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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第5章: 無色の継承者、裏切りの影

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緋色の魔女の裏切り

学園の門の前。

入学の日に私たちを祝福してくれた紅葉は、すでに茶色へと変わっていた。

灰色に沈んだ空は、この先に待つ運命を暗示しているようで、胸の奥がざわつく。


仕立て屋のラーク、クリスティー先生、ヴァイス教官、そしてローレンツ宮廷魔術師。

思っていた以上に多くの人が、私たちを見送りに来てくれていた。


「ティント、ダーク。気を付けて行ってくるんだよ」

「はい、父さん」


短いやり取りなのに、やけに重い。


「お前たちは、我々の誇りだ。こんな役目を背負わせてすまない」

「謝らないでくださいませ、ヴァイス教官」


スカーレットが一歩前に出る。


「クリスティー先生も、ヴァイス教官も……皆様がいなければ、私たちはここまで来られませんでしたわ。ね? 皆さん」

「うん。そうだね」


私は深く頭を下げた。


「本当にありがとうございました。……行ってきます」


それ以上言葉を交わせば、きっと足が止まってしまう。

私たちは足早に馬車へ乗り込んだ。


王都の門を越えた先からは徒歩。

復活が確認された荒野まで、片道一週間の旅。


——怖くないわけがない。

正直、鬼怖い。


でも、来たばかりの頃の私なら、きっと泣き言を言っていた。

今は違う。みんながいる。


「アキナぁ~~、そんな顔すんなって! ほら、こんな強い仲間が揃ってるんだぜ?」

「別にそんな顔してないし……というか、あんたが一番頼りないんだけど」

「え?! 俺、励ましたよね?!」

「まぁ、オーディンはにぎやかし担当だな」

「ルーカスまで?! ダーク、頼む、お前だけは否定しないでくれ!」

「え? 僕も同意見かな……ごめん」

「ごめんが一番刺さるんだって……!」


笑い声が、少しだけ緊張をほどいてくれる。


馬車が止まり、王都の外へ。


「よし、行くか! 冒険だ!」

「えぇ、冒険ですわ!」


「……ねぇ、みんな。来てくれてありがとう」


「は? 何言ってんの。仲間じゃん」

「そうだぞ、気負いすぎだ」

「水臭いです、アキナ様」

「もっとルーズに行こうぜ!」

「オーディン2人はいらないから」

「おい、ダーク!」


——このメンバーでよかった。

心から、そう思えた。


野営を繰り返し、ようやく辿り着いた荒野。

日はすでに傾き、空気が一気に冷えていく。


「ここが、確認地点ですね」

「うん。今日は無理しないで野営にしよう」


各々が迷いなく役割をこなしていく。

火、狩り、結界、風呂、水の確保。


私は食事の準備に集中した。


「今日の成果だよ」

「荒野ウサギ三匹……ありがとう」


包丁を入れる手は、もう震えない。

煮込みスープと、燻製。

せめて、温かいものを。


食事は賑やかで、平和だった。


その夜、私は最初の見張りに立つ。


焚き火を見つめていると、世界があまりにも静かで。

——魔王なんて、本当はいないんじゃないか。

そんな錯覚すら覚えた。


「アキナさん?」


「スカーレット、眠れない?」

「ええ……明日が、少し」

「大丈夫だよ。みんなで助け合えば、今回も——」


スカーレットは、泣きそうな笑顔を浮かべた。


「あなたは、本当に優しくて……残酷ですわね」

「どういう意味?」


「あなたとは、本当の意味でお友達になりたかったですわ」


——その続きを聞く前に。


友愛獣たちが、激しく吠えた。


闇の向こうに、七対の瞳。


近づいてくる。

色とりどりの光の中、最後の一つだけが——夜よりも黒い。


「戦闘態勢!」


その声と同時に、スカーレットが前へ出る。


「スカーレット! 危ない!」

「大丈夫ですわ。警戒を解いてください」


深紅の瞳の女が、楽しげに微笑む。


「つれないですわね。六将軍が直々に来てあげたというのに」

「迎えに来たよ、緋色の。帰ろう、我が家へ」


——我が家?


スカーレットは、振り返らなかった。

六将軍の隣に並び、そのまま霧に溶ける。


「スカーレット……? 嘘でしょ……」

「行かないで……私たち、友達でしょ……」


叫びは、夜に消えた。


ただ、傍にティアとミナが立っていた。

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