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第61章(将来の夢を叶える結婚)


「病院経営は、最初は父の夢だったんだ。医師免許を取って、剛と病気に立ち向かっていると、

天職だったと思ったよ。でも、西井家の財政だけでは回らないほど資金が必要だったんだ。

そこで、由紀奈の紹介で大野病院との合併共同運営という話が持ち上がったんだ。ところが、

大野病院の院長が、とんだたぬきオヤジで、話していたのと条件があまりにも違いすぎて、

商談は決裂。そこで、小泉財閥との共同出資で病院経営をする話が、最近決まってね。

今までとは違う形態の病院をと考えて、ビルから建てて、ひとつの町のように自然や庭を作って、

文化や芸術の発信もできたらいいと考えているんだ。居住地と医療機関が一緒だと、

来る老人問題の時にも対処できるし、夢が広がるだろう? 取りあえず、3フロアを病院にしようと、

今設計図を書いてもらっているんだ。そうすれば、剛の完全看護をしながら、

由紀奈たちは子育てを同じフロアの部屋でできるだろう?

それに、内科医が今回みたいに不在になった時だって、来てくれる医者に合わせて、

最悪、内科を産婦人科にも小児科にも皮膚科にだって変えることができるだろう?

それぞれの専門医が部屋ごとに自営している形態を取りながら、

連携して患者に向かうことができる体制なら、資金繰りも大変ではないし、

撤退する時もリスクは最低限度に留められる。1階はショッピングフロアにして、

テナントを募集するんだって。2階には飲食、3階は入院が必要のない科を、

階は外科や検査室や手術室にして、5階は入院施設にする予定だ。その上の階は居住エリアになり、

分譲で売り出す部屋と賃貸用を考えているそうだ。小泉財閥は不動産と製薬会社で

大きくなったらしい。西井家の医療機器メーカーと資金を出資し合えば、

お互いメリットがあると考えたわけだ。剛をずっと介護しながら生活するには、

こんな形態が理想的だと言うので、僕らも同意したんだ。さっき病室で紹介した透が、

脳外科の医者として来てくれた。それから、剛の代わりに内科医の黒田勲さんが仲間に入ってくれた。

彼は大野総合病院の医師だったんだ。大野隆君とは同級生だったらしい。

由紀奈も知り合いだったようだ。その他、数人の医師も仲間に入ってくれそうだ。

医者のリクルートは西井家と小泉家の父親たちに任せている。経営もな。

俺たち医者には経営は向いていないと実感したよ」 「だいたい、この薬の方が利益が出るとか、

ほとんど必要のない手術なのに、保険の点数稼ぎや病院経営のために勧めるなんて、

医者にはできない。患者にとって最善の治療を目指したいのに、金勘定は邪魔をする。

だから、剛も僕も勤務医の方がマシだと思い始めていたんだ。父の思う理想の病院には、

多大な資金源が必要だったし、西井家だって芦屋の家を売ってでも、剛の手前、

現実にしようと無理をしていたところだった。だから、剛の事故一件で全ての計画が白紙になって、

正直助かったんだ。こんなこと、由紀奈には絶対に知られてはいけないことなんだが。

だから、剛のことは一生面倒を見ようと思っているんだ」と、

心の奥に潜んでいた懺悔の気持ちを吐き出した。 「どうして、こんなことを明菜ちゃんに

話したのだろう? 自分の胸だけにしまっておこうと思っていたのに」と戸惑っている。

「それでいいのよ。腹に溜まっているどす黒いものをすべて吐き出さないと、

神経を病んでしまうから。やっと奥底にしまいこんだ悲しい想いの蓋が開いたということね。

私には守秘義務があるから、ここで聞いたことは絶対に誰にも話さないし、

知ったからと言って何か感情が動くこともないので心配しないで」と笑顔で言った。

涼の顔から憑き物が落ちたかのような、明るい笑顔を久しぶりに見ることができた。

明菜は背中に当てた手を外して、 「これで、もう大丈夫。きっと明日から前に進める」と

言ってあげた。


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