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シルバーは私の3歩くらい後ろをピッタリ着いて来ており、一緒に海辺まで歩いています。親御さんとかお知り合いはいないのでしょうか、私と別れたあとどうするのでしょう。元の世界線へ戻れるといいですけれど。…なんだか自分でも不思議なくらいこの少年がとても気がかりです。
ところでシルバーは、流石と言っていいものなのか隠密のプロ。常に気にしていないと気配を感じ取れません。足音が途絶え後ろを確認すると普通にいてビックリします。これが職業病というものですか、それとも私に対しての警戒心の現れでしょうか。
――――ピコンッピコンッ
突然、私のステッキが夢喰の出現反応を示しました。
「はいぃ?まだいたんですか…。君は少し待っててくださいね、ちょっとだけ仕事して来ますので」
もうすぐ海辺に着く頃だと言うのに、タイミングが悪いですね。まぁ着いてから鳴らないだけマシと思っておきましょうか。
夢喰はこの近くに出現したようです。飛び上がって空から見てみると、あれ、いつもより少し大きくないですか…?夢喰にも個体差があるのでしょうか。
「まぁどっちにしても、一発で片付けますけれど!」
少し大きいということで、いつもより少しだけ強く殴ってみました。宙に浮いている夢喰は力を失って地面に落ちていきます。手応えよし、これでゆっくりできますね。
しかし油断しました、倒したと思っていた夢喰は地に伏せたまま、再び私に攻撃を仕掛けて来たのです。気づいた時には、私の目前に。
(あっ、避けれな…)
私は死を覚悟して目を瞑ってしまいました。しかし数秒経っても、身体は何ともありません。目を開けてみると、その光景はシルバーという少年の恐ろしさを物語っていました。彼が私を襲おうとした夢喰を倒していたのです。
「…気をつけてくださいねぇ。僕らみたいな生き物はいかなる時も油断できませんよ」
(ど、どうやって倒したの…!?)
夢喰は私たちドリームキーパーしか倒せないはずなのに。呆気にとられる私にシルバーは続けます。
「物は試しってよく言うよねぇ。この世界線でも使える力が残ってるなんて思いも寄らなかったよ。気づかせてくれたお姉さんには感謝してもしきれないね」
そう言いながら自身の手指を刃物のように研いでいます。この子、単純な戦力値で言うなら、私より相当強い。でも、結果として私を助けてくれた。謎が多い彼ですが、命を救ってくれた事実は変わらない。
「お礼を言うのは私です。ありがとうございます、お陰で命を救って頂きました。どうやってお礼をしたらいいか…」
「お礼なんていいのさぁ、お姉さんがいたおかげで僕もこの世界線での生き方を見つけられた訳だし、それでおあいこでしょぉ」
しかし助けられた恩は感じていますが、まだ信用はできません。問題を起こし始めないか心配です。シルバーの挙動に緊張していると、不気味な声が小さく聞こえてきました。
――――...、...、...。
「な、なんの声ですか…?これも君の力…!?」
「そんな訳ないでしょぉ、ほら、それからですよ」
それはシルバーが倒した夢喰から発せられたものでした。倒した夢喰はすぐに消滅するのですが、この夢喰は消滅していません。嫌な予感がします。怖いですがこのままにしておく訳にもいかないので、どうにかして退かそうと近づくと声がハッキリ聞こえてきました。
――――異物、来た、世界、壊れた、あの方、目覚めた。
そう言うと夢喰は消滅した。「あの方」って、まさか…。途端、背筋が凍る。
「異物って、僕のことかいぃ?はぁ、やっぱり世界線移動はマズイのかなぁ」
「っ!どういうことですか!?君が仕組んだの!?早く直してよ!!今の夢喰が言ってた「あの方」っていうのが本当にあれだったら...。あれが動き出したら、どうしようもないの!!」
荒々しい言葉を使う私に対し驚いた様子のシルバー。普通にしてなんかいられない、さっきの夢喰が言った「あの方」が「ドリームキラー」であるのなら、もう私だけでは止められない…。
