魔王が復活。私は戦場へ
あの恐ろしい一日は、「エモル共鳴異常事案」として国家機密扱いとなった。
だが、人の口に戸は立てられない。
噂は噂を呼び、尾ひれをつけて学園内を巡っている。
それでも、授業だけはいつも通り進められていた。
「おはようございます、アキナさん」
「スカーレット! おはよう。もう体調はいいの?」
「えぇ。それより……浄化演練、危なかったって聞きましたの。大丈夫ですの?」
「うん……まぁ、大丈夫だよ」
——濁すしかない。
でも、スカーレットも真実を知るべきなのではないか。
そんな思いが、胸の奥に引っかかる。
モヤモヤする……。
「諸君、おはよう。浄化演練はお疲れ様と言いたいところだが、今年は中止だ。来年以降も再開は見合わせとなる」
……まぁ、当たり前だよね。
それなのに、学園長室で言われたあの一言が頭を離れない。
——来年も、あなたに参加してほしい。
「そこでだ。ヴァイス教官直々に、魔物について講義をしていただく。本来は実戦で学ぶ内容だが、今回は座学で補う」
「おはよう。今年の浄化演練は滅茶苦茶だった」
教官の声は、いつになく重い。
「だが、それで知識を放棄していい理由にはならない。宮廷魔術師、討伐隊、騎士団を目指す者もいるだろう。知識は、自分の命を守る武器だ」
黒板に、六つの名が書き出されていく。
六将軍——。
嫉妬、狂愛、絶望、残酷、傲慢、疑念。
それぞれの軍、魔物、相性の悪い魔法。
最後に書かれた名前を見た瞬間、背筋が冷えた。
——疑念の将軍、スレイン=ミラージュ。
魔物:ディセプションフォックス。
「魔王は封印された。しかし、魔族と魔物は生き残った。
この中でも最上位が六将軍だ」
一拍置いて、ヴァイス教官は続ける。
「今回の件は国家機密だ。詳しくは話せない。だが——覚えておけ。
自分の魔法と相性の悪い将軍と軍を」
そして、はっきりと名前が呼ばれた。
「特にだ。エモル数値が高く、今回の件で活躍した
アキナ、グーデリアン、コンフィグ。よく覚えておけ」
——嫌悪より先に、恐怖が来た。
横を見ると、オーディンもダークも同じ顔をしている。
大丈夫。
一度できたことは、二度できる。
そう伝えたくて、私は二人に微笑みかけた。
少し遅れて、二人も笑い返してくれる。
「質問はあるか?」
「はい」
「グーデリアン、どうぞ」
「資料を閲覧することは可能でしょうか?」
「あぁ。授業後、教官室に来い。
では最後に——全員、エモル再計測だ。魔術演習場へ」
空気が張り詰める。
「放出始め!」
前回より、魔力がはっきり見える。
——そして、数値はさらに跳ね上がった。
「グーデリアン、1100。コンフィグ、1500。
討伐隊に選ばれる覚悟をしておけ」
その後、私の番が来る。
「アキナ、前へ」
「……はい」
「1800だ。すごいな」
その瞬間、警報が鳴り響いた。
「ヴァイス教官! 伝令です!
魔王復活——魔王が復活しました!」
……魔王?
復活?
早すぎる……。
「クリスティー先生、生徒の安全確保を。グーデリアン、コンフィグ、アキナ。仲間を集めろ。説明の時間はない」
仲間……。
「決まってるよね。ダーク、オーディン」
「あぁ、もちろん」
「スカーレット、一緒に来てほしい。無理なら——」
「もちろんですわ。アキナさんの、最初のお友達ですもの」
「ティント姉さんも、ミナとルーカスも来るって」
「剣術部みんなが出るんだな。俺の姉さんも来るってさ。ま、アキナの世話係だからな」
——こうして、
私たちは“選ばれてしまった”。




