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「恋をしないなんて可哀想」と言われ続けた私が、感情が全ての力になる異世界で、恋愛感情ゼロゆえになぜか無限魔力を得て魔王と戦うことになった話  作者: きりりんが
第4章: 無色の継承者、魔法の扉

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中位魔術使えるようになりました!

時間が経つのは、本当にあっという間だ。

この世界に来てから、もう半年が過ぎていた。


食堂での一件以降、あからさまなひそひそ話に晒されることはなくなった。

だからといって新しい友達ができたわけでもない。

ただ、波風の立たない日々が静かに流れている。


——これはこれで、悪くはない。


そんなことを考えながら、今日は久しぶりに1人で教室へ向かう。


「アキナさん!おはようございます」

「スカーレット!おはよう。寒いねぇ」

「ほんとですわね。あと一週間でクリスマスですもの。今年は雪、降るかしら」

「去年は積もったの?」

「えぇ、かなり。何日か授業もお休みになったんですよ」

「へぇ……」


「おっすぅ~」


「あぁ、オーディンおはよ。今日の午前って何の授業だっけ?」

「今日はクリスティー先生の魔術学だよ。下位魔術の完成度の確認と、中位魔術を教えるって言ってた」

「まじ?」

「まじ」


「みんな、おはよ」


「ダーク様も、おはようございます」


雑談しているうちに予鈴が鳴り、教室の扉が開く。

入ってきたのはクリスティー先生だけじゃなかった。


ミナ、ルーカス、そして見覚えのない上級生たち。


「諸君、おはよう。今日は前回教えた下位魔術の完成度を見る。そのうえで、出来ている者には中位魔術を教える」


教室のざわめきと、自分の緊張が重なって、空気が一段と張り詰める。


「静粛に。杖を出せ。友愛、恋愛、慈愛、信頼、希望、正義、無色の順で行う」


次々と魔法が発動される。

オーディンも、ダークも、スカーレットも——問題なく。


「はい、辞め。名前を呼ばれた者は隣の教室へ。呼ばれなかった者は、このまま上級生と練習を続けろ」


息を呑むような沈黙。


「……アキナ、グーデリアン、コンフィグ、ドレイン。以上4名、移動」


——選ばれた。


教室を出る直前、ミナとルーカスが小声で言う。


「やるじゃん、ひよっこちゃんたち」


誇らしげな2人の顔を見ると、胸の奥が少し温かくなった。


「よし、中位魔術だ。まずグーデリアン。精神障壁(ユスティティア)

精神障壁(ユスティティア)

「よくできている。お前の魔法は精神系に特化している。目に見えなくとも、それは強みだ。精進しろ。それが仲間を救う」

「はい!」


——助ける。

なんだか、オーディンらしい。


「次、コンフィグ。光結界(アウレア・スクトゥム)

光結界(アウレア・スクトゥム)


歪みはあるが、確かな光の盾。


「最初はそれでいい。鍛錬を続けろ」

「はい」


「では、ドレインとアキナは同時だ。ドレイン、水塊(アクア・オルビス)。アキナ、魔法中断(ヌッラ・ルクス)

水塊(アクア・オルビス)

魔法中断(ヌッラ・ルクス)


透明な光が二人を包み、魔法が静かに消える。


「上出来だ」


——魔法が、増えた。

少しずつ、でも確実に。


「私は教室に戻る。お前たちは先に食堂へ行け」


「よし、飯だ!」

「そうですわね」


廊下は人が少なく、冷たい空気が支配している。


「ドレイン嬢」


しゃがれた声が、静寂を切り裂いた。


「……はい、学園長」


スカーレットの肩が小さく震える。

私はそっと、彼女の肩に手を置いた。


「食事の後、執務室に来なさい」

「……かしこまりました」


——何か、ある。

直感がそう告げていた。


「先に食べてしまいましょう。学園長をお待たせするわけにはいきませんもの」

「そうだな。スカーレットは優等生だし」

「誰か様と違って、努力は性に合っていますの」

「おい~」


足早に食事を済ませ、スカーレットは重たい足取りで食堂を後にする。


「……帰ってきたら聞いていいかな」

「やめとけって。相手、学園長だぞ」

「僕もそう思うよ」

「……そうだね」


——その頃。


「学園長、参りました」

「聞いた。あの娘、中位魔術を使えるようになったそうだな」

「はい。そして、Emore(エモール)の数値を考えても、仲間にするなら先ほどのあの子たちが最適です」

「では命ずる。——緋色の。あの娘を捕らえ、あの方の前に差し出せ」

「あの方……封印された魔王様の前、ですか?」

「不服か?」

「……いえ。ただ、アキナはまだ完全に覚醒しておりません。今は——」

「居場所を与えたのは誰だった?」

「……申し訳ございません」

「付いて来なさい」

「別室は……嫌です……!」


抵抗も虚しく、スカーレットは暗い牢獄へと連れて行かれる。


——その事実を、

私はまだ、何も知らずにいた。

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