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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW
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131/418

第131話「突破口」

 鷹戸は、宣言通り、下位打線をぴしゃりと抑え、三回の投球を終える。


「大した奴がいたもんや。俺たちに一巡全く何もさせへんなんて」

「初見のピッチャーなんて、普通はこんなもんやろ。幸いにも向こうも智雅の球に合わせられてへんみたいだし、どうにかはできるやろ」


 多田と野淵。2人の中心選手が会話をしている中、割って入る男が一人――


「それじゃあ、キャプテン、多田さん、二巡目は打ってもらいますからね」


 不機嫌そうに二人を睨むのは、烏丸智雅。そのままマウンドへと向かっていく。



 彼も、今宮にセーフティこそ決められるものの、それ以外に全く仕事をさせない働きぶりで、三回の投球を終えた。


 4回表、1番の野淵から打席に立つ。


(このまま名前も知らないピッチャーに、ノーヒットノーラン決められるのは癪やな)


セーフティやバスターなども駆使し、鷹戸に揺さぶりをかける野淵。


(つくづくイヤな奴だ)


 鷹戸が高めに投げた釣り玉のボール球。しかし、野淵は軽く合わせてセンター方向に飛ばす。


「ほお……あぶねえ」


 センター前にヒットとなる打球。先頭打者の野淵が出塁した。



「鷹戸、臼井はこういう場面、打ってくるぞ!」


 ショートの田中が叫び、警戒を促す。金条もそれを分かった上で、あえてボール球も交えた配球を作り上げる。


「ストライークッ!!」


 左打席から、低めに外れるスプリットを空振りし、1ストライクとなる。次はダウンするジャイロボールを要求する金条。しかし、目前の鷹戸は首を縦に振らない。


(ふん、速い球に対応はできないだろう。見せておくぐらい良いんじゃないのか?)


 ポップするジャイロボールを投げたいとサインに首を振る鷹戸。金条が折れ、ポップするジャイロを投げさせる。


 うねりを上げ、ノビと球威をそのままに、ジャイロ回転が揚力を生み出し、ボールは重力に反して上がっていく。臼井がバットを振る先よりも、さらに高くボールは行く。


「ストライークッ!」


 金条はしっかりとボールを掴んでいる。これでは野淵も走れない。


(臼井が三振することも考えて、藍平を走らせたいところではあるが……)


(野淵さんの走力は田中さんくらい……ってことは……俺の肩じゃ刺せない。鷹戸の球にかけるか……)


 高めに外したストレートを要求する金条。鷹戸は頷いて、全力で投げ込む。そして、それを見据えて野淵は走り出す。


「スチールッ!!」


 ベンチからの声。今宮は既に二塁ベースカバーへと向かう。金条はしっかりと捕球しようと腰を浮かせる――が、臼井は、高めのボール球を引っ張って打ち返す。


「セカンッ!」


 だいぶ引っ張った当たりは、伊奈がギリギリ届かないぐらいの場所。しかし、鷹戸の球威もあって、打球はぼてぼて。


(届けッ!!)


 ベースカバーに向かったはずの今宮が、全力疾走から打球を拾いあげた。


「なんつー守備範囲や。バケモンが」


 野淵は今宮が身体を切り返さないのを確認し、二塁ベースを蹴る。今宮が目で行った牽制を諸共しない走りに、不意を突かれた。伊奈がしっかりと捕球し、バッター臼井を紙一重でアウトにこそするものの、そこからの送球で野淵を刺すことはできなかった。


「ナイスランッ!!」

「さすがやでキャプテン!!」


 野淵は右手をベンチに向けて掲げる。1アウト3塁と一気にチャンスを作り上げる開盟学園。一転、クロ高はピンチになる。



「さすが臼井さん。高めの釣り玉を転がして打ち返せるなんて。さすが野淵さん、あの当たりで三塁を狙う走塁。やっぱり、ウチの1.2番が仕事をしてくれると、俺もやりやすいわあ」


 そういって打席に立つのは、先ほど強烈なファーストライナーを打った男、根津光明。途端に伊奈と小林の顔つきが変わる。そこで、タイムを取る金条。マウンドに内野陣を集める。



「今宮さん……あれを捌くのはさすがっす」

金条が口火を切る。

「まあな……打ってくる二番って考えて、エンドランは一応警戒してたし。それよりも、三塁いかせてスマン。牽制甘かった」

「いや、あそこは牽制してからじゃ、バッターもさせない可能性高かったッスから、あれで良いと思いますよ」

ファースト伊奈が言う。

「ノーアウト1.3塁と1アウト3塁じゃ全然違う。むしろありがたい」


 鷹戸は静かに言った。


「1点覚悟。ポップジャイロはやめておこうか」

「だな」


 金条と鷹戸がうなずき合ったところで、一気に散らばった。



 3番の根津が左打席に立つ。右中間を見据え、バットを構える。


「……うたせるかよ」


 アウトコースにツーシームが決まる。1ストライク。


(こいつは外角にマジで手を出さないな。インコース狙いもいい加減にしておけよ)


