第29章(自由奔放な由紀奈の母)
由紀奈のママも美人だが、どこか天然で面白い。
友達も多いようで、よく海外旅行にも行っている。
そんな時は、家政婦の定さんが泊まりがけで子どもたちの世話をしてくれるらしい。
幼い頃から面倒を見てくれた方らしく、祖母のように慕っていた。
洋食が得意なママとは違い、和食が得意なので、由紀奈は夕食を楽しみにしているようだった。
定さんが来ている時は、お弁当も本格的で、料理屋の仕出しのように、
色も盛り付けも素晴らしかった。たまに明菜と利絵にも、
そのお弁当を持って来てくれていたので、ママが旅行中なのがすぐ分かる。
「結婚しても、女は所帯じみて不細工になったらおしまい。
いつまでも美しく、少女のように可憐でなきゃ、男に飽きられる。
だから、自分磨きのために世界を旅しているらしいわ、うちのママは」と、由紀奈はあきれ顔。
「でも、確かに、そんなわがままで自由奔放なママが、パパは好きみたい」と首をひねっている。
利絵から見ても、由紀奈の母は魅力的だった。母親らしくないところがいい。
「勉強しなさい」とか、「早く起きなさい」などと言うのを見たことがない。
言わなくても起きるからかと思っていたが、
「ママが一番お寝坊さんなのよ。あてにならないから、みんなしっかりするしかないのよ」
と言っていた。だから、母親がいる時はお弁当はない。
学食かパンを買って食べている。なので、たまの定さんの弁当は、
三人の楽しみになっていた。由紀奈の母の旅行先に思いを馳せながら、
三人はお土産を楽しみにしていたものだ。
思えば明菜にとって、初めての親友である由紀奈に声をかけられてから、
世界は全然変わった。今まで見えていた、もののけや、
この世のものではない者たちの気配が消えた。
信彦兄貴の姿も見ない。
いや、気にしていなかったことに、ある時気が付いた。




