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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW

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135/430

第135話「打線爆発」

「ヘイキャップ、ちょっと送球まで遅いんじゃないの?」


 試合前のノックにて、キャプテンでサードの和賀頼二わが らいじを煽る声がチームメイトから聞こえる。知廉和歌山高校のノックを、クロ高の面々は注意深く見ている。


「これが守備で見せるチームか……」

「送球まで遅いって言ったって、大滝とは段違いだぞ」


 田中の言葉に、大滝は苦笑いする。


「守備力は近畿内でもトップクラスと名高い。投手の高垣詩繰たかがき しぐるは白銀世代ではないが、それでも近畿大会に出場し、勝ち上がることができるチームだっていうのは、恐ろしいな」

「高身長から繰り出される縦に割れるカーブとスライダー。それをテンポよく、なおかつコントロールしてくるのが一番の厄介どころでしょう」


 本日先発の伊東の見解に、絹田監督は頷く。


「キャッチャーの久住晴久くずみ はるひさ。強肩強打。おまけに捕球力とリード力もなかなかのもの。白銀世代の守備型ではあるが、一発がある怖いバッターだな」

「ファーストの荒井真一郎あらい しんいちろうも、ファーストらしからぬ守備範囲が持ち味です。白銀世代ですし、彼も警戒した方が良いかと」

「セカンドの住田泰次郎(すみだ たいじろう)も、堅打と堅守が持ち味だな。地味だけど安定感の鬼だろう」


 今宮、山口、金条の三人はノックを一つ一つ凝視している。


「サードでキャプテン、四番の和賀頼二は言わずもがな中心選手。強肩強打、おまけに守備も上手い。大滝にはぜひ見習ってほしいサードだな」

「言葉もありません」


 田中の言葉に、大滝はさらに苦笑いを重ねる。


「ショートの和田祥わだ しょうもなかなか名手ですよね。肩もまあまあ強いですし」

「だな……」


「レフト、安房洋二あぼう ようじもバッティングよりも守備力だな。どいつもこいつも安定感がある」

「センターの高宮昂也たかみや こうやは堅打で俊足のリードオフマンの役割も担う白銀世代だ。気を付けた方が良い」

「ライトの千田逸平ちだ いっぺいも肩が強いし守備も堅いな」


「まあ、できることは一緒だ。フルスイングで低い打球意識を徹底すること、普段は慎重に攻めること、攻め時だと思ったら大胆になること」

絹田監督の言葉に、全員が強く頷く。


「打ち勝つぞ。昨日勝ってんだ。今日も勝つ!」


 今宮の言葉に、全員が同調した。



 先攻 黒光高校

1番セカンド、今宮陽兵。2番ライト、小林翔馬。3番ショート、田中遊。4番サード、大滝真司。5番センター、山口寿。6番ファースト、伊奈聖也。7番キャッチャー、金条春利。8番レフト、佐々木隆。9番ピッチャー、伊東律斗。


 後攻 知廉和歌山高校

1番センター、高宮昂也。2番ショート、和田祥。3番ファースト、荒井真一郎。4番サード、和賀頼二。5番キャッチャー、久住晴久。6番セカンド、住田泰次郎。7番ライト、千田逸平。8番ピッチャー、高垣詩繰。9番レフト、安房洋二。


「今回はいかに打てるか肝。白銀世代以外はそこまで要注意バッターはいないから、伊東は気楽に行っていいぞ」

「おっけー」


 そういって今宮は打席へと向かう。


(俺たちは、とにかくメッタ打ちしなきゃ始まらねえ。落ちる球は苦手じゃねえんだ。打つぞ)


 初球のドロップカーブを見逃す今宮。


(相当警戒してくれてるじゃねえか)


 セーフティの構えから、縦に割れるスライダーを見逃す。ファーストサードの動きを見つつ、思案する。


(セーフティ対応の速さは開盟とは段違ダンチで速いな)



「外野手、前来い!」


 叫ぶ久住。今宮が長打を打つタイプではないと判断したためだ。


(やってくれるじゃん)


 次に来た低めのストレートを、しっかりと上から出したバットに当て、逆回転の打球をかける今宮。


(抜けろよッ!)


