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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW

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151/430

第151話「最速投手」

 鷹戸の初球を――桐陽学園の4番、岡田は勢い良く打ち返す。


「ぬん!」


 三遊間を強く跳ねる打球。大滝と田中は全く反応ができない。


(打球速すぎだろ……)


 レフト佐々木はそれでもしっかりとそらさずに受け止める。シングルヒットで出塁した岡田。

 続く5番、塚岸が打席に立つ。


(こいつも暗黒世代か……なかなかいいピッチャーだと見てるが……中島さんや浦部さんで簡単に打てるピッチャーなんか、大して面白くもないか……)


 鷹戸の球に、簡単に三振した塚岸。監督も頭を抱えて苦笑いしている。


(塚岸のバカのむらっけは、何とかならんのか全く……)


 6番松下をセンターフライにして、1回を1失点で凌ぐ黒光高校。二回に入り、打席には大滝真司が入る。


(大滝真司……調べた限りじゃ、パワーヒッターとしては間違いなく白銀世代レベル。だが、ここぞという場面を任せられるほどではない印象だな)


 捕手の村松は、警戒こそするものの、低めにストレートのサインを送るだけで松下エースを信用しているようだった。


 大滝は、じっくりと球数を稼ぎつつ、タイミングを取っていく。


 6球目、アウトローに来た球を、少し詰まらせる大滝。


(何でアウトローの球がこんなに詰まるんだ?)


浅いセンターフライになるが、しっかりとセンター中島が前に出てきてキャッチし、アウトになる。


「ナイスピやぞ松下!」


 続く山口、伊奈もタイミングを合わせられずに三振に倒れ、2回表を簡単に終えてしまう。その裏、下位打線を相手にする鷹戸。先頭打者の武月がサード大滝のエラーで出塁するものの、守備に助けられた部分もあり、何とか無失点で切り抜けた。


「ナイスピッチングだぜ鷹戸!」

1番中島の打球を先ほど華麗にさばいたショート田中が鷹戸の背中を軽く叩いた。


「ありがとうございます(クソッ、二度も綺麗にミートされちまってる)」

田中の言葉を素直に受け止めながらも、中島のバッティングを少し警戒しているようだった。


 しかし、3回の表、クロ高の下位打線三人は、鷹戸も含め、簡単に抑え込まれてしまう。


「鷹戸って、なんだかんだで打つイメージがあったよな……」

「三振してるイメージないよね」


 大滝や金条など、レギュラーメンバーも動揺しているようだった。


 対して、その裏の桐陽学園は、二番からの好打順。打席に立つ村松。


(ピッチャーの球は重いが、キャッチャーの肩は強くない。これは、意外とセーフティとか有効なんじゃない?)


 鷹戸のダウンジャイロをセーフティバントで転がす村松。サード大滝とキャッチャー金条、そしてピッチャーの鷹戸のちょうど中央にボールがぴたりと止まる。


 しかし、ここで一番早く飛び出したのは、キャッチャーの金条だった。


(ただでさえ肩が弱い俺が、こんな練習怠ってるわけないだろ!!)


 村松のセーフティが意表をついたのは確かだった。しかし、金条の練習量が反応を速めていた。



「うちの正捕手舐めすぎたな!」


 ファースト伊奈は、走ってくる村松の目を見ながら、金条からの送球を受け取る。


「アウト!」


 先頭の村松はアウトにした。続いて、三番の浦部が打席に立つ。


「丈一さん……」

「わかっとる。このチームは結構守備が堅いんや」


 警戒して打席に立つ浦部。初球のストレートはアウトコースの球。見逃す。


(次はインコースにスプリット投げてくれたらおっけー!)


 少し甘い所に入るが、それが結果オーライし、空振りを取る。早くも2ストライクと追い込む。


「いいね……こいつの名前教えてや」


 浦部はにやりと笑った。


「鷹戸……鷹戸遥斗。黒光うちで一番速いストレートを投げる投手です」



 金条はにやりと笑って返した。高めに浮き上がるジャイロボールが、浦部のバットの上を通過した。


「ストライークッ! アウト!」


「……しゃあ!」


 鷹戸が珍しく叫ぶ。それにつられてクロ高の全員が盛り上がる。


「新田さんがいなくても……クロ高は強いぞ!」

「その通りだ!」


(クロ高……こんなにいい暗黒世代の投手隠し持っていやがったとは)


 浦部の三振を目の当たりにし、4番の岡田も少し動揺している。――しかし、彼は軟ではない。


 鷹戸が投げた初球、アウトコースのストレートをまっすぐセンター返しする。


(んな簡単にッ!)


