森のエルフと、エレガントに交渉ですわっ⑤
「あっ、ちょっと!」
私の腕をつかむと、ぐいぐい森の中に引っ張っていく、エルフの女。
大丈夫かしら、とコロちゃまと顔を見合わせつつも仕方なしについていくと、やがて開けた場所にたどり着き、そこでエルフの女は満面の笑みで言ったのでした。
「じゃーん! どーよ、超イケてっしょ~!?」
「…………なにが?」
と、両手をヒラヒラさせながら嬉しそうに言うエルフの女と、意味がわからなくてそんな声を上げてしまう私。
いえ、本当にわからないのです。
だって、そこは他となにも違わない、ただの森が広がっているようにしか見えないのですもの。
すると、エルフの女はそれにカチンときたような表情を浮かべ、怒った様子で叫びました。
「ゲーニー、見る目なさすぎ! ほら、よく見るっしょ! こことか、こことか、超イケぽよでデコってっしょ!?」
そう言って、何の変哲もない木を指し示すエルフの女。
……いや、待って。
まさか、とは思いますが……。
「……もしかして、この木に絡まったツタや葉っぱのことを、デコって言ってらっしゃったりします?」
「おっ、やっと気づいたぁ? ゲーニー、オサレにニブすぎっしょー。どう、どう、超テン上げの激エモっしょ! じゃあ、次は超アツいプレイスポットに案内してあげる!」
そう言って、また連れていかれた場所。
そこは、丸太で作られたシーソーや、木から吊るされたブランコなどの遊具が、無造作に並べられたスペースとなっておりました。
「…………」
「…………児童公園?」
言葉もないコロちゃまと、茫然とつぶやく私。
しかしそんな私たちの盛り下がりに気づく様子もなく、ハイテンションなエルフの女は、さらなる場所へと私たちをいざなったのでした。
「そしてそして、これが贅沢独り占め! フォレストビューの、ガチでイケてるマイ寝室っしょー!」
「……」
そして、最後に案内された、小高い丘。
そこには、木と木の間に、ぽつんとハンモックがかけられていたのでした。
ああ。言うまい、言うまいと思っておりましたけど……もう、我慢できない。
「くっ……くっそ、ショボいですわあああああああああ!」
「はっ、はああああああ!? 今ショボいっつったか、てめえ!? ふざけんなし!」
「ショボいものをショボいと言って、何が悪いんですの!? こんなの、十分生きたご老人が、暇つぶしに作る程度のアレでございますでしょ、アレ! それに、なーにがフォレストビューですのっ! こーんなとこから見なくても、右見ても森、左見ても森! 森、森、森の見放題じゃありませんの! こんなのオシャレじゃなくて、ただ謎の物たちがちりばめられた、夜に来たらトラウマになること必死の不気味な森ですわよっ!!」
「あっ、言ったな、ゲーニー! そこまで言ったら……そこまで言ったら、戦争じゃん!?」
なんて、ギャーギャー言葉をぶつけ合う私たち。
すると、それを見かねたコロちゃまが「まあまあ」と言いながら間に割って入り、そして私にささやきかけてきました。
「お嬢様。どうやらこちらの方は、栄えた場所への関心がとてもお強いご様子。ならば、ここは思い切って、マルカス村に招待して差し上げるというのはどうでしょう」
「ええっ、あの、まるでカスみたいな村に……? あの、しょぼくれた納屋みたいなボロ家がポツンポツンと並んでいるだけの、この世の終わりみたいなクソど田舎じゃ、逆効果ではないかしら」
「……お嬢様、村のことをそういうふうに思われていたのですね……。たしかにかつての栄華は失われておりますが、それでもこのような森の中よりは幾分かマシかと」
まあ、確かに試してみる価値ぐらいはギリギリあるかもしれませんわね、あの廃村じゃないのが信じられないぐらいの、終わり散らかしている村にも。
そう考え、私はまだプリプリと怒っているエルフの女に、こう声をかけたのでした。
「あなた、ちょっとよろしいかしら。もしよろしければ、今度は私の村に、親交を深めるためご招待したいのですけれど」
「……え? あーしを、ゲーニーの村に……?」
それを聞いたエルフの女は、一瞬びっくりした顔をしました。
そして、迷った様子で視線をさまよわせ、考え込み。
ですが、誘惑に勝てなかったのか、やがて目を輝かせ、元気にこう叫んだのでございます。
「行くっ!!」




