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第4章(憑依されて)
それから、祖母が不思議なことを言うようになった。
「モデルの仕事をしている時は、まるで別人やね」と。
確かに、あの照明を受けた途端、記憶がなくなる。
無心に仕事に挑んでいるせいかとも思っていたが、自分の映像を見た時、
まったく違う別人がそこにいた。
どこかで見たことがあると思ったら、昔のファッションモデルが乗り移っていたのだ。
憧れ、目標にしていた、パリコレでも活躍していたモデルだった。
ドラマの仕事をしている時も同じだった。演じている時は、
他の人格が自分を操っているのが分かる。「憑依」というものだろうか。
自分ではどうしようもない。
「この体質を自分の個性だと受け入れて仕事をするのが賢い選択だ」と、
10代で悟ってしまった。
誰にも言えない。いつ記憶が消え、別人格が何をするのか分からない。
なので、友人も恋人も作る気がしなかった。本当のことを知ったら、
不気味に思って、みんな逃げてしまうことだろう。知らせなければ、
単に明菜の才能だと思ってくれる。尊敬から侮蔑へ変わることに、
耐えられる自信がなかった。
母も、父との再会が果たせず、精神を病んでいるところがあった。
もしかしたら、明菜もその影響を受けて、
こんな異常な世界に迷い込んでしまったのかもしれない。




