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Dr.Kの鼓動  作者: パワプロ58号
6.GW
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130/418

第130話「球筋」

 先攻 開盟学園高校

1番ショート、野淵藍平。2番センター、臼井昇。3番キャッチャー、根津光明。4番ファースト、多田常興。5番レフト、笹田恭平。6番ピッチャー、烏丸智雅。7番サード、都築忠治。8番セカンド、白波永嗣。9番ライト、足立和樹。


 後攻 黒光高校

1番セカンド、今宮陽兵。2番ライト、小林翔馬。3番ショート、田中遊。4番サード、大滝真司。5番センター、山口寿。6番ファースト、伊奈聖也。7番キャッチャー、金条春利。8番ピッチャー、鷹戸遥斗。9番レフト、佐々木隆。


「鷹戸の球は重い。外野も前進守備で良い。ポップジャイロ投げるときはサインくれ」

「わかりました」


 内野外野が意思疎通をし、グラウンドを野手8人と投手一人が守る。


(ポップジャイロは封印――特に今日の奴らは下から上の球筋に慣れてっから、上からバットを出す意識が根付いているぞ)

鷹戸はイラつきながら、初球、フォーシームをアウトコースに様子を見る。


 金条のサインにうなずき、投げる鷹戸。


「ストライークッ!」


 審判の声。先頭打者の野淵はバットを構え直す。


「球速ざっと150くらい?」

(ご名答ッ!!)


 金条が次に出したのは、低めのツーシーム。打ち返す野淵。強く跳ねる打球だが、セカンド今宮が前進守備ながらしっかりと合わせ、ゴロに仕留める。


「よしっ、ナイピだ鷹戸! それでいい。低めにストレートで押し切ろう!」

今宮の言葉に、全員が応えた。

「よっしゃいくぞ!」

「サード来いサードぉ!!」



「どうでした? あの目つき悪いやつの球」

根津が高笑いしながら、凡退した野淵に話しかける。ヘルメットを外し、少し長い髪を掻きながら、野淵はにやりと笑った。


「烏丸と全然ちげえ。対松下対策にはちょうどいいピッチャーだ」


 2番の臼井もゴロを転がすが、ファースト伊奈がしっかりと受け止め、そのままベースを踏んでアウトにする。

(ゴロ転がす意識が徹底されてるな……詰まってもしっかりと振りぬいてる)



「臼井さぁん……野淵さぁん……どうしてどっちとも出てくれないんすか……」


 根津が打席に立つ。小林はその瞬間に後退する。


(引っ張り警戒してくれちゃって……たぶん振り遅れるんだけどなあ)

根津は左打席でにやりと笑うと、鷹戸のアウトコースのストレートを見逃す。


(アウトコースには手を出さないのか? こんなにデカけりゃ、得意球だろ?)

金条は色々考えながら、インコースにストレートを求める。しかし、根津はこれを打ち返す。


「ぐはっ!!」


 伊奈がライナーを脇腹付近のボディーで止める。しっかりと前に転がした打球を拾いあげ、アウトにした。スリーアウトで交代となる。


「大丈夫か伊奈!?」

古堂がベンチからコールドスプレーを持って駆け寄ってくる。伊奈は右手で安否を伝えると、悶絶した表情でベンチに座り込んだ。


「くっそたれぃ……なんつーライナー打ちやがるんだあいつ……」

(パワータイプの左バッターか……厄介だな)



(一巡目から捉えてきてる……速球対策はどうやらしてるみたいだな)

鷹戸は相手の力量を計り、緊張感をより一層だし、引き締めた。


 攻守交代となり、マウンドには烏丸智雅が立つ。


(……1番セカンド今宮陽兵……。だるいバッターやから、初球にスライダーを打たせてしまおう)


 スライダーを投げる烏丸。ただでさえ遅い変化球も、アンダースロー独特の軌道で来ると、さらに遅く感じる今宮。


(浮いてくるかと思ったのに……沈むッ!!)


 空振りする今宮。


「(こいつも、浮いてくる球には強いタイプか……。しっかりとバットを上から出しているな)智雅ッ!! 何も気負うことはないで! 思い切って投げろ!!」


 根津は大声で烏丸に声をかける。対する烏丸は、静かに、淡々と二球目を投げた。


(来るかッ……ストレート!)


 浮いてくる球に上から合わせる――しかし、高めのストライクゾーンを外れたボール球。ボールの下面を擦ってしまう。


「センター!」


 根津の声を聞いて、センター臼井がしっかりと打球をつかみ取り、今宮をアウトにする。続く小林も、独特の軌道の球にサードゴロに倒れ、続く田中が打席に立つ。


(こいつはパワーもある野淵さんタイプのバッター。簡単には打ち取らせてもらえなさそうだな)


 根津は初球、インローに沈み込むシンカーを要求。見逃す田中。


(……シンカーか)


 続くストレート、スライダーを見逃し、1ボール2ストライクとなる。追い込まれる田中。


(なかなかいいピッチャーだな。タイミングはもう取れる――はず)


 続くアウトコースのストレートに合わせて流し打ちする田中。ライト方向に打球が飛ぶ。


「アダさん!!」

「どっしッ!!」


 根津からの声を、独特の掛け声で返し、しっかりと流れる打球を掴むのは、ライト足立。


「どぅおりゃああ!! アウトじゃあああああ!!」


 大声で叫ぶ足立。外野からでもよく通る声に、烏丸は少し口元を緩めた。



「初回は両者三者凡退。うちの攻撃はまるで通じていないね」


 山口はベンチで険しい顔を見せた。


「仕事しよう。な、大滝」

「はい!」

 山口に肩を叩かれ、大滝は返事をした。


 二回、4番の多田が打席に立つ。全員の顔つきが変わる。


(チームの中心選手で白銀世代。先頭は出したくないが……)


 金条は初球、スプリットを要求。鷹戸は低めにしっかりと投げるが、見逃す多田。


「ボール!!」


(そりゃそうか……初球は振らないよな普通)


次はアウトコースに沈むジャイロ。沈む球を打ち損じてファウルになる。


(沈んだか……変な回転をしていたが……狙って投げているなら大したもんだ)


 多田は鷹戸を認めた上で、続いて、スプリットを空振りする。


(ストレート投げてこないな……追い込んでから見せる気か?)



