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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第8章: 無色の継承者、幹部への挑戦

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自分との約束③

第6階層。


ただただ、暗闇。

光を拒むのではない。希望を抱いた瞬間、それごと吸い取られる。


音はなく、感情すら薄れていく。

思考は鈍り、前に進む理由さえ曖昧になる世界。


――1番、嫌な階層かもしれない。


火球(フランマ・テヌイス)


灯った火が、数歩先の闇を切り裂く。

だが、安心には程遠い。

見えるようになった分だけ、闇の深さが際立った。


「ここまで来れたこと、褒めて遣わそう、人間よ」


声だけが、闇から滲み出る。


「だが、我こそが魔王様の理想を叶える忠実なる僕!

 ここからは一歩も進ませぬ――希望殺しっ(スぺス・アボルタス)!」


……待って。


初手から上位魔術って、どういうこと?

忠実な僕を名乗る割に、全力すぎない?

心臓に悪いから本当にやめてほしい。


「驚くのはまだ早いぞ、人間。

 アビスサーペント――光を喰らい尽くすのだ!」


サーペント。

蛇。


……うん、知ってた。

わかってたけど、無理なものは無理。


蛇は全般的に無理だし、

闇属性で巨大とか、論外もいいところだ。


視界に入った瞬間、背筋が凍る。


「うわぁぁぁ!来るな来るな来るな!!」


ダークの悲痛な叫びが、階層に反響した。

アビスサーペントが、今まさに彼を呑み込もうとしている。


……戦闘中なのに、正直それどころじゃない。

怖い。無理。泣きそうだ。

逃げ出したい衝動を、必死に押し殺す。


「ダーク!姉ちゃんが今助けるからね!!動物召喚(アニマ・ドムス)!」

生命の蔦(ヴィエナ・ヴィタエ)!」


友愛獣が蛇に飛びかかる。

その隙を突き、ティアの蔦が唾液まみれのダークを引きずり戻した。


「やっぱ無理無理無理無理!――無効化領域(シレンティア)!」


階層の特性までは消えない。

それでも、これで希望魔法は使える。


「ありがとう、アキナ!これで身を守れる。裁きの光(ソル・ユディキウム)!」


……お願いします。本当に。

蛇だけは、勘弁して。


次に食べられたら置いて帰るから。

冗談じゃなく。


「弟を傷つけた罰よ!――友愛の怒り(フィデイ・ルプトゥラ)!」


「ぐ……ぐわぁぁぁぁ!

 なんだこれは!?痛い!痛いぞ!!」


……そりゃそうだ。

この中で一番怒らせちゃいけない人を、怒らせたんだから。


蛇を大量投入した恨みもあるし、

正直、まだ優しい方だと思う。


ティント、もっとやっていい。


――そして、全員拘束。


2日間で、合計19時間。

今ほど魔術師団の鬼特訓に感謝した日はない。

たぶん、もう二度と来ない。

……来ないでほしい。


そう考えていると、

ルーカスとオーディンが各階層から将軍たちを運んできた。


……圧巻。


私たち、本当に強くなった。


「アキナ様、全員揃いました」

「うん。じゃあ皆さんに、お知らせがあります。聞きたい?」


沈黙を破ったのは、ライラだった。


「その前に……ルーカス様と一緒にいられる方はどれ?

  ・・・私はそれがいいですわ」


……はいはい、想定通り。

本当に罪な男だ。


「狂愛の!なんてことを申すか!

 お主には魔王様という偉大なるお方がおるであろう!」


うんうん、予想通りの茶番。

でも――


「静かにしてください!アキナ様が話しているでしょう!」


ナイス、ティア。


「まず、ライラ。酷だけど、しばらくルーカスと一緒に過ごすことは許可できない」


ライラが反論する前に、ルーカスが口を開く。

こういう時の空気読み、本当に助かる。


……誰かさんと違って。


オーディンが不服そうな顔をしている。

あ、バレた。


「そうだぞ、ライラ。まずは国王様のだな……」


「違うでしょ、バカ。ライラにはティアと私についてもらって、従者の心得を学んでもらうの」

「俺が言いたかったのはそれだ!バカ!」


……私の感心を返してほしい。


「ま、そういうわけで、しばらくは私とティアとミナの傍にいてもらうから」

「わかりました。それが一番手っ取り早く、ルーカス様の傍に行けるなら」


……意外と物わかりがいい。

もっと暴れると思っていた。


「他のみんなは、魔王を説得するまで人質として軟禁します」


「異論がある人は、今聞くけど」


沈黙。


納得したわけじゃない。

でも――私が「説得」と言ったから。


それだけで、

しばらくは大人しくしてくれると信じたい。


ルーカスがテントを張り、野営の準備を終える。


「今日はもう寝よう。疲れた」


10時間の戦闘。

それから、気を張り続けた演説。


私らしくないことを続けた2日間。

……もう二度とやりたくない。


アキナが深い眠りについたのを確認し、

ティントは皆を呼び集めた。


「捕虜として将軍たちを拘束するのは、もうアキナが決めたことだからね」


「でも、各部隊の動きが気になるんですよね?」

「さすがティア。その通り。トップが拘束されてこのまま大人しくしてるとは思えない」

「だからってどうするんだよ、姉さん」

「オーディン、少し考えてから喋る癖をつけな」

「ダーク……最近、俺への扱い雑じゃね?」

「気のせいだよ。で、僕から提案なんだけど……」

「でも、それをアキナ様が承諾しますか……?」

「承諾するしかない状況を、僕たちで作るんだよ」


――翌朝。


胸の奥に引っかかっていた違和感が、

ついに、はっきりとした形を持つ。


どうしてこの時の私は、

それを予想できなかったのだろう。

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