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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第8章: 無色の継承者、幹部への挑戦

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自分との約束②

第3階層まで、休憩なし。

9時間。


さすがに剣を振るっていた腕は重く、魔力を巡らせるたびに体の内側が軋む。

呼吸は浅く、足裏の感覚はとっくに薄れていた。


――限界だ。


身体が、私より先にそう叫んでいる。


「今日はここで野営しよう」


ティントの声が、張り詰めていた戦闘の緊張をようやく断ち切った。


「アキナ、食料は足りそう?」

「うん。ミナが昨日たくさん狩ってくれたから、保存食も余裕あるよ」

「じゃあ、このまま食事にしよう!」


焚き火の前に並ぶのは、荒野ウサギの燻製とアユの干物。

市場で仕入れた野菜と香辛料を合わせただけの、実に簡素な料理だ。


それでも――。


「……温かいご飯って、すごいな」


ぽつりと、オーディンが呟いた。


「香りと温かさが染みるよね」

「一応、将軍たちは拘束してるし……明日は一度荒野に出て、別の食料も補給する?」

「アキナ様、愚弟を甘やかさないでください」

「えー」

「いや、いいんだよ。今日の戦い、私ほとんど何もしてないし」

「おいおい、何言ってんの?」

「そうですよ。3階層すべてに無効化領域(シレンティア)を張ったのは誰です?」

「そんな大したことじゃないって」

「はいはい、勇者様はお強いですね」

「からかわないで、オーディン!」

「悪かった悪かった。でも無理はするなよ」

「任せろり!」


笑い声がこぼれる。

ここが魔王遺跡城だという事実を、ほんの一瞬だけ忘れさせてくれた。


束の間の休息。


「じゃあ、行ってくるね」

「僕も行く。防御はできるし」

「ありがとう、ダーク」

「行ってらっしゃい」


2人で下の階層へ向かい、無効化領域(シレンティア)を追加展開する。

動作は最小限。魔力制御も、正直言ってかなり雑だ。


「ただいま」

「早かったな」

「さすがに疲れた……先に寝るね」

「おやすみ」


――翌日。


外光は届かないが、懐中時計は8時を指していた。


「アキナ様、おはようございます」

「おはよう。みんな準備はいい?今日は一気に残りを駆け上がるよ!」

「おう!」


30分ほど走り、第4階層へ。


空気が歪んでいる。

感情が異常に膨張し、愛情は狂気へと変換され、炎属性は暴走を誘発する。


嫌な予感しかしない。


「遅い遅い遅い!こんなに待ってたのに……

みんな私のこと嫌いなの!?もういい!知らない!

全員狂って共倒れしろ!――狂気愛(アモル・ディメンシア)!」


いきなりの高位魔術。


……え、聞いてないんだけど。


精神障壁(ユスティティア)!」

「オーディン、ナイスアシスト!裁きの光(ソル・ユディキウム)!」


ダークの広域魔術が炸裂し、インフェルノファムが次々と消滅していく。


「何てことしてくれるの!?

 私の可愛い可愛いインフェルノたちが……

 許さない!許さない!許さない!!

 狂炎(フランマ・インサニア)!全員燃えて死んでしまえ!」


完全に想定外。

それでも、手は止められない。


「どうせ後でやるつもりだったし、今でもいいよね?――無効化領域(シレンティア)!」

「助かります、アキナ様!大地結界(ガイア・パシス)!」


無効化領域(シレンティア)でライラの魔法を打ち消し、そこへティアの上位魔術が重なる。

ぎりぎり、紙一重の封殺。


――さすがだ。

私の考えを、言葉にする前に汲み取ってくれる。


だが、彼女の呼吸は荒い。


軽度回復(アモル・レニス)

「……ありがとうございますミナ」


「よくも……!」


怒り狂うライラの前に、ルーカスが一歩踏み出した。


「なぁなぁ、そんなに怒るなよ。可愛い顔が台無しだぜ、ライラ」

「か……かわ……!?呼び捨てにするな!私は魔王様の――」

「でもさ。そこまで想ってるのに、その魔王はあんたに振り向きもしない」

「……」

「お前、すごいよ。尊敬する」


沈黙。


「じゃあ、俺らは行くから」


呆然とするライラを残し、第5階層へ向かう。


「ルーカスって、たまに罪な男だよね」

「ん?」

「なんでもない」


敵ながら、少しだけ同情した。


「ようこそ、嫉妬の階層へ。――腐食の紐帯(ヴィンクルムプテレド)


成功が、呪いに反転する。

リンク阻害、バフ汚染。


本当に、性格が悪い。


「ルーカス!」

「おう!爆炎(アル・エクスプロシオ)!」

「ティント、圧縮風(ヴェンタス・オルビス)!」

「了解!」


ミナの合図と同時に、圧縮された風へ炎が巻き込まれる。

制御された火災旋風。


――いや、作戦を考えたのは私とミナだけど。

それでも、これは普通に圧巻だ。


「ティント姉さん、90度ずらして!」

「わかった!」


旋風がヘレナへ――。


嫉心臓(コル・エンヴィディア)!」


火災旋風が暴走する。


「僕の前で協力技!?舐めないでください!」


高笑い。


予想の斜め上どころか真上3キロみたいな展開が続いたライラ戦とは違い、

こちらは不気味なほど、プラン通りに進んでいる。


……ここまで上手くいくと、逆に不安になる。


瞬間移動(トランシティオ)――寝てろ!」


峰打ち一撃。


ヘレナが崩れ落ちるのと同時に、旋風が霧散した。


「よし。最後の階層」


誰も言葉を発さない。

それでも、足は止まらなかった。


「行こう」

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