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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
2.秋大会決勝トーナメント
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48/408

第48話「一年生」

 飛ぶ打球。センター山口とレフト佐々木の間を微妙に抜けていく打球。初巾高校ベンチから沸く歓声。大槻が、そしてレイモンドがホームへと生還していく。


 数分前、4回裏、ノーアウト二三塁の場面で打席には白銀世代の五番打者、白里一哉。先ほどの打席では、レフトフライに押さえ込み、ピンチを切り抜けた鷹戸だったが、今回は、外野へと飛べば確実に1点だ。タイムを取る絹田監督。伝令として林里勇を送る。内野陣集まる中、林里は鷹戸に向かってにやっと笑った。

「バッターの白里の兄貴の方はチャンスにアホみてえに強いから気をつけろってさ、初球気をつけて。初球からくるぜ」

「アホみたいって何だよ」

伊奈が突っ込む。金条は冷静な面持ちで呟いた。

「初球、低めに外そう。ノビるジャイロボールで空振りを誘ってもいいな」

「……抑える」

鷹戸はこの一言だけを放って、内野陣、及び林里を散らせた。



 ベンチの林里は、絶望的な表情でつぶやくのだった。

「う、嘘だろ……」

自分の伝令が、真剣味が無かったのがかえっていけなかったのか……と色々自分を責め立てる林里。しかし、古堂が彼の肩を叩いて、無言で首を縦に振った。

「(コドー……)そうだな。信じてやらねえと……」

マウンドに立つ鷹戸は、二塁ランナー白里一哉を、そして、ホームに生還しベンチに戻っていく大槻とレイモンドを見て強く目つきを鋭くした。

(抑えてやるさ……)


 金条や古堂、新田らと研究したことを一つ一つ思い返していく鷹戸。

(6番バッター瀬田成彦せた なるひこは……塁に出すと足が早いから危険。しかし追い込まれると打てなくなる。ストライク先行で問題ない)

ストライク先行のピッチングで6番瀬田を追い込む。3球目のスプリットで三振に抑えた鷹戸。

(三連打くらってあのピッチング……マジで強いなあ)

二塁ベースから白里一哉も感心している。

(7番バッター錨真紀いかり まさのり。こいつも足だけの貧打。初球から振っては来るが、どうせストレートでも転がす)

初球、バットに当てた錨だが、球威に負けて一塁線に転がしてしまう。伊奈が捕球し、ベースを踏んでアウトにする。その間に二塁ランナーには進塁されてしまうが、2アウト。残り一人である。

(8番バッター、権田良介ごんだ りょうすけ。ごつい顔の通りパワーヒッター。高い弾道を打ち上げる癖があるが、当てるのが下手くそ。厳しいところに狙っていけば……)

初球ストレートを内角厳しめに投げる。しかし……

「ふんっ!」

権田の叫び声。金属音。打球が高く打ち上げられた。

(んな……!?)

鷹戸の表情は違和を語っていた。金条も腰を上げて思わず声にならない声を上げてしまう。

「あー(鷹戸の球を……あんな高くに打ち上げるのか……)」

レフト佐々木の元へと落ちていく打球。真っ白な太陽の光に当てられ、佐々木はボールを見失ってしまう。

(うちの一年も……すごいだろっ!!)

打球が落ちると共にスタートダッシュを切った白里一哉。佐々木はすぐさまボールを拾い、バックホームした。

「ナイスバックホームっ!」

金条がボールをしっかりと掴む。少しそれたボールだったが、白里一哉をホームで刺すことが不可能な距離ではない。

「(レフトも強肩かよっ!)うらっ!」

ヘッドスライディングでホームに潜り込もうと飛び込んだ一哉。それを制しようと低い姿勢でホームの前に立ちはだかる金条。

(させるかっ!)

強い体当たりだったが、金条はしっかりとボールを握っている。アウトだ。

「うおおおおっ!! 気迫あるスライディングでしたが、レフトのレーザービームと、キャッチャーのブロックがこれを防ぐ――!!! ハッ高追加点ならずっ! 4回の攻撃終了です!!」

実況も盛り上がっていた。解説も渋い表情をしていた。

「レフト佐々木くん、なかなか良い肩してますねえ。一年生であれだけ投げられたら期待ができますよ。それに、キャッチャー金条くんもなかなか良いブロックです」

実況席で褒められていることなどいざ知らず、レーザービームを投げられた快感からにやにやと笑っていた佐々木。センター山口が肩に腕を回してきた。

「やったじゃん」

「は、はい!」

山口にも褒められ、満足そうな佐々木。

「バッティングでも見せてやろーぜ」

「はい!」

小林に言われ、佐々木は強く返事をした。


 5回表、先頭打者はキャッチャー金条。

(既に三点取られてる。こちらとしても1点だけでも返さなきゃ。ここから下位打線が続くし、何としてでも俺が安打を決めなくちゃならない)