 右中間にふわりとライナーの打球。跳ねて右中間を抜けるかと思われたが、センター高宮は打席に追いついている。


「高宮さんッ化け物や!」


 ショート和田が嬉しそうにカットを受け取るが、今宮は進塁を狙ってはいない。


「(やるやん)どうする、久住」

「バントシフトでええやろ。小林にパワーはない。今宮も初回から走るほど博打せん。何より、盗塁は俺が刺したろ」

「ほんと、頼りになるわ。んじゃ、任せるで。白銀世代さん」


 高垣はマウンドに飄々と戻り、次の打者、小林を迎える。バントを構える小林だったが、わざと高めにスライダーを投げ込み、打ち上げさせる。


「キャッチッ!」

「あいよ!」

 久住がしっかりと打球を掴み、1アウトにする。


「よしっ、1アウトォ!! レフト方向飛ぶぞ!」


 右打席にたつ田中を見て、久住は大声指示を出す。レフト安房は右手を上げて応える。



(マジで司令塔って感じだな)


 田中は初球のスライダーを空振りする。続く縦のカーブも空振りし、追い込まれる。


(やっぱり、変化球良いな。マジで白銀世代じゃないのがおかしいくらいだろ)


 左打席に変更する田中。久住は考える。


(出塁狙いの単打で来ると見た。外野前進! インコースを打たせて取る)


 ストレートを要求する久住。投げる高垣。


(あっ、直球なら打てるわ!)


 133km/hのストレートを、追い込まれてからでもしっかりと振りぬいて打ち返す田中。ライト方向に強い打球が飛ぶ。


(両打で左打席そんなに飛ぶのかよッ!)


 ライト千田が後退する。打球が落ちると同時に今宮は走り出す。



「ふざけッ!」

千田は打球を拾い、セカンド住田に投げる。そこまでの間に、今宮は三塁を蹴り、ホームへ。田中は二塁を蹴って三塁を狙う。


「(どっち刺す?)バックホーム!」


 久住の思考は早い。住田はその声の通り、ホームに送球。狂いの無い送球がホームに届く。


(もらったァ!)


 久住が今宮をタッチしようとグラブを塁線上に向けた。しかし、今宮は右手以外を大きく逸らして、ホームにタッチする。


「セーフ! セーフ!!!!」

「っしゃあ!」


 審判の声に、今宮は立ち上がって土を払うと同時に叫んだ。


「すまん、迷った」

「ま、打たれるのは仕方ないっしょ。ストレートは打たれるから、変化球中心で組み立てていこうや」


 謝る久住と、余裕のある高垣。


「すげえ……今宮さんと田中さん……同時に走って、鉄壁の守備陣を迷わせる判断を取ったか」


 林里はその走塁技術に見惚れていた。


「……ほんとすげえよな、先輩たち」


 林里の声が聞こえているのかいないのか、大滝は打席に立つ。三塁ランナーの田中と目を合わせる。


 初球外したボール球を、無理やり打ち返し、外野フライにする大滝。タッチアップで田中が還り、2点目を取るクロ高。


 後続は続かないものの、先制点を挙げるクロ高。その勢いに感化されてか、伊東の調子も頗るよく、三者凡退で切り抜ける。


「ナイピです伊東さん。コントロール安定してますね」

「まあな! 負けられない!」


 しかし、次の回の裏、三者凡退で攻撃を終えた後のクロ高に立ちはだかる先頭打者の4番、和賀頼二。


「あのな、俺らは守備のチームって言われる。でもな、打てないチームは勝たれへんのや」


 伊東の高めのストレートを打ち返し、ホームランにする和賀。絶句する金条。


(ああ……そうだった。白銀世代ってのはこういう選手の集まりだったんだ……)

「問題ないぞ! 次だ次!!」


 金条に叫ぶのは、伊東。打たれた張本人である。


(キャッチャーがピッチャーに励まされててどうする!)