 低めにスプリットを投げ込む。これもアウトコース。しかし外れてボール。


(やっぱり……アウトコースには手を出さない)


 思慮深く、金条は一球一球でバッターの根津を品定めしている。アウトハイのボール球にも手を出さない。次に投げられたフォーシームにも、また手を出さない。カウントは2ストライク2ボール。根津はまだ、一度もバットを振っていない。


(ここまで割り切ってんならわかりやすい……その意地でもアウトコースを振らない姿勢、上手く利用させてもらうだけだ)


 アウトコースにツーシームを投げさせる金条。鷹戸は頷いて、全力で投げる。



(徹底してんなッ!!)



 根津は諦めたようにフルスイングした。ライト方向に引っ張る打球。


「あんだけ引っ張って、ひっかけた当たりじゃないのかよ」

「パワーで持っていきやがった!」


 芝と伊東が上空を見上げながら打球を探す。しかし、ライト小林はしっかりと打球の落下点に入っていた。


(風による押し戻しもある……ここでオッケー!!)


「藍平! タッチアップや!!」


 ネクストサークルから多田が叫ぶ。構える野淵。捕球する小林。


「GO!」

「どりゃあ!」


 野淵のスタートに少し遅れて小林がボールをリリースした。


「回り込んで滑り込め!」


 金条がボールを捕球するが、かがんでタッチしようとしたときにはもう、足が完全に入っていた。


「あぶねえ……俺じゃなきゃ還れてないで」


 野淵は小林の送球を褒めつつ、先制点の味を存分に味わい、ベンチへと持ち帰る。



「飛ばしやがったか……」


 鷹戸は根津を強く睨む。


(おっかないって……なんやねん、あの目線は……)


 続く多田にもヒットを打たれる鷹戸。早くも攻略されようとしていた。金条はタイムを取り、鷹戸の元へ駆け寄る。


「二巡目で合わせてくるあたり、やっぱり白銀世代――差し引いては大阪二位のチームだね。……でも、お前の球を簡単に打つ奴なんてたくさんいたもんじゃない。大切なのは打たれた後」

「……(わかってる)」

「まあ、そんなわけで、多田さんに打たれた後が大事。ずるずると打たれると大量得点されちゃうからね」


 金条の言葉を聞くまでもなく、鷹戸はそのつもりだった。


(ずるずる打たれる? そもそも俺は打たれるつもりでココに立っちゃいねえんだよ!!)


 5番打者の笹田を三振に倒す鷹戸。最後のストレートには、相手のベンチも感嘆せざるを得ない。そのままベンチに戻ってくる鷹戸たち。


「すげえじゃん鷹戸。ナイスピだったぜ」


 外野の小林と山口が両肩から寄ってくる。鷹戸はグラブタッチで応える。


「……二巡目。しんどいか?」

「全く」


 今宮の顔に、鷹戸は平然とした様子で答えた。



4回裏、田中と大滝を三振に倒す烏丸。変化球の割合が増え、空振りも増えている。


「良いピッチャーだぞ。でも、お前らはどっちかつーと得意か」

「ですね。任せましたよ、山口さん。伊奈も」


 大滝と田中に言われ、山口は打席へと向かう。


「ミートするだけなら問題ないだろうけど……内野の守備堅そうだし」


 そのようにいいながらも、山口は外角のシンカーにしっかりとミートし、ライト方向に流し打ちするという技術を見せた。



「あの5番上手いよな?」

「ああ、間違いないで」


 二遊間で情報を共有しながら、続く6番打者である伊奈を迎える。


「こいつも変化球対応上手いからな! 気ぃつけや!!」


 根津が烏丸に向かって叫ぶ。


(気を付けるだけならキツネやタヌキでもできるんだよ!!)


インコースにストレート。これは見逃す伊奈。1ストライク。


(コントロールはやっぱしいいな)


 続くスライダー、スラーブを見逃す伊奈。1ストライク2ボール。


(なるほど。変化球はエリアの外に集め出したか。打ち取る気満々だな)


 そして――外角低めのストレートを打ち返す伊奈。三遊間に鈍い当たりになるが、なんとか抜け、ヒットになる。


「よぉし……! チャンスメイクッ!!」


「今日、調子が良いのはここ二人か? 大滝が当たりだしたら大量得点を狙えるチャンスだ」

絹田監督の言葉に、固唾を呑む大滝。


(そうだよな……それが……4番。自分の出来不出来で、チームの得点が大きく変わる)


 緊張感を持ちつつも、金条が三振に倒れたことにより、4回の攻撃が終わる。そして迎える5回表――マウンドに鷹戸、打席に烏丸。投手対決が始まろうとしていた。


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