金条はこう意気込んで打席に立つが、ナックル攻略の糸口は一切つかめず、三振に倒れてしまったのだ。

(こうも豪快に振ってくれると、投げている側も気持ちが良いね。さあ、どうしようかな次は)

7番バッター小林を見てうすら笑いを浮かべる柏木。このナックルボールに対し、未だ二安打しかない。

(鷹戸は……もっとこう、力抜いてふわーって打ってたよなあ)

小林は、先ほどの打席でヒットを打っていた鷹戸のスイングを真似してみた。しかし、バットには当たらない。

(ダメだ……普段から鋭いスイングばかり意識しすぎているせいで……)

鋭いスイングに切り替えれば、ボールがバットをかわすかのように揺れてキャッチャーミットに収まっていく。2ストライクと追い込まれた。

(何とかしなくちゃ……)

3球目、しっかり見てからバットを振るという選択を取った小林の膝下を、柏木の直球が迫り来る。

(やばっ、ストレート!)

「ストライク! バッターアウト!!」

内角のボール球に手が出てしまった。スイングアウトを取られてしまう。


 8番バッター佐々木が打席に立つ。前の打席では、ストレートを有効に使われて三振に倒れるという、小林と同じ道を辿っている。

(焦る気持ちを、柏木にうまく利用されている)

佐々木はフラットな気持ちで打席に立っていた。キャッチャーの虎次郎を見てみる。彼は配球の指示を一切行っていない。全ては、柏木が投げたボールを捕球するために座っている。ナックル一辺倒の柏木だからこそできるキャッチャーとしての姿勢。だからリリーフ阿佐間とは相性が合わないのだ。

(配球を考えているのは柏木かあ……ストレート投げるタイミングも、ナックルを投げる場所も、全部こいつが……)

佐々木は思わず息を呑む。初球ナックル、2球目もナックル、3球目もナックル。2球目だけ外に外れたので2ストライク1ボールだ。

(徹底的に振らないな……もしかして、直球投げると思ってる? それなら逆に釣ってあげるよ)

柏木が4球目に投げたのは、外に外れるストレート。明らかにボール球だが、佐々木はこれを無理やり振り抜いた。

(多少外れていても、これを待っていたんだよっ!!)

大きく踏み込み、ベースに上体を覆い被せた佐々木。バットはストライクゾーンに大きく外れたボールに届く。


 「セカンッ!」

柏木が後ろを振り返って叫ぶ。流し打ち方向に飛んでいった打球が、セカンド山田の左を微妙に抜けていく。


 ライトへのシングルヒットを決めた佐々木は、一塁ベースの上で叫んだ。

「っしゃあ!!」

嬉しそうにクロ高ベンチを見る。

(下位打線とは言ったって、一年生だって言ったって、俺だってクロ高の選手なんだよ。バッティングでも見せてやるっていったしな)

そんな佐々木を、柏木はイラついた表情で見ていた。

(あームカつく……レーザービーム決めたからって調子に乗っているんだ。腹立つ……)

しかし、柏木は怒りに身を任せたピッチングでも鷹戸を三振に抑え抜く。




 5回表が終わり、試合は後半戦へ。守備に回るクロ高。ベンチで会話が繰り広げられる。

「……柏木、白里の弟、山田なら鷹戸の相手じゃねえだろ。それよりも問題は柏木からどうやって点を取るかだ」

坂本が顎をさすりながら言った言葉に反応したのは、古堂だった。

「確かに……でもあのストレートの球質自体は軽いです。ナックルだって、当たれば田中さんみたいに強い打球を飛ばすことができますよ」

「阿呆、当てるのが難しいんだろうが」

芝が苛立たしい様子でつぶやくのだった。ベンチから何もせずにじっとしているのは、今日中穏やかではないらしい。

「……古堂、そろそろ準備してくれ」

「えっ?」

監督から急に言葉をかけられ、思わず聞き返してしまう古堂。返田がやってきて呟く。

「リリーフ準備、しろってよ。コドー」

古堂の表情は、みるみるうちに明るくなった。

「はい!」


 この試合は一年生が非常に活躍している。現に、鷹戸は柏木を三振に切ると、虎次郎と山田をゴロに押さえ込み、5回裏の投球を終えていた。ベンチに戻ってくる彼は、キャッチャーミットが響く音に釣られて首をブルペンに向けた。

(こ、古堂)

そこには、全力投球する古堂。鷹戸は一気に不機嫌になる。

(まだ俺は投げられるのに)

しかし、そんな彼の肩を軽くたたくのは、キャッチャーの金条。

「……次の回、白銀世代が相手だぜ? ヌルい投球したら替えられるっていうメッセージだ」

(ちっ……)

鷹戸はまた不機嫌そうにした。対する古堂は、上機嫌でミットにボールを投げている。

(ははー! 待ってろよ白銀世代!! 俺が三振にしてやるッ!!)

そして、6回表、クロ高の打順は一番に戻ってくる――――

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