第12章(霊感体質は変わらない)
東京にいても、明菜の霊感は健在というのか冴えているというのか、
スタジオやロケ地では奇妙なものに遭遇し、しばしば身につけていた護身用の水晶や
数珠が弾け飛んだり、紐が切れたりした。酔って帰ると、もちろん金縛りや足を掴まれるなど、
さまざまな嫌がらせがあった。
泊まるホテルの部屋に入った途端、「無理」と逃げ出したことは数知れない。
ましだと思った部屋でも、窓の外に坊主頭の男が見えたり、
髪の長い女性に足を掴まれて引っ張られたりした。それでも眠くて仕方のない明菜は、
「めんどくさいなぁ」と言って取り合わないでいると、諦めてくれる。
ただ、次の日、メイクさんに「足首どうしたんですか? こんなに腫れて。
ファンデーションを塗って隠しておきますね」と言われると、
昨夜の出来事が夢ではなかったことだけは理解できる。
聞けば、そのホテルは昔の処刑場だったとか。人の死は耐え難いことで、
無実の罪や今生に遺恨があれば、こうして分かってくれる人がいた時に
悪戯を仕掛けて面白がっているのかもしれない。
あるいは、長い年月、迷い、浮遊しているうちに、孤独と行き場のない心を持て余し、
もののけと化してしまったのか。目には見えなくても、邪念や悪意、
邪悪なエネルギーは物質を壊すことがある。
生きている人間でさえ、怒りや不満、負のエネルギーが物体を動かし、
破壊する場面を何度も見たことがある。「だからといって、何ができるのだろう?」
現実社会ですらそうなのに、見えない世界ならなおさら何もできないと、
無力な自分を情けなく感じていた。ただただ、不思議な世界の傍観者なのだろうか。
何かしてあげたいと思っても、相手はそれを望んではいない。




