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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第6章: 無色の継承者、暴走する力

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知らなかった過去、知っている過去

あの後、こっぴどくミナとティアに叱られた。

本当に、容赦がなかった。


なんで我慢なんかしたんだ、とか。

あのまま制御が遅れていたらどうするつもりだったんだ、とか。

もし私に怪我でもあったら、もし取り返しがつかなかったら、って。


責められている、というより、怯えているのが伝わってきて、余計に堪えた。


「……すみません」


そう言うたびに、二人は言葉を重ねてくる。


我慢は美徳じゃない。

独りで抱える必要なんてどこにもない。

頼ることは弱さじゃない。


理屈ではわかる。

わかっている、つもりだった。


……正直、大変だった。


途中から何を言われていたのか、半分くらい頭に入っていなかったと思う。

ただ、私のために怒ってくれている、その事実だけが胸に残っていた。


……あ、いや。

ほんとに反省してます。ちゃんと。


もっと人を頼ります。

本当に。


それでも、不思議だったのはその後だ。


学園全体の反応が、あまりにも綺麗に、真っ二つに割れたこと。


無色魔法は危険だ。

制御できない力は恐ろしい。

いつか必ず破滅を招く。


そう言う人たちは、私を見る目に、はっきりと警戒と拒絶を滲ませていた。


一方で。


勇者様すごい。

さすが無色。

魔王なんて敵じゃない。


目を輝かせて、期待と熱狂を向けてくる人たちもいる。


同じ出来事を見て。

同じ私を見て。

同じ力を見て。


評価が、ここまで分かれる。


人間って、本当に不思議だ。

いや……怖い、と言った方が正しいのかもしれない。


言葉にしたからといって、スカーレットへの怒りが消えたわけじゃない。

許したわけでもない。


裏切られた、という感情は、今も胸の奥で燻っている。


ただ。

溜めて、溜めて、溜め込んで、爆発させるよりは。

こうして吐き出して、受け止めてもらう方が、ずっとマシだと気づいただけだ。


……とはいえ、いつまでも立ち止まってはいられない。


今日は剣術の稽古の日。

体を動かせば、少しは頭も冷えるだろう。


頑張らないと。

頑張らなきゃ。


「アーキナ!迎えに来たよ。……なんか、すっきりした顔してる」


ミナの声は、いつもより少しだけ柔らかい。


「ありがとう。少し、楽になった」

「うんうん、それならよかった。ほら、稽古場行こ」

「うん」


歩きながら、ふと気づく。

ミナの隣だと、背筋に入っていた無駄な力が抜ける。


今回の件で、ミナとは前よりも距離が縮んだ気がする。

気を張らなくていい。

黙っていても、変に気まずくならない。


居心地がいい、というのは、こういう感覚なのかもしれない。


「よっ。元気になったみたいだな」


オーディンが片手を上げる。


「あ、そうだ。ヴァイス教官が呼んでたぜ」

「心配かけてごめん。……え、今?」

「今。結構真面目な顔してたから、早めに行った方がいいと思う」

「了解……」

「いってらっしゃい、アキナ」


その声に背中を押されて、教官室へ向かう。


「ヴァイス教官、アキナです。お呼びでしょうか」

「あぁ、入れ」


室内は相変わらず、無駄がない。

机の上も、棚の配置も、すべてが合理的で、迷いがない。


……この人の頭の中みたいだ。


「魔力暴走を起こしたと聞きました」


振り向いた先に、ローレンツ宮廷魔術師がいた。


「はい。仲間が受け止めてくれたので、大事にはなりませんでした」

「それはよかったわ。本当に……今回は、大きな出来事でしたね」

「正直、まだ整理できていません。怒りも、悲しみも、残ってます」

「それでいいのよ」


ローレンツは、静かに微笑む。


「測れないものほど、本当は一番大切なの。感情も、関係もね」

「……はい」


「俺の考えだがな」


ヴァイス教官が口を開く。


「強さってのは、生き残ることじゃない。折れなかったことだ。お前は折れてない。それだけで十分だ」

「……ありがとうございます」


少しだけ、胸が軽くなる。


「それでだ」


ヴァイス教官の表情が引き締まる。


「学園長と、この国は信用ならない。誰が敵で、誰が味方か。今は見極める段階だ」

「私も同意見よ。でも忘れないで。私たちは、あなたたちの味方」

「……わかっています。何かあったら、必ず相談します」

「それでいい」


差し出された資料。六将軍について、今わかっているすべて。


それを受け取り、ヴァイス教官と剣術演習場へ向かう。


ヴァイス教官による稽古は、地獄だった。

いや、本当に。


腕が上がらない。

足が震える。

息が続かない。


それでも、誰も手を抜かない。


「……これ、マジで死にます」

「付いてこれる時点で異常だ」


日が傾く頃、ようやく終わる。


その後ティントによって共有された情報。


魔王の過去。

恋人の絶望。

スカーレットの生い立ち。


自殺、という言葉が胸に刺さる。


日本にいた頃の、あの感覚。誰にも必要とされていない気がしていた、あの夜。


でも――


合わなくても。

欠けていると感じても。

それでも。


世界が苦しんでいるなら。

壊す以外の道は、本当に無かったのだろうか。


変える、という選択肢は。


……あるはずだ。


そう信じたい。

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