第25章(由紀奈と利絵の出会い)
目標を失い、未来に夢を抱けなくなって、
孤独で学校に馴染めなかった利絵に、声をかけてくれたのは由紀奈だった。
「どこから来てんの? 遠いん?」と話しかけてくれたのだ。
「奈良の方だから、通学に一時間以上かかるから。
朝六時には起きて、電車も何回も乗り継いで来るから大変やねん」と弱音を言っても、
「へぇー、すごいね。何で、そんなに遠くから、わざわざこの学校に来たん?」
と、次々に質問してくる。
興味津々で話をしていたら、あっという間に時間が過ぎていく。
どんどん心の中の、柔らかくて温かい部分に入り込んでくる。
「可愛い。好きだなぁ」と思って、心惹かれていく。
恋愛以上に、親友になりたかった。いつも一緒にいたかった。
夢破れて傷ついた心を癒やしてくれる。中学生だったことを思い出させてくれる。
普通の思春期の女の子に戻れた喜びを、一緒に驚きとともに享受してくれる。
ただでさえ、箸が転んでもおかしい年頃なのだから。
由紀奈は、可愛いだけのお嬢様ではなかった。ひょうきんで、何より強かった。
華奢な体なのに、レスリング技で地元の悪ガキどもを降参させたこともあった。
不良グループに囲まれて襲われそうになった時、かけたレスリング技に
、背の高い大きな男子が目を白黒させ、顔が青くなっていた。
一度やられてからは、由紀奈たちの姿を見ると、
柄の悪い男の子たちは顔色を変えて逃げていくようになった。不
良グループの頭だったようで、あれから由紀奈のことを「姉御」と呼ぶようになった。
もちろん利絵も。腰が痛いと言っても、半端ない身体能力なので、
男子に回し蹴りを入れるくらいは朝飯前だ。
「あのなぁ。その制服で不良たちと大立ち回りするのは、やめてくれ。
ウチの学年でも噂の的なんやから」と、由紀奈の兄の涼が、いつも小言を言っていた。




