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第56章(二人を結ぶティアドロップ(涙の雫)


「辛かったね。もう大丈夫。私が傍にいるから。泣いていいんだよ。

涙がお腹に溜まった汚いものを流してくれるんだから」 涼は子供のように泣きじゃくった。その頭を優しく撫でて、

背中をポンポンと叩いてあやす。次第に落ち着いたようで、息も整ってきたようだ。

胸の中で 「いい香りがする。胸も柔らかくて気持ちいい」 と言うので、

明菜は赤面して涼の顔を胸から引き離す。

「残念だなぁ。ずっと、あのままでいたかったのに。ありがとう。

もう大丈夫。体が暖かくなったし、心も軽くなったようだ。

お洋服、濡れちゃったね。新しいのを買いに行こう」 どこかで見た、聞いたことのある情景に、

「ううん。大丈夫。今日の思い出に、大切に取っておくから。泣いたことも、由紀奈にはナイショにしてあげるから」 と意地悪そうに茶化すと、涼が胸元のペンダントヘッドを掴んで言った。

「ずっと大切に付けていてくれているんだね。ティアドロップって、ティファニーの有名なオープンハートと、このペンダントがエルサ・ペレッティ氏の作品なんだけど、

『悲しい涙も、このペンダントを付けると嬉しい涙になるように』と願いを込めて作ったんだって。

だから、明菜ちゃんにプレゼントしたかったんだ」

「うん。あれから、嬉しい涙ばっかりだよ。おかげ様で」 と笑顔で言った。

嘘だった。涼の婚約の話を聞いてからは、悲しい想いを封じ込めていた。

しかし、こんな二人だけの時間を持つと、涙が溢れそうになるではないか。

ずっと涼のことばかり考えて過ごしていた三年間。涼は多くの女性と付き合って、

他の人を人生の伴侶に選んだのだから。あんな約束を期待する方がおかしいのだ。


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