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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW
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132/423

第132話「大阪2位」

 打席に立ち、鷹戸を睨む烏丸。それに対し、マウンドの上から見下ろすかのように打席の烏丸を見据える鷹戸。


(速球がすべてじゃない。それを俺はこのバッティングで証明してやる)


 鷹戸の投げるストレートに、初球からタイミングを合わせる烏丸。しかし、ボールの下面を擦った打球は、キャッチャー金条の背後でバウンドする。


「ファウル!!」



(初球から合わせてる……もうタイミングは取れたってのか?)


二球目はインコースのストレート。これにも合わせる烏丸。しかし三塁線を切れてファウルになる。きわどい所でひっかけさせようものなら、しっかりと見逃す。


(2ストライク1ボール。ってことは、次は高めの釣り玉だろう……)


 構える烏丸。投げる鷹戸。いつものようにまっすぐな軌道、まっすぐな回転でボールがやってくる。


(ちょっと低めか……でも、ど真ん中にストライク入ってくるとは、馬鹿野郎だな!!)


 フルスイングする烏丸。ボールは――バットの下を行く。


「ストライークッ!!」


 金条は、含みのある笑みを見せた。キャッチャーミットには、しっかりと白球が収まっている。


「速球だけで戦えるなんて、誰も思ってないよ」


 金条の出したサインは低めのスプリット。完全に頭の中から抜け落ちていた鷹戸の変化球の存在。烏丸は唇を噛んだ。


 続く7番都築に大きな当たりを許すも、センター山口が深めに守っていたこともあり何とか2アウトにし、続く白波も抑え、5回を三者凡退にした鷹戸。



「……ナイピ鷹戸」

「これぐらいできなきゃな(新田さんの後ろは任せてもらえねえ)」


 5回裏、佐々木がショートゴロに倒れるも、鷹戸が打席に立つ。


「こいつは何気に打つからな。相手の烏丸ピッチャーさんも自棄にならないようにしねえとドツボにはまるぜ?」

田中が嬉しそうに見ている先の鷹戸は、烏丸を強く睨んでいた。


(……さっきは良くも出し抜いてくれやがったな!!)


 初球からストレートで勝負する烏丸。浮き上がる独特の軌道の球。鷹戸は、それにタイミングを取り、バットを振る。


「!!」


 烏丸の頭上を綺麗に飛んでいく打球。センター臼井の頭を超え、フェンスに直撃した。


「回れ!!」

「ナイスだ鷹戸!!」


 鷹戸は一塁を蹴って二塁を狙う。臼井が拾って送球するころには、二塁ベースに到着していた。


「スマン、結構深くて良かったな」

「しゃーない! 切り替えろ!」


 センター臼井が謝るのを、ライト足立が励ます。


「……それよりも、こっからの上位打線がクロ高の強みだろ……」


 レフト笹田が少し前進守備の姿勢を取る。


「烏丸も……イライラしてないといいけどな」



 外野陣の心配もむなしく、烏丸は今、イライラしていた。


(くそったれ……舐めてやがる)


 続く打者、今宮を目の前にして、二塁ランナーの牽制を抜かりなく行う。鷹戸は呆れた顔で離塁と帰塁を繰り返す。


(もう来い……バッター勝負。集中しろ智雅!)


 根津がグラブを右手で叩いて、烏丸の注意をこちらに向ける。インコースに構える。これを烏丸はスライダーで応える。


 球は下手投げから、独特の軌道を描いて今宮のはらわたを抉るかのように滑り込んできた。


「ストライークッ!」

(ほほおー。良い球)


 初球からインコースを鋭く突く変化球に、唸る思いの今宮。烏丸はそれでも、走者に気を取られている。


(別に何が悪いってわけじゃねえ。それなのに打ちやがったアイツが許せねえ!)


 今日の投球は割と良い方だった。それでも、打たれた。それが悔しかった烏丸。何としてでもこれ以上は打たせないという意気込みで、シンカーを投げ込む。


(ど真ん中に沈んでくる!)


 甘く入ったと確信した今宮。しかし、芯を外され、ゴロを転がす。投手の烏丸のミットの中に、打球は収まっている。三塁ベースに、一瞥する間もなく投げる烏丸。サード都築は、反応が少し遅れてしまう。


(ふん、馬鹿め)


 鷹戸は、都築が戸惑っているわずかな間に、ベースを避けるようにスライディングし、ベースに触れる。そこから都築が切り替え、一つに投げるも、今宮の俊足を刺すことはできない。


「ふぃ、フィルダーズチョイスですか?」


 開盟学園のマネージャーで記録員を務めていた不見城が、井達監督に尋ねる。


「ああ。烏丸のな。あのバカ……焦りすぎなんだよ。やっぱり……アイツの復帰を待つしかないか」


 井達監督が頭を抱えている間にも、1アウト1.3塁のチャンスを作り上げるクロ高。絹田監督はほっと胸をなでおろしていた。今宮も、気が気ではない。


(あぶねえ……つうか、何気に良い球ばっかり投げやがって……。それなりに良いピッチャーじゃねえか)


 続く小林も、緩く入ってくるスラーブを流し、一塁線方向に飛ばす。


(打点稼ぎに来たか……)


