた。

見ると、その周りにあった卵と油、酢と胡椒が少し減っていた。

卵に関してはすっからかんだ。

後、殻が綺麗に真っ二つに割れていた。

普通に調理したら絶対にこうはならない。

さらにもう一つあるボールにはしっかり分けられた白身があった。

私は恐る恐るその黄色いものを指先で舐めてみる。


「っ!」


手を翳しただけでマヨネーズが出来ました!!


あ、ここで少し説明しますがマヨネーズというのは卵の黄身の部分のみを使い、酢と油を混ぜて水分を抜いて作ります。

胡椒はほんとに少量です。

以上、超適当、かつ簡単なマヨネーズの作り方でした~。


「ステータス!」


もちろん速攻でステータスを見た。

魔力とか多少の変化はもちろんあったが、そこは今回無視した。

そして注目した部分。


【称号】……】【調理者】

【スキル】

…………………………

【補助系】……】【調理術】Lv1【神速


変わってる。

そして称号が増えてる。

これってつまり………【調理】のレベルがいつの間にかMAXに届いていたってことだよね。

まあ、あれだけ作ってればそうなるか……。

でもそれだとずっと料理してれば勝手に上がるってこと……じゃないよね?

もしかして…。


「技術と種類……とか?」


【スキル】の上がり方なんて考えたことなかったけど、この上昇の仕方は結構激的だし。【スキル】って思いの外謎が多い気がする。

調理術・・・】か………。


さっきと同じ感覚で野菜類をまとめて、大皿を三つほど用意する。

後は手を翳して。

料理のイメージ。


ピカッ


あ、魔力が体から抜けてるね。

どうやらこの【スキル】は魔力を消費するようだ。

そして、大皿の上にはほかほかの野菜炒めが。って、ほかほか!?

何故か温めまで済んでいた。

もちろん熱源は使ってない。

味の方は……うん。私が基準にしているレベルだ。

つまりこの【スキル】は、私のノーマル、つまりその時の気分で味付けを変えてない基本状態の料理を食材を使って生み出すようだ。

調理いらないって凄くない?

代わりに味の調節ができないのが残念だけど。

……【調合】は【調薬】だったのに、この差は何だろう?

まあ、細かいことはいいか。

今は新しく手に入った、この調理短縮スキルが素直に嬉しい。

【神速作業】と使い分けがいい感じだ。

まず、手作業でどうにかなるものを【神速作業】でちゃちゃっと済ませてしまう。

それと並行して手の込むもの。主に煮込んだり時間のかかるものを【調理術】で作っていく。


そして、あら方準備が終わった頃。

私は【マジックポーション】をがぶ飲みしていた。


「ぷはっ」


どうやらこの【スキル】、手の込んだものを作ろうとするほど魔力の消費が大きいらしい。

ちょっと調子に乗りすぎた。

……でも。

お味噌とお醤油、ケチャップまで作れちゃいました。

コップ一杯分作っただけで魔力が枯渇したけどね。

これらが物凄い手間で作られてることを改めて実感したよ。


で。


結果から言うと、まず間違いなくこの世界の食文化を超越した料理の数々が並んでいます。

やり過ぎた。うん。やり過ぎちゃった。


「おいメリルそろそろ、っておわ!」

「わー。御馳走だね」

「パーティーでもする気か……これ」

「だよねー……」


私は厨房に入ってきた二人に苦笑する。

あと。


「お醤油とお味噌、手に入ったよ」

「マジか!? ってそれどころじゃねえだろ!」


はい。ごまかせませんでした。

本当にどうしよっか?

今までは良いのだ。使ってる食材や調味料も全てこっち産でやってたから。

でも今回はいきなり大量に調味料を見つけて、製造に成功したのをいいことに、この世界でやっていいレベルを明らかに越えてしまっていた。

頬に冷や汗が伝う。


「ど、どうしよう?」

「どうしようって………」






「「「うんめぇー!」」」「これなんて料理かしら? 凄い。始め固いのに後からすっごく柔らかくて、んー!」「こ、これが天使の料理……素晴らしい!」「おいっ、早く食いやがれよ!」「馬鹿野郎! こんな旨い飯二度と食えねえぞ! もっと味合わせろ!」「ああああ、早く食いてぇー!」


うん。こうなるよね。

この日の客が言うには、『今までの飯は天使が普段の力で作ったものだったが、その日の料理は天使の本気。まさしく神の域だった』だそうだ。

流石【調理】レベルMAXだね。


ただ。


その日は昼の営業終わってもすぐに夕食の仕込みに入らなければならなかったり、約束通りにやってきた食材屋の皆さんにご飯作ったりしたおかげで。

翌日は旅立ちだというのに、その日、私は閉店と同時に熟睡するほど疲れ果ててしまった。

こんなんで……旅、大丈夫だろうか?




【調理術】Lv2に上がりました。


ちょっと微妙な幕切れかもしれませんが、これで第二章は終わりです。

第三章からは旅に入ります。

正直………ようやくかっ! と作者自身も思っております。

ほのぼのな話を書こうとは思ってましたが、町の中で本当に何もない? ので流石にまずいと思っております。

旅ではもう少し主人公たちを追い詰めたり、話的に進展させる要素を盛り込もうと考えておりますので、これからもどうかお付き合いのほどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