第39章(18歳、旅立ちの時)
あれから涼は京都で一人暮らしを始め、会うことはほとんどなくなってしまった。
高校3年生になり、進路を決めなければならない時期。相変わらず、稼ぎのない湊家の希望の星は
明菜しかいなかった。 大野に囲われ、ブティックやジュエリーショップを経営していた母も、
物売りは初めての経験で、うまくいくはずもなかった。ジュエリーデザイナーとして、
小さな店舗ひとつを残すだけになっていた。 浮気者の大野は次々に若い愛人に入れ込み、
最近では生活費も滞るようになっていた。祖母も夜勤の疲れが祟って体調を崩すことが多い。
母親のマネージャーが上京をしきりに勧めてくる中、明菜は偶然、推薦で東京の有名大学に合
格できた。 大学を卒業するまでは芸能界で日銭を稼ぎ、卒業後は得意な英語を活かして
外資系や貿易の会社の正社員になり、家族を支えたいと夢を描く。
まだ社会を知らない18歳の夢ではあるが、自分の可能性を追求する大切な経験の時でもあった。
親友たちも、それぞれの道を目指して別れの時を迎える。
由紀奈は、代々母や祖母も通った関西屈指のお嬢様大学に推薦枠で決まり、
利絵は京都の有名私学でスポーツ療法士資格を取得できる大学に決まった。
中学までオリンピック強化選手に選出されていた経験や、腰の怪我で夢を諦めたことなどを
面接で語り、選考官たちの心を動かしたらしい。
別れ際、由紀奈は 「夏休みは一緒にどこか行こうよ。」 と懇願し、
大学1年生の時にはヨット部の合宿に行く約束をした。 涼は大学生活を謳歌し、
多くの女性の友達もできているらしい。 明菜の首には、初めて心を抱きしめてもらった
初恋の相手・涼からもらったネックレスが輝いている。
くじけそうな時、いつも思い出す涼の笑顔。
それが、多くの男性にアプローチされても靡かない彼女の支えとなっていた。




