第24章(愛情深い利絵の家族)
利絵の母はおしゃべり好きで、娘の友人が来ると話に興味津々で入って来る。
まるで少女のように、よく笑い、自分の恋話も、聞かれもしないのにしゃべり始める。
利絵の両親は、会員制のテニスクラブで知り合ったらしい。
天皇と美智子妃殿下のラブロマンスに影響されたセッティングだったようだ。
お互い親がロータリークラブに入っていて、両家とも有名な名家だったので、
トントン拍子で結婚が決まった。二人ともスポーツが趣味で、
ヨットや乗馬、マラソンなどに興じていたらしい。趣味が同じだというのは、
ポイントが高い。運動能力の高い両親の遺伝を受け継いでいるから、
利絵のような身体能力の高い子どもが生まれたのかもしれない。
有り余る財力で、娘をオリンピック選手にするため、期待して育ててきた。
オリンピックで活躍した体操選手を東京から呼び、
体育館を娘の指導のためだけに貸し切って練習していた。
コスチュームも有名なデザイナーに頼み、大会ごとに新品で出場した。
利絵も両親の期待に応え、いつも金メダルを取っていたらしい。
そのため、絶対に一位になれない他の選手から嫉妬を受け、
いじめや嫌がらせは半端ではなかったことは、想像に難くない。
なので、腰を痛め、オリンピックを諦めざるを得なくなるまでは、
非常に孤独で、母親と二人三脚で必死に耐えていた。
もちろん、友人など一人もいない。利絵にとっても、由紀奈と明菜は初めての親友だった。
由紀奈とは、中学まで過酷なスポーツに打ち込んでいたので、
話さなくても、同じ環境にいた人だけがわかる共通項をたくさん持っていて楽だった。
トップを取るには、他人の数十倍もの努力をしてきた。
たくさんのことを犠牲にしてまでも、ナンバーワンになることだけを夢見て生きてきた。
両親の笑顔を見たかった。期待し、お金を惜しみなくかけてくれた、
愛情を注いでくれた、二人三脚で頑張ってくれていた母のためにも。
だから、腰のアクシデントのせいで、すべての努力が無駄になった時の落胆は、
とても言葉では言い表せないものだった。




