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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第4章: 無色の継承者、魔法の扉

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え?ここって学園内だよね?!

魔術学の授業から数日。

今日は一年生向け最大の学園行事——浄域演練(オルド・プルガ)

通称、「初陣課外」の日だ。


凍てつく寒さの中、学園が管理する敷地内の森へと、生徒たちは集められていた。

魔物討伐を想定した実戦形式の訓練。

各クラスごとに担任から指定された森の区画で、決められた魔物を討伐する。


形式上は“実戦”だが、万全の安全管理が敷かれている——はずだった。


「ごほん……えぇ。皆さん、入学式以来ですね」


開会式で壇上に立つ学園長の声は、よく通り、朗らかだ。


「数百年前、魔王が討伐された後も、魔物は生き残り、人類を脅かし続けてきました。我々アーディン王国王立魔術学園は、世界に貢献する魔術師を育てるため、この浄域演練(オルド・プルガ)を毎年1年生の一大行事として行っております」


耳に残るほど、はきはきとした口調。

廊下で聞いた、あの凍りつくような声とはまるで別人だ。


「今年も協力してくださった上級生、宮廷魔導士、そして騎士団の皆様に感謝を。以上をもって開会の挨拶といたします」


——ちなみに、スカーレットは今日は欠席だ。

体調不良らしい。


心配ではあるけれど、行事は行事。

それに今日は、ティント、ミナ、ルーカスといった頼れる先輩たちも来ている。


……よし。

少しでも、成長したところを見せないと。


「頑張ろうね。スカーレットの分も」

「あぁ。行くぞ、森に入る」


結界監視は宮廷魔導士。

外周警戒は騎士団。

魔物は事前に封印区域へ誘導され、弱体化もされている。


——理屈では、危険はない。


それでも。

森の中は薄暗く、冷たい空気が肌に刺さる。


……怖い。

理由はわからないけれど、嫌な予感が消えない。


「ぎゃあぁぁっ! 魔獣だ!!」


悲鳴とともに現れたのは、人間二人分はあろうかという巨体。

大型の狐型魔物——ディセプションフォックス。


——おかしい。

反射的に、そう思った。


「アキナ! こいつら、変だ! 言葉が通じてる!」

「えっ……!? ディセプションフォックスが言葉を理解するなんて、そんなはず——」

「オーディンの言う通りだよ! 作戦を立ててる! 先生に知らせないと!!」


ダークが冷静に指摘するが、周囲はすでに混乱している。


精神浄化(メンス・プリタス)、試す! でも……長くは保たない!」

「流石、オーディン! ダーク、光槍(ルクス・ランケア)いける?!」


「やってみる!」


大丈夫。

絶対、この異常は外にも伝わってる。

助けが来るまで、耐えればいいだけ——。


「……ダメだ!」


ダークの声が裏返る。


「効かない……それどころか、魔力を吸収して強くなってる……!」


その一言で、希望が音を立てて崩れた。


「嘘……」

「助けて……!」

「死にたくない!」


悲鳴が、恐怖が、感情が——

餌のように、魔物を肥大させていく。


——その頃、結界の外。


「異常発生! 魔物のEmore(エモール)出力が観測値を逸脱!」


「何が起きている!」

「ヴァイス教官! 一部魔物が将軍級未満・上位魔族級の反応です! 本来あり得ません!」


宮廷魔術師エリシア・ローレンツが叫ぶ。


「生徒たちが危険です!」


「行くよ! ルーカス! ティント!」

「あぁ!」

「待ってください! 私も行きます! 慈愛魔法なら……!」

「ありがとう、ティア! 行こう!」


制止を振り切り、4人は森へと走る。


——どうか、無事で。


その祈りを嘲笑うように。


学園長室。

結界の向こうを見つめる、藍銀の瞳があった。


「うん。頑張ってくれてるね、学園長」

「ありがたきお言葉。スレイン=ミラージュ様のお望みとあらば、さらに混乱を——」

「いや、これで十分だよ」


愉しげに、目を細める。


「有望な負感情適性者は見つからなかったけど……無色の存在は確認できた。これで、あの方も復活できる」

「ようやく……」


学園長は恍惚とした声で呟く。


「もう一度、あのお方のお姿を拝める日が来るとは……」


「それにね」


スレイン=ミラージュは、微笑んだ。


「思った以上に、収穫はあったよ」

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