第32章(身分違い、貧富の差)
西井家は医療機器メーカーではトップ企業。明菜とは身分が違い過ぎる。
家柄がどうのこうのと言う時代ではないと言うものの、
生まれ育った環境の違いは、性格の不一致や価値観の相違の引き金となる。
由紀奈と親友でいるのも、奇跡に近い。
まるで異空間、違う世界に迷い込んだかのような錯覚さえある。
目が覚めたら、きっとなくなってしまうような、甘くて幸せな夢のように。
いつも、小さい家に帰り、誰もいない家の鍵を開けて中に入ると、夢から覚める。
一人きりで冷凍食品をレンジでチンすると、
「これが私のほんとうの姿。私の棲み家」と、ほっとすると同時に、
寂しい気分になるのはなぜだろう。
今までは、一人孤独なのも平気だったのに。冷凍チャーハンだって、
おいしいと感謝して食べていたのに。二人の友人宅の豪華さ、贅沢な食卓や、
愛情に満ちた家族を見てからは、心がシクシク痛んで仕方ない。
勉強をしていたら、真夜中に祖母が帰って来た。
「おかえりなさい」と声をかけると、祖母は、「まだ勉強してたの? 頑張るね」と優しい目をして言ってくれた。だが、目尻のしわが深くなっているのに気づきさっきの友人たちと比べて落ち込んでいた自分を恥じた。白髪も増え、一気に老けて見えたのは、祖母が連日連夜、
一番時給の高い深夜に仕事をして、疲れ果てていたせいかとも思った。
女として生まれて、有能で稼げる男性と結婚するかしないかで、
人生はこんなにも差が出るものなのだろうか。
女として、祖母も母も、決してそこらの女性より劣ってはいない。
むしろ、美しい。こんなにも頑張っているのに、なぜ報われないのか。
そんなネガティブなエネルギーに誘われて、久しぶりに信彦兄貴が横に立ち、こちらを見た。
いつの間にか、社会人のような装いになっていた。どうも、高卒で社会人になっている設定らしい。
「僕が生きていたら、お祖母ちゃんも楽をさせてあげられたのに」と、悲しそうな目をして言った。