 山口が後退するが、打球はフェンスに強く跳ねる。岡田がツーベースヒットで出塁した。


「……さすがや……岡田先輩……すげえ」


 塚岸がテンションを上げている。その傍らで、エースである松下が、塚岸の背中を押した。



「あれぐらい打たへんと、お前らしくねえんじゃねえの」

「……そうっすね……」




(本当に、岡田が夏に間に合いそうで良かった……)


 そして、次の打席、低めに外れるスプリットを、流して打ち返す塚岸。サードの右手側であるライン際を強く打球が跳ねる。


(捕れないッ!)



 フェアゾーンを超えてからラインを割った打球。ファウルグラウンドを転がる打球を追うレフト佐々木。


(岡田さんには還られるッ!)


 すかさずショート田中に返球する。既に二塁を飛び出そうとしていた塚岸への良い牽制となった。


(二塁で止めた……)



 しかし、結果はタイムリーツーベースヒット。塚岸は打点を挙げる。


「うっし、二点差ァ!」

「順調順調ぉ!!」


 岡田とハイタッチする松下と武月。


「少しは楽になったか? お前ら」

「ったりめーだ。2点もらって勝てないエースはエースじゃねえ」



 二点目を取られるも、鷹戸は次を打ち取り、次の回、先頭打者は今宮から。


(最速投手っつっても、ストレートで来るってだいたいわかんだよ!)


 初球セーフティバントを試みる今宮。サード塚岸、キャッチャー、村松、ピッチャーの松下の三人は完全に意表を突かれ、反応が遅れていた。


(吉乃の肩なら……)

(球平なら捌くの早そうだし……)

(松下サンどーせ捕るっしょ)


 三人がそれぞれ見合い、脚が一瞬止まる。その間にも今宮は俊足を生かして一塁へ駆け上がる。


「サード!!」


 松下の叫び声。塚岸は勝手に身体が反応をしていた。


(間に合わねえよッ!)


 捕ってから投げるも、セーフ――見事内野安打を決める今宮。


「っしゃあ!!」


 見事出塁する今宮。


(ストレート一本調子じゃ、さすがにこうなるか……かと言って変化球を投げようものなら盗塁を狙われそうだし……)


 一球外して様子を見る桐陽バッテリー。二番小林はバントの構えをしながら揺さぶる上に、今宮のリードも大きい。


(出塁させたくないバッターでしたね……まあ、こういうバッターほど、自分がどう出塁するか考えてるもんですけどね)


 そして、小林は甘く入ったストレートをなんとかバントして転がし、今宮を二塁に送る。


「ナイスバントです!」

「さすが二番バッター!」


 大滝と伊奈がベンチに戻ってくる小林に右手を差し出し、ハイタッチを交わす。


「ナイスバン……」

「速い球練習しといてよかったね……」

「まあ、マシンと生きた球は全然違うから、翔馬はよくやったよ」


 山口にもそういわれ、小林は少し笑う。


「でも、難しいのはこっからだぞ。今宮の出塁はまぐれみたいなもんだ。こっからクリーンナップが打ってくれるか――」


 小林がそう言いながら振り返った矢先、鋭い打球が右中間に飛ぶ。


「センター!」


 村松が叫ぶ。打ったのは三番田中――外角のストレートを少し流すようにして打ち返した打球が右中間に揚がっていた。


(うまいとこに落ちるぞッ!)


 ライトとセンターが追いつきかけていた中間――ちょうど真ん中に打球が落ちた。それを確認した今宮は、すぐにスタートを切り、三塁も回る。


(ちっ、やられたな)



 今宮がホームに還り、一点を返すクロ高。松下は目を瞑る。


(やはり……クロ高。黒鉄から点を取るチームというだけのことはある。侮れん)


「チャンスだぞ! 続くぞ!!」


 田中が二塁ベース上から叫ぶ。大滝は強く頷いて打席に立つ。


「……三番の……田中さんが打ったから打てると思ってるでしょ?」

「?」


 村松から話しかけられ、訝しく一瞥する大滝。


「松下サンはそんなに柔ちゃうで」


 ストレートが内角に真っすぐ飛んでくる。手が出せない大滝。


(は、はええ……黒鉄さんとか江戸川さんとか……比じゃねえ)


「これが……桐陽学園の誇る、白銀世代……ひいては現役高校球児最速投手、松下巧介サンの直球や」


 大滝だけでなく、山口まで凡退させられる。


「さ、1点与えてしまったぜ、松下」

「なあに……気にするな」


 岡田に言われるも、松下は平然としている。そう、この1点のダメージなど、微塵にも感じていないのであった。



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