「どうしたんだい?そんなに荒ぶって。世界線を移動してきた僕がキッカケで強いヤツがお出ましって感じ?申し訳ないけど、修復は不可能だよ。僕だって帰れるならとっくにそうしてるさ」
焦りを隠しきれない私を他所に、シルバーは道端に座って続ける。
「たぶん僕がキッカケってのは、僕がここに来たせいでこの世界線と僕の世界線が部分的に繋がっちゃったからだろうねぇ。そんで、これからどんなやつが出てくる予定なんだい?」
「……。人の夢を喰う化け物。ただの化け物じゃない、夢喰の親玉であり存在するだけで世界のバランスが崩壊する。夢喰たちが集めた夢を動力源に、どんどん強くなる。私たちの先祖が束になっても完全には倒せず、封印せざるを得ないくらいに。そんな化け物相手に、私一人じゃどうやっても太刀打ちできないの…!」
「君の仲間はいないのかい?」
「もう、ドリームキーパーを継いでいるのは私しかいない。他の人にはそもそも夢喰は見えないし、私以外に戦える人も知らない。ドリームキラーがいつ襲ってくるかも分からないし、襲ってきたところで人々がやられるのを黙って見ていることしかできない!もう…どうすればいいの…」
図らずも、私も道端に腰を下ろすこととなった。絶望だ。どう考えてもドリームキラーを倒す想像ができない。
絶望している私とは裏腹に、向かいに座っているシルバーは理性的で論理的であった。
「だったら、復活するまでにできることをするしかないだろう。僕が言えたことじゃないけどねぇ。…まずは、僕のせいでこうなってしまったことは謝る、ただ不可抗力だ、こっちにも事情がある。悪いけど長くなるからこの話は置いておくが、今はそいつが復活するまでにできることを考えよう。とりあえず戦力補充をしなくちゃ」
そうです、戦力補充。そこが一番の問題。だって私以外に夢喰を倒せる人がいないんだもの。私以外に…。
「君です!夢喰を倒せる人!この世界線での力の使い方が分かったのでしょう?協力して下さいよ!」
「…んまぁ、そういう流れになるよねぇ。今回の件は僕が原因として絡んでるから、仕方ない、協力するよ」
あまり乗り気でないようなのが癪ですが、ひとまず手数は増やせました。でも、もうこれ以上はどう頑張っても増やせません。あとできることと言えば…。
「なにか切り札みたいのはないのかいぃ?昔倒したっていう先祖が残してくれた、みたいな」
切り札、まさにあれが現れなければ、それを見ることはなかったでしょう。この切り札はあれを倒す為に残された最終手段であり、あれはそれを出してなお余りある強さがある。ここまで来たら、イチかバチかです。私はステッキに力を込め始めました。するとステッキは私の手元を離れ浮かび上がり、眩い光に包まれ形を変えていきます。
やがて私の手元へ戻ってきたステッキの姿は、さしずめ大魔法使いの杖と言った形をしており、以前のステッキより格段に強いエネルギーを感じる。確かこうすると、適正衣装になれたはず。杖を一振りすると、フリフリしていた衣装がとっても軽い少し短めのローブへ変わり、とんがり帽子も着いてきました。…とんでもない力がみなぎってきます。
「なんだ、立派なのがあるじゃない」
「これが、私のできる最後の手段。この力と君の力を合わせて、ドリームキラーを倒しに行きましょう」
「イイネ、僕とは違う波長のエネルギーだろうけど、その杖からはとても強烈なエネルギーを感じるよ。思いっきりぶちかまして、とっとと片付けちゃおうぜ、ドリームキラーってやつをさぁ」
「もちろんです。どこに封印されているかは分かっています。完全に復活する前に、叩きに行きましょう」
そうして私たちはドリームキラーが封印されている場所、海辺の祠まで向かうのでした。元より向かっていた海辺なのですぐそこまで来ています。到着に時間は掛かりません。
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