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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第8章: 無色の継承者、幹部への挑戦

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自分との約束 ①

カーテンの隙間から漏れる朝日が、やけに温かい。

その優しさが、否応なしに現実を突きつけてくる。


今日から私たちは、魔王討伐――

いや、魔王救出の旅に出る。


スカーレットも、

そして魔王すらも、仲間にする。


そう決めた。


「おはようございます、アキナ様」

「おはよう、ティア……ついに、だね」

「……怖いですか?」

「怖いよ。めちゃくちゃに」


正直な言葉が、自然と口をついた。


「でも、大丈夫。みんながいるから」

「ええ。では、支度をいたしましょう」


鎧を整え、装備を確認していると、ノックもなしにミナとティントが入ってくる。


「おはよう。もう行けそう?」

「あと5分! 先に下で待ってて」

「了解。男子たちはもう揃ってるわ。なるべく急いでね」

「はーい」


今いるのは王宮の横にある宮殿。

ここから先は、ずっと徒歩の旅になる。


目的地は、荒野を越えた先にある魔王遺跡城。

噂では、古びて崩れかけた、まるでお化け屋敷のような城らしい。


……ホラー、苦手なんだよなぁ。


でも。


(行くしかない)


階段を駆け下り、仲間が待つ玄関へ向かう。

そこには噂を聞きつけた学園生徒、家族、教師、魔術師団、そしてローレンツ宮廷魔術師の姿があった。


前回とは比べものにならないほど、大きな門出だ。


「勇者様!行ってらっしゃいませ! どうかご無事で!」


歓声に混じる応援。

その一方で、家族たちの表情は重い。


――生きて帰れる保証なんて、どこにもない。


私には、別れを告げる家族がいない。

その分、少しだけ楽だった。


皆の顔を真正面から見たら、足がすくんでしまいそうだったから。


「……行ってきます!」


背を向け、王都の門をくぐる。


荒野が広がる。

初陣課外の時とは違い、胸の奥はずっとざわついたままだ。


それでも、不思議と空気は悪くない。

全員の覚悟だけが、ひりつくほど伝わってくる。


「ここからは後戻りできないよ。覚悟はいい?」

「もちろん!俺ら最強!やってやろうぜ!」

「無論だ!ひよっこどもは先輩がたを頼って後ろに隠れててもいいだよ?」

「ルーカス、うるさい」

「どこまでもお供しますわ、アキナ様」

「……うん。行こう」


王都を出て、一週間。


ここが、かつて六将軍と初めて遭遇した場所。

あの頃より、確実に私たちは強くなった。


なのに――


(不安が、消えない)


「ここが中間地点です。どうしますか、アキナ様」

「もう暗いし、ここで野営しよう」

「了解。各自、準備を」


ティントの一声で、全員が手際よく動き出す。

もう、野営にも慣れた。


「アキナ、今日の成果。荒野ウサギが4匹、あとアユが4匹」

「大漁だね。遠くの川まで行った?」

「うん。保存できるものがいいと思って」

「ありがとう、助かる」


太陽が昇っているうちに距離を稼ぎ、

夜は魔物の気配を警戒しながら休む。


団長の地獄のような訓練のおかげで、進行速度は想定以上だった。


そして――4日後。


ついに、魔王遺跡城・第1階層へ到達する。


「思ったより早いですね」


聞き覚えのある、嫌な声。


「歓迎の挨拶といきましょう。疑惑光(ドビウム・ルクス)――ディセプションフォックス、出番ですよ」


地形が歪み、迷宮が姿を変える。

藍銀の狐たちが散会する。


「……ほんと、予想しやすい人」


ティントが即座に指示を出す。


「全員、プラン通り!」

「了解! 精神浄化(メンス・プリタス)!」

光盾(アウレア・スクトゥム)展開! ルーカス、最大火力いけるよ!」

「おう!心炎(フランマ・コルディス)!」


ディセプションフォックスが藍銀色に輝く。


集団幻惑(イルルーシオ)、来るよ!」

「了解ですわ!生命の蔦(ヴィエナ・ヴィタエ)!」

「ありがとう、強化紐帯(カリタスヴィンクルム)!」


連携は完璧だった。

狐たちは、次々と消滅していく。


「……これは、予想外ですね。では、絆分断(ネクス・メンタム)――」


「無駄だよ」


ティントの叫びと同時に、ダークがスレインへ斬りかかる。


「っ!?」

風鎖(ヴェトルウム)


拘束。

動きを完全に封じられたスレインは、なすすべもない。


「な、なんですか……これ……」

「そのまま、眠っていてください」


オーディンが剣の柄で首元を打ち、失神させる。


「行くよ!2階層へ!」


スカーレットの情報が、寸分違わず役に立った。


「ようこそ、この俺様の階層へ」


嫌な笑い声。


「挨拶代わりだ。命令の言葉(ヴェブム・イムペラス)


世界律が発動する。

「弱い者から発言権を失う」。


最も弱いのは――正義魔法。


オーディンが動けなくなる。


でも。(想定内)


手話。

声が出なくても、意思は伝えられる。


右。左。左。右。後ろ。前。


オーディンの正確な指示で、プリド・ライオンを次々となぎ倒す。


「……少しはやるじゃねぇか」

「残ってるのはお前だけ」

「どうやって捕まってたい?」

「……は?」

「選択肢はありませんけどね。大地の庇護(テッラ・マテル)

「ふえっ!?」


拘束。


魔王を除き、残りは四人。


(ここからが、本番)


「やっほー! 僕とビオゴーレムと遊んでいかない?」


第3階層。

枯れた庭園と、咲き続ける死花。


息が詰まるほど、不気味だ。


光槍(ルクス・ランケア)!」


全方向への眩い一撃で視界を奪った、その一瞬。


瞬間移動(トランシティオ)!」


オーディンがティントを、モルタの背後へ飛ばす。


「……え?」


「ごめんね、遊んでる時間はないんだ。動物召喚(アニマ・ドムス)

「いったぁ!?」

「嘘つけ。噛んでねぇだろ」

「……でも、動けない」

「しばらく、そのままでお願いしますね」


――戦いは、想定通りに進んでいる。


それなのに。


胸の奥で、

何かが、ずっと引っかかったまま。

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