レッツ・お錬金術! ですわっ③
「わっ、わっ!? なっ、なっ、なに!? コロちゃま、これはなんなの!?」
突如として、当主の指輪から伸びた、不思議な光。
それにビビり散らかした私が叫ぶと、コロちゃまが落ち着いた様子で言いました。
「お嬢様、それこそが、調合を行うにあたり最も大事な要素。その名も、『錬金タクト』にございます」
「た、タクトッ!? こ、これをどうすればよろしいの!?」
「タクトは、錬金術師の生命エネルギーをわずかに放出し、錬金釜をかき混ぜ、調合を進めるための道具。そのまま、指をゆっくりお回しください」
「こっ、こう……!?」
言われるままに、人差し指を回し始める私。
すると、連動して光も動き、そして、なんと鍋の中身が、それに合わせてぐるぐると回り始めたのではありませんか!
「わっ、凄いですわ、回り始めた……!」
「これは、なんとも不思議な……。しかしお嬢様、ゴーレムは生命エネルギーがどうとか言っていましたが、お体は大丈夫なのですか?」
「ええ、クロ。苦しい感じは、まるでありませんわ。それどころか、これ、けっこう面白いですわ~!」
なんて、さっきまでの不安はどこへやら、釜をぐるぐるするのに夢中になる私。
するとそこで、なんと釜の中のクヌア草がドロリと溶け始め、やがて完全に消え去ってしまったではありませんか。
「あら、消えてしまいましたわっ!?」
「それでよろしいのです。素材が、お嬢様のお力により、地下水と混ざり合い、錬金釜の中でエネルギーに変わった証拠でございます。そのまま、手引書の指示通りになるまで混ぜ続けてください」
「あっ、そうそう、手引書手引書……!」
そう言われてハッと気づき、開いている左手で手引書を開く私。
するとスーパー栄養剤は、そのまま混ぜ続けて、薄い緑色になれば完成とのこと。
それに従い、混ぜ続けることしばらく。
液体はやがてとても薄い緑色に変化し、それをコロちゃまが用意してくれた古い空き瓶に詰め込み、蓋をして。
そこで私はそれをかざし、元気に声を上げたのでした。
「『スーパー栄養剤』、完成ですわ~!」
「お見事にございます、お嬢様。初めてとは思えない、見事なタクトさばきでございました」
なんて、とにかく私を褒めてくれるコロちゃま。
おほほ、そう言われても、私はただ指をグルグル回していただけなのですけども。
お世辞なのはわかっておりますが、褒められるのは良い気分ですわ~!
「いかがですか、お嬢様。素材と大地の力を、指輪を通じて放たれる生命エネルギーで結びつけ、より効果的なものに作り替える。これこそが、錬金術の基礎でございます」
「なるほどね。なんとなく、やり方はわかりましたわ。……けど、これ、本当に効果がありますの?」
と、ちょっと不安になる私。
なにしろ、ど素人の私が作ったものですから、本当に効果があるのかどうか。
こんなので、本当に大丈夫なのかしらん。
なんて思っていると、そこで様子を見守っていたリタが、必死な様子で声を上げました。
「そっ、それで、これはどう使う物なのですか?」
「ええと。土を耕した後、上からじょうろなどでこれを散布して、乾いたあとそこに種を撒け、と書いてありますわ。作物そのものにはかけないように、ですって」
「そ、それだけでいいんですか? そ、それだけで、実りが良くなる……?」
スーパー栄養剤の瓶を見つめながら、不安そうに言うリタ。
ああっ、やめてっ、そんな不安そうにされたら、私まで不安になってくるから!
なにしろ言われるままに作ったものですから、自信なんて当然なくってよっ!
なんて、二人して辛気臭いツラをしていると、そこでコロちゃまが私たちを励ますように言いました。
「ご安心を。効果は私が保証いたします。とりあえず、一度お試しください」
「そっ、そうですよねっ。まずはやってみないと! わかりました、ちょうど野菜を植えるところだったんです。領主様、これ、お預かりしてもよろしいですかっ?」
「ええ。まあ、私も効果を試してみたいですし。ひとまずあなたに任せますわ」
「ありがとうございますっ! じゃあさっそく、私の畑で試してみます!」
そう言って、リタは両手いっぱいにスーパー栄養剤の入った瓶を抱え、何度も頭を下げながら帰っていきました。
そしてそれを見送ると、クロがこんなことを言い出します。
「お嬢様。あの娘の報告を待つ間、ぼうっとしているわけにもいきません。僕は徹底的に屋敷の清掃をし、生活拠点として整えます。ゴーレム、お前は地下と、庭の整備をやってくれ」
「承知いたしました」
「お嬢様は、その間、どうかその手引書とやらでお勉強をなさってください。錬金術とやら、モノになるかはまだわかりませんが、どうやら我らの最後の希望となりそうですので」
「わかったわ。やれるだけやってみましょう」
そうして、各々が作業に取り掛かり、忙しい毎日を過ごし。
どうにかこのボロ屋敷での生活にも慣れかけてきた、三日後の早朝のこと。
なんと、リタが突如としてお屋敷に飛び込んできて、とんでもねえ大声を上げやがったのでございますわ。
「りょっ、りょっ、領主様ー! たっ、たっ、大変ですーっ!!」




