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10.



 セシリアの作った特別な石けんを用いて、魔王城の徹底清掃が始まった。

 

「改めて……このゴーレムの数には圧巻だな」


 廊下に立つレオニダスとセシリアの前には、忙しなく働くゴーレム達がいる。

 一〇体ほどのゴーレムが、廊下を手分けして掃除。


 しかも、この場所以外にもゴーレムがおり、同時並行で作業をしている。

 否、できているのだ。


「一〇体くらいで大げさだよ」


(それくらいで何をそんなに感心しているのかしら。さjほど凄いことでもないのに)


 セシリアが当然とばかりに言ってのけるものだから、レオニダスはさらに感心したようにうなずく。


「尋常ではない魔力量だな。さすがは聖女」


『ちっがーう! 聖女だから魔力量が多いって訳じゃあないから!』


 精霊・真理がレオニダスに体当たりしてくる。

 しかし精霊には実態がないため、すり抜けるだけだった。


『魔力量はすなわち精神力! この莫大な、古竜すら凌駕する魔力量は、それだけセシリアの精神力がタフであることの証なんだから!』


(ん!?)


「ちょ、ちょっと待って真理!」


 お怒りの真理を止め、セシリアが言う。


「い、今なんて……?」


『セシリアの精神がタフであること……』


「じゃなくって! 古竜すら凌駕するとかなんとか言ってなかった……?」


(私自分がどれくらい魔力持っているのか把握してなかったけど……まさか……まさかね……?)


 真理はあっさり言ってのける。


『古竜を凌駕する魔力量だよ』


「それ! 私それ聞いてないっ。ドラゴンを凌駕するてっ!」


『はは、ドラゴンなんてとっくに抜かしてるよ。古竜とドラゴンは別もの』


 長い年月を生き、強大な力を持つ、天空の覇者——それが古竜だ。

 そしてセシリアはそれを凌駕しているという。


「ちょっと、普通に初耳なんだけど……」


『まあ聞かれなかったからね』


「どう聞けっていうのよっ」


 そもそもセシリアはこの世界の住人ではないため、知識に欠ける部分が多い。

 前提知識すら知らないのだから、こうしたことが起きるのも無理はなかった。


「古竜を凌駕するとは、具体的にどれくらいなの?」


『何言ってるのさ、セシリア。一体誰が、古竜1匹【程度】を凌駕するだけって言ったって?』


(一匹程度!? なにそれ!?)


『体内の許容量としては、古竜10匹分。総合的な魔力量は無限さ!』


「「は……?」」


 レオニダスもセシリアも、真理の発言にただ言葉を失った。


「ま、待ってくれ……真理。無限とはどういうことだ?」


『文字通りだよ。限りない魔力量を、外部から取り込めるのさ』


 レオニダスは困惑する。

 セシリアにも、まるで意味がわからなかった。


「外部からって……どこから?」


『精霊達からさ。君は精霊から特別に愛されてる。だから、魔力を無制限に、ほしいときにほしいままに、受け取れる。で、体内には古竜10匹分ストックできるってわけ』


 ……あまりに突拍子もない話で、セシリアは自分のことだとはとても思えなかった。


「精神の強さ云々どこいった……無限の魔力って……」


『それは許容量、つまり体に留めておける量の話だよ』


(なんだかわからないけど、とんでもない話だ……無限の魔力なんて聞いたことないよっ)


 一方で、レオニダスは得心いったようにうなずいた。


「そうか。だから……普段のセシリアからは、魔力を感じないのか……」


「どういうこと?」


「君はゴーレムを無数に作り出せるほどの魔力を持っている。しかし普段、隣にいても君から溢れ出る魔力はさほど感じない。ずっと不思議に思っていたんだ」


 もし古竜十匹分の魔力が常に体に宿っていたなら、その身からは魔王に匹敵するほどの魔力が放たれていたはずだ。

 魔族であるレオニダスや魔物さえも、裸足で逃げ出すほどの威圧を放っていたことだろう。


「そう感じないのは、普段君のうつわのなかには、魔力がなくて、必要なときに外部から取り込んでいたからなんだね」


『ま、そーゆーこと』


 えへん、と真理が偉そうに胸を張る(胸はないのだが)。

 セシリアは半ば呆れていた。


(この子……なんでそんな重要な情報を共有しないのかしら……。叡智の神が聞いて呆れる……)


 真理がこういう性分であることは承知していたので、そこまで失望はない。

 有能なアドバイザーだったら、ナハトにそもそも殺されることもなかっただろうし。


(何でも検索できるだけで、有能とは限らないのは……まあわかっていたことだしね)


 だからこれ以上、セシリアは怒ることも、追求することもなかった。

 一方で、レオニダスは本当に感激したように言う。


「君は……魔族すら凌駕する力を持っていたのだな。素晴らしい……」


「え? いや魔族は凌駕してないでしょ、さすがに」


「いや、しているよ。魔族ですら外部からの魔力取り込みはできないのだ。君は本当に凄い」


(うーん……次期魔王様に褒められるほどの凄いことだったとは……)

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