第64章(永遠の別離と再会)
「赤ちゃんが生まれたの。剛の声が聞きたいんだけど。お仕事、忙しい?」 と
受話器から聞こえる由紀奈の声が沈んでいた。 「このところ、剛の容態が良くないの。
赤ちゃんと退院して、すぐ病院に見せに行ったのに、何にも気配がなくて。
もちろん、今までだって剛の霊が見えていたわけではないんだけど、部屋の空気が違うの。
心配で、心配で。どうにかなりそう」と泣いている。 「わかった。とりあえず、霊査してみるね」と
言って電話を切った。しかし、どこにも剛の気配はない。何事が起こったのだろう?
すると久しぶりに信彦兄貴が応えてくれた。 「お前のお腹の赤ちゃんとして生まれるために旅立ったよ。自分の子供が生まれた日に。その腕に赤ちゃんを抱けたことに感動して、涙してたよ。
その雫が、あのティファニーのペンダントヘッドに落ちた時、光になって飛んで行ってしまった」と。 「そんなバカな。私に子供が? 誰の? マリア様じゃあるまいし。そんなこと、あり得ない」と
言ってみて、最近の健康不調に思い当たることに気がついた。 「まさか」と言う前に、
兄は呆れ顔で言った。 「また記憶が飛んでいたのか? あんなにいい場面で気を失う奴がいるか?」
「信彦兄さんが、私の子供になって生まれ変わるって言ってたじゃない? 何故ここにいるの?
生まれ変わるには、もうとっくにあの世に行ってなきゃダメでしょ?」と言っても、
無視されていなくなってしまった。 考え抜いた後、明菜はマネージャーに電話して、
芸能界を去る決断を告げた。表向きは体調不良ということにしたのだが、
芸能雑誌は深刻な病気だと報道し、最後の映画も空前の大ヒットだった。