 意気立った金条のリードも冴えわたり、後続をぴしゃりと抑えるクロ高。この後もシーソーゲームの好ゲームが続き、4回終了時点で、3-2の1点差でクロ高が勝っているという状況となった。



「伊東、先頭だぞ。無理して打たなくてもいいけど」


 今宮がネクストサークルから声をかける。伊東は強く頷き、打席へと向かう。



(バッティングは元々そこまで得意じゃないけど、練習はしてきた。打つぞ)


 低めのスライダーに張る伊東。1ボール1ストライクのカウントで、三球目で狙いの球が来る。


「低い球は、踏ん張って打つ!」


 伊東が腹心から声を出して、打球をレフト前に飛ばす。先頭打者が出塁した。


「いいぞ伊東……叫びすぎだけど」


 今宮が苦笑いして打席に立つ。警戒する知廉和歌山バッテリー。今日既に二安打をしていた。


(わりぃけど、今日絶好調な予感しかしねえから、柄にも無くライト方向に長打でも狙って、さっさと伊東を返してやろう)


 目論見通り、アウトコースのドロップカーブを、インステップでホームベース側に強く踏み込み、つま先に重心を残したまま、強くバットを振りぬいた。


 後退しているライトの頭を裕に超す打球。伊東は三塁も狙う。


「もっと行ける!!」


 ランナーコーチが叫んで回す。伊東は三塁を蹴る。今宮は二塁ベースでストップ。さらに1点を追加し、5-3となるクロ高。


「よっしゃ、追加点! ナイスバッティング今宮!!」


「クロ高の猛攻は終わらねえよ? なっ、大滝!」

「そうですね、俺たちも続きたいところっす!」

田中と大滝が意気込む中で、小林が三振に倒れる。


「すまん、田中、大滝、打ってくれ!」

「わかってら!」


 田中が右打席に立つ。レフトは警戒して下がる。


(馬鹿野郎、俺が一番得意なのは、引っ張りじゃなくてセンター返しだッ!)


 ストレートをセンター返しして1点を返す田中。今宮がベンチに帰ってきて全員とハイタッチする。


「今日、打線爆発してね?」

「多分、ここ最近じゃ一番打ってるんじゃない?」


 小林がうなずく。


「おおっ!?」


すると歓声が聞こえ、お互いの顔からグラウンドへと視線を向ける今宮と小林。大滝の打った打球が、ちょうどスタンドインしたところだった。


「すげえ、マジで打線爆発じゃん」


 自分が打てていない悔しさをにじませながら、小林は帰ってくる田中と大滝とハイタッチをかわした。




 6回にも追加点を挙げ、8-2となるクロ高。しかし、その裏で、白銀世代たちが一矢報いる形で2点を返す知廉和歌山。


「伊東、ナイピだった。交代だ」


「うっす!」

「あとは任せてくれ!」


 伊東の大声に合わせるかのように、新田も大声で言った。



(ふぅ、大本命登場ってか? 県内じゃ黒鉄の次にすげえって言われてるらしいやん)


 5番キャッチャーの久住が打席に立つ。初球、新田のスライダーがインコースギリギリに切れ込んでくる。


「ストライークッ!」


(いや待て、キャッチャー取る位置おかしいやろ……ほぼ俺の身体の真後ろやんか)


 久住を動揺させる変化球。二球目のシュートは、右打席側からインコースギリギリに決まる球。


(飛んだ内無双しゃがる……!)


そのまま外低めにカーブが決まり、全く手が出ないまま三球三振した久住。

「ふ、ふざけやがって……」


「2アウト!」


 新田の投球に、知廉和歌山ナインは絶句していた――


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