第40章(流されて18歳の芸能活動)
上京してから、明菜の仕事は増えた。大学1年生として取らなければならない単位も多く、
入学式ではサークルや部活の勧誘が花盛りだったが、明菜は孤独の中で歯を食いしばって頑張っていた。貧乏という現実に押し潰されそうになりながらも。 友人のいない明菜は、
授業中は一番前の中央の席で講義を受けていた。そのため、話しかけてくる学生もほとんどいない。
仕事も忙しく、青春を謳歌する余裕はなかった。 この日も秋冬コレクションの撮影があった。
ノーメイクが基本なので、スタイリストとヘアデザイナーが二人がかりで仕上げる。
「明菜さん、髪長すぎるので切ってもいいですか?」 と聞かれたが、長い髪はトレードマーク。
言葉巧みに結局切られてしまう。 「まぁ、いいか。夏までには長くなるだろう」 と
諦めて吐息を漏らす。 「髪が短くなったらイメージ変わって、パンツスタイルも似合うね」 と
カメラマン。軽井沢のコートで感じた風を思い出す。スタジオは冷房が効いているが、
ライトの熱で汗ばむ。しかし顔には汗をかかず、どんなに飛び跳ねても涼しい顔を保つ。
今日のパンプスは微妙に合わず、靴擦れで皮がむけ、血が滲んでいた。
「絆創膏を貼って撮影はできない」 と文句を言うが、スタイリストは
「これが今年のメーカーのイチオシです」 と言い訳する。 傷にファンデーションを塗られ、
さらに痛みが増す。それでもライトを浴びれば笑顔を作れる。水ばかりを飲み、体重管理にも気を配る。 マネージャーが珍しく食事に誘ってくれた。
「たまには焼肉でも行こうか。顔色悪いよ。タンパク質足りないんじゃない?」 と思えば、
局のプロデューサーとの会食だった。 「ねえ、ドラマに出てみない?」 の誘いに、
「やったことがないので自信がありません」 と答えると、
「じゃあセリフ少なめでオーディションだけでも来て」 と懇願された。
話はほぼ決まっている様子だった。 「夏休みは外して下さいよ。大事な用があるんだから」 と
釘を刺す。親友たちとの大切な時間は、何より優先したい。




