第22章(かけがえのない親友たちとの日々)
高校生になって由紀奈という、かけがえのない友人ができた。
そして、もう一人、気の合う友人の利絵ができて、毎日が驚きの連続だった。
松井利絵も、中学生の時は体操選手として活躍していた。
元オリンピック選手に指導してもらうために、中学二年生の時、
この学校に転入してきたらしい。なので、由紀奈と同じく、練習に明け暮れ、
友人など作る暇などなかったそうだ。朝早くから夜中まで、
母親が車で送り迎えをしてくれて、親子二人三脚で頑張ってきた。
トレーニング姿で車に乗り、体育館に着くまで母の作った朝食を食べる。
朝練が済むと、制服姿に着替えて学校まで車で送ってもらっていた。
そして、六時限目のチャイムが鳴ると同時に教室を飛び出し、
また待ってくれている母の車に乗って体育館まで急ぐ。
その間、母の手作りのおにぎりを軽く食べる。そして、二十二時過ぎに練習が終わると、
また車に乗り、簡単な食事やプロテインを飲んで眠っているうちに家に着くのは真夜中だった。
急いでシャワーで汗を流したら、倒れるようにベッドへ。
移動時間が長いので、車の中での仮眠が大切だった。
着替えも、髪のセットも、車の中で器用にやれるようになったそうだ。
利絵の闘争心、負けず嫌いな性格は、数々の記録を生んだ。
本番に強く、見ている人の心を射抜く抜群の身体能力と華やかなオーラで、
観客はもとより審査員の注目を一身に浴びていたのだった。
なのに、無理な練習がたたって腰を痛めた。「しばらく安静にするように」と
言われたにもかかわらず、出場したい大会があり、薬でごまかして出場した結果、
取り返しのつかない身体になってしまったのだ。
どれだけ素晴らしい表現力があっても、日々の練習の積み重ねで鍛えた筋肉があっても、
二度と大会に出ることはできない。ドクターストップが出てしまったからだ。
少し無理をすると腰痛が出て、当分、家で横にならざるを得なくなった。
整体やスポーツトレーナーにもかかったが、手の尽くしようがなかった。
そして、オリンピックの強化選手に選出されていたにもかかわらず挫折。
普通の中学生に戻ったら、恐ろしいくらい勉強が遅れていた。
オリンピック選手に選ばれたら、スポーツ枠で大学もよりどりみどりだったのに。
そこから家庭教師を付けてもらって、なんとか高校に入ることができたそうだ。
確かに、素晴らしい身体能力で、体育祭では何をやっても、
どこにいても目立っていた。ショートカットでボーイッシュなのに
男子にモテモテなのは、いつも笑顔で話し上手で、キラキラ輝いているからだろう。
由紀奈も、少し弱気な優しい男子に、姉御のように慕われていた。
はっきり物を言うので、悩んでいたり、
相手のことや周囲の空気を読み過ぎて優柔不断になっている男の子の背中を、
バンバン押すのが得意なようだ。由紀奈と話をしているうちに、
自信を持って行動を起こせるようになるのは凄い。
コーチングという仕事があるが、彼女にはそんな才能が備わっているようだ。
とにかく三人ともキャラが濃すぎて、一緒にいると違和感がある。
特に、一番目鼻立ちのしっかりした明菜が、実は恥ずかしがり屋で、
ほとんどしゃべらないのも、他の二人は面白がっている節さえあった。