 最後、インコースに投げたのは――スプリット。空振りする多田。三振である。


「ストライークッ!!」


「常興が三振しやがったか……」


 これには野淵も驚いている様子だった。多田は悔しそうにベンチに戻ってくる。


「変わったリードをしやがるやつだ。下手に読み合いすると食われるぞ」

「……(多田さんがそこまで言うって相当だな)」

多田の言葉に、烏丸は頷いた。


 笹田はストレートを打ち返すが、ピッチャーライナーに倒れ、続く6番、烏丸が打席に立つ。


(ジャイロボール使いか……見ていて飽きない球だ)


 烏丸が初球を見逃す。鷹戸は平然と烏丸を睨みつける。


(……球は速くないくせに、アンダースローとそこそこの変化球だけで勝ち上がろうなんて考えが甘いんだよ……)

鷹戸は不機嫌だ。そのまま、インコースにストレートを投げ込む。バットを振りぬく烏丸。しかし、弱弱しく打球は、鷹戸の右手側を跳ねていく。


(ふん、そんなに打ちたいなら野手やってろ)


 鷹戸が不敵に笑った後、ショート田中がしっかりとつかみ取り、烏丸をアウトにした。



 2回裏、大滝が打席に立つ。


(仕事……。そして、俺の練習の成果を見せるときッ!)


 初球のストレートを打ち返す大滝。右中間に上がった打球だが、ライトセンターのちょうど間に落ちる。


「アダ、頼んだッ!」

「どっせーい!!」


 センター臼井の言葉を聞き、ライト足立がそのままカットにボールを返す。


(……ん……流し打ちしようとしたのか? 失敗してたけど)


 根津は大滝を見ながら思案した。


(遅い球でも、しっかりと待って合わせることができるバッターとみた)


 そうやってバッターを分析した根津だが、次の山口を見て、さらに思考を膨らませる。


(見た目は細いから、アベレージヒッター。ミートが上手いんだろう。インコースやローに厳しく攻めて、思い通りに打たせないことが大切。)


 根津は初球からシンカーをインローに要求。烏丸は要求通りの所に投げ込む。


「ドンピ!」

「ナイスボールだッ!!」


 内野陣からも声が上がるほどのナイスボール――山口は見逃すほかなかった。


(へえ……意外とコントロールはいいんだなあ)


 山口が感心している中、烏丸は平然とした様子で次の球を投げようとしていた。


(こいつが慣れちまう前に……仕留めるッ!!)


 インコースにスライダーを投げ込む烏丸。手が出ないと思われた山口――のバットが傾く。


(5番が送りバントかッ!!)

(そういえば井達もそんなこと言ってたなクソッ!)


 ファースト多田とサード都築がチャージする。烏丸は完全に一歩目が遅れていた。大滝を悠々と送り、1アウト2塁のチャンスを作り上げる。


「……クリーンナップだろうと堅実に点を稼ぎに来る。たとえそれが……もっともミートが上手く、信頼されている選手だとしても、自分自身を過信しない――それがクロ高だ。だけど、問題はこの後――さきほどまでの堅実さは一転、点が取れると思ったらガンガンしかけてくるぞ……」


 開盟学園の井達監督は、向こう側ベンチの様子を見ながら顎をさすっている。


(次の伊奈は変化球に強いバッター。秋予選ではあの黒鉄からタイムリーを打ったらしいじゃないか。となると、烏丸みたいな軟投派は……格好の餌食になりがちか?)


 初球アウトコースのボール球で様子を見た根津。伊奈に動きはない。


(エンドランとかしかけても面白そうじゃね? 変化球狙い撃ちで)


 伊奈はランナーの大滝に目配せする。


(仕掛ける気か……伊奈)

(先制点欲しいっしょ)


 烏丸が構え、投球動作に入ると同時に大滝は大きくリードを取る。伊奈は俄然変化球狙い。


(遅い球だから、ストレートでもタイミングは十分間に合う。問題は……変化球が俺の予想以上だったときだよな)


 シンカーが投げ込まれるが、伊奈はしっかりと合わせる――しかし、一塁線を切れる打球。


(ちぃ……くっそ)


 悔しそうにする伊奈。しかし、そんな様子を見つつも、根津は出し抜かれたような気がして気が気でない。

(仕掛ける気満々じゃないか……やだねえやだねえ)


 次に烏丸が投げたのは、スラーブ。この試合で始めて見せた変化球――伊奈はしっかりと合わせ、右方向に流し打ちする――


「ふっ!!」


 セカンド白波がショートバウンドの打球を上手く捌く。


「サード!!」


 大滝の走塁よりも早い送球。サード都築が送球を受け取って大滝をタッチし、アウトにした。


「くそっ!!」

「惜しいッ!!」



「2アウトだ。思いっきりいけ、烏丸!!」


 セカンド白波の好プレイもあって、一気に波に乗る開盟学園。この後の金条も凡退にし、2回の守備を凌ぎ切る。



「ふん……知れてやがる……」


 勢いを持っていかれても、なお動じない男が、ここにいた。


「所詮次は下位打線だろ。さっさと倒してやる」


 鷹戸遥斗であった――


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