 ファースト多田はしっかりとミットで打球を掴み、小林をタッチする。しかし、鷹戸は既に滑り込んでおり、2アウト2塁の状況となり、クロ高が同点となる1点をもぎ取った。


「ナイス小林!!」

「ナイスバッティング&ランだったぜ鷹戸!!」


 ベンチに還る二人を祝福するクロ高の面々。古堂も、鷹戸にハイタッチを求める――が、鷹戸は無視する。


(バッティングを褒められようと意味はない。……俺はピッチングで成果を出し続ける)


 古堂は一瞬首を傾げた。


(あいつ……二塁打打ったぐらいじゃ喜ばないんだなあ)




 田中が凡退し、5回裏を終えた。現時点で1-1。同点の内野ゴロを打った小林が、伊奈や今宮、金条に話しかける。


「どうする? もっと3番シフト大胆に行くか?」

「そうだな。アウトコースは追い込まれるまで振らないスタンスみたいだし、インコースに変化球集めて打たせて取ってもいいと思う」

「はい」


 今宮にも言われ、金条は首を縦に振る。


 しかし、6回表、先頭打者の足立がフォアボールで出塁する。


(やっぱり粘るバッター相手にストライクを入れられないのは、今後の課題だな)


 金条は悔しそうに鷹戸を見ながら、次の野淵に対するリードを考える。


(ポップは合わせるだろうか? 盗塁を見越して一球外そう)


 金条の要求通りの球を投げる鷹戸。しかし、足立は走っている。


「スチール!」


 今宮がベースカバーに入るも、足立の足は速い。


「セーフ!!」

「どっせーい!!」


 二塁ベース上から大声で叫ぶ足立。響く声に、今宮は耳を塞ぐ。


(コドーよりうるせえ)


 盗塁を決め、チャンスを作る開盟学園。そして、次の球でいきなり仕掛ける野淵と足立。


「エンドランかッ!」


 センター返しのエンドランに、今宮と田中のグラブの間を打球が抜けていく。



「んッ!!?」


 ランナーコーチのサインに、足立はスピードを緩めることなくホームを狙う。


「バックホーム!!」


 ベンチからの声に、送球をする山口。それでも足立の足の方がベースに入っている。


「セーフ!!」


「よしゃああ! 勝ち越し点!!」

「……!!」


 鷹戸は固唾を呑む。すぐに合わせる打撃力、それを読んでいるかのような機動力。開盟学園の強みを思い知る。


「まあ気にするな鷹戸。あとは任せろ」


 今宮が大きな声で鷹戸を励ます。


「……まあ、思いっきり行こうぜ。今日はお前がエース」

(エース……)


 田中に言われ、鷹戸はにやりと笑った。


「思いっきり行かせていただきます」


 彼の含みのある笑みに、臼井は首を傾げた。


(打たれ強さはあるみたいやなあ……崩れてくれる方がありがたいんやけど)


 そんな臼井を三振にする鷹戸。ストレートが良く走っている。


「ここに来て調子あげてますか? 鷹戸のやつ」

「……ああ。それでも打ってくる白銀世代はやっぱりやばいな」


 古堂に聞かれ、坂本は野淵を指して笑った。


「ノブさん返しましょう!」


 根津が大声を発しながら左打席に立つ。長打でも狙う気か、と金条はアウトコースに構える。


(ストレートで)


 鷹戸は頷き、サインに従ってストレートを投げ込む。ストライク。根津は相変わらずアウトコースには手を出さない。3球ほどさらに投げ込み、2ストライク2ボールになる。


(なんでこんなにわかっててアウトコースに手を出さないんだろう。せっかくの体躯がもったいないだろ)


 金条は不思議に思いながら、インコースにスプリットを要求する。根津は強く振りぬく――が、打球はいつもよりも速くない。


(ナイスピッチだぜ、鷹戸!)


 ファースト寄りに守っていた今宮が、ライナーで打球をキャッチする。離塁をしていた野淵は間もない内に帰塁する。


「……せっかく常興の前やってのに、チャンス作れずじまいかっての」


 井達監督は小言をつぶやきながら、サインを送る。


(盗塁予告のサインやな……ってことは、常興にも何球か見送らせるのか)


 しかし、野淵に盗塁のサインが出る前に、多田は二球で追い込まれてしまう。


(思ったより鷹戸がストライク先行やった。これで打つしかないぞ。常興)


 野淵の視線を感じてか、多田は笑った。


(俺かって、打つ気満々ってやつやったで)


 綺麗なセンター返しをお見舞いする多田。野淵は三塁を狙うも、山口が前でしっかりと止め、カットまで送球することでそれを牽制する。


「やだねえ、走るチームは」


 山口は目を細めて野淵を見据える。しかし、相も変わらず調子のよい鷹戸は、続く笹田をショートゴロに倒し、6回を凌ぎ切った。



「大阪二位が、聞いて笑える。打つのは1.4番だけじゃねえか」


 その言葉が聞こえているのかいないのか、多田と野淵はチャンスを作ったにもかかわらず点が取れないことを強く悔やんだ。


「終盤、見返してやる」

「次は常興の打席までにチャンスを作っておくから、任せてくれ」


 野淵はそう言ってグラブを持ち、守備へと向かった。


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