第10章(小学三年生の時に気づく自分の異常)
自分が普通ではないと気がついたのは、小学三年生の頃だったと思う。
「なんで、明菜ちゃんは歩いていて、何もないのに避けたり変な動きをするん?」
と、いつも一緒にいた友達に言われたからだ。自分には見えている人々の姿が、
友達には見えていないらしい。
「友達たちには、誰が見えていて、誰が見えていないのだろう?」
注意して見ると、体のどこかが半透明だったり、足元が見えない人がいることに気がついた。
そういう人は服装も変わっている。ミニスカートが流行っているのにモンペ姿や着物姿だったり、
夏の暑い頃に毛皮姿だったりすると、この世のものではないと分かり始めていた。
兄は相変わらず家にいて、明菜と共に成長していた。
小学四年の頃には、地元の中学生の制服を着て、坊主頭になっていた。
その頃には、普通に母に「お兄ちゃん、坊主頭で野球部に入ったみたいやで。
グローブ持って出て行ったもん」と言うと、
母は「お兄ちゃんのパパも野球部だったから、外でキャッチボールでもしてるんやわ」と
答えてくれていた。
この頃、母も夢の中で棲んでいるような目をしていた。
現実的ではないことも受け入れ、母はパパもお兄ちゃんも一緒に住んでいると、
本当に信じているようだった。それを祖母も明菜も、間違いを指摘することなく
普通に接することができたのは、母の引き裂かれた心を思いやればこそだった。
それは明菜にとっても見えている事実だったので、
体がないだけで、精神的には家族がつながっているのだと確信できていた。




