第19章(明菜の守護霊たち)
明菜は、できるだけ目立たないように気を使っていた。
いつも教室では隅の方で一人で持って行った弁当を食べる。
休み時間は、トイレに行くフリをして、クラスの人から声をかけられないように逃げていた。
仕事で学校に行けないことも多かったので、仲良しの友達なんていなかった。
いたら、遊びに誘われたりすると、貧困なのが知られてしまう。
モデルのことも、両親が揃っていないことも、誰にも明かさなかった。
孤独を愛する少女のように、いつも本を読んで話しかけられないようにしていた。
油断していたら、またひどい目に遭うからだ。
小学生の時、モデルをしていることを知られて、いじめられたことがあった。
特別綺麗だとか、勉強ができるとかで、知らない間に他人のやっかみや妬みを受けることを、
嫌というほど経験していた。同じ学年の男子よりも高い身長。日本人離れした容姿。
勉強もできて、先生からひいきされているのが明白なのだから、
「ちょっと可愛いからって、いい気になって」と女の子たちに囲まれたこともある。
その時、彼女たちを蹴散らした武勇伝が、また明菜を有名人にしてしまった。
また、やらかしてしまった。全然、記憶はない。
二、三度小突かれて記憶が飛んだ。気がついた時には、
女の子たちは泣きながら逃げて行った後だった。
「あれは少林寺か? それとも柔道なんか?
見事なもんやった。武道の心得があるなんて、大したもんじゃ」
散歩途中だった老人が、笑いながら話しかけてきた。
また誰かが憑依して助けてくれたに違いない。
それから、いじめっ子は遠巻きにして、明菜を恐れているようだった。
顔に手の跡があったり、青あざを作っている女子もいた。
記憶がないのだから、責任の取りようもない。できるだけ敵意を持たれないよう、
息を潜めて目立たないようにしなければならないと、思うようになっていた。
半透明の兄が「明菜を守ってくれているんやから、安心やな」と、
もののけが言うけれど、守ってくれているのは、他の霊格の高い方だと感じている。
「あれは、かなり高次元の、格の高い人やったなぁ。
光が眩し過ぎて、近づいたら昇天しそうやった」信彦兄貴の霊が言っていた。
「お兄ちゃん、そろそろ昇天した方がええんとちゃう?
お迎えが来てくれんようになったら、地縛霊やで」そう言うと、
「俺は、明菜の子供に生まれると心に決めているんや。そして、
今度こそ、おばあちゃんやお母さんを幸せにしてあげるんやから」と言っていた。
「うちは結婚なんてせえへんよ。
諦めて、もう一度、お母さんの子供として生まれてきた方がええんとちゃう?」そう言ってあげた。




