森のエルフと、エレガントに交渉ですわっ⑥
「さあ、こちらが私たちの村ですわ。みすぼらしくて恐縮ですけれども」
やたらと乗り気なエルフの女を伴って、マルカス村へと戻ってきた私たち。
とはいえ、あちこちボロボロのこんな村を見せるのは、やはり少し心苦しいところ。
うわー、ゲーニーの村、すっごいヒンソーじゃん! これなら森の中のほうがマシだね、とか言われそうで、ドキドキしてしまいます。
だけど、私のそんな心配をよそに。
エルフの女は、村をぐるっと見回すと、驚愕の表情で叫び声を上げたのでした。
「すっっっっっご……! 超超超大都会じゃーん……!! ゲーニーの村、すっご……すっごぉ!」
……うん。
こいつ、チョロいです。
クソチョロですわー!
「うわー、やっべ、やっべ、テンションぶち上がりっしょー! すげーすげー!」
「お気に召したようで、なによりですわ……。じゃあ、次はうちの邸宅に参りましょう」
キョロキョロと忙しなく村を見ているエルフの女の手を引き、続いて我がオンボロ屋敷へと案内する私。
屋敷はあいかわらずあちこちが痛んでいて、恥ずかしい有様ですが、それを見たエルフの女はブルブル震えながら、また声を上げたのでした。
「ひっ、ひえええっ……。な、なにこのとんでもない建物……!? いち、に、さん……さ、三層になってんの!? やっ、やばすぎるっ……! しかも、なにこれ、窓になんか、向こうが透けて見える何かがはめこまれてるー!? うわああああ凄すぎて怖いよおおおおお!!」
「…………」
どうやら、三階建ての家も、窓ガラスも始めて見たようですわね……。
こんなものでここまで感動されると、むしろ怖いですわ。
エルフの村がどんな有様なのか、逆に気になります。
なんて思いながら、私はエルフの女を応接室にいざない、もてなしを始めたのでした。
「さあ、喉が渇いているのじゃなくて。お紅茶をどうぞ」
「ひょええええええっ! エルフ村の、しっぶいお茶と全然違う! すんげー良い匂いだし、すんげー美味いし! コップもすっっっごいオサレ! マジ神ってるー!」
「こちら、お茶菓子のクッキーですわ」
「うあああああああ美味い! なにこれ、神話に出てきそうなぐらい美味い! しかも見た目がオサレすぎるうう! ああああテンションが上がりすぎて死ぬぅ!」
出したおもてなしの品を、脳の血管がぶち切れそうなぐらいのハイテンションで平らげたエルフの女。
そしてそのまま、こやつを屋敷の客間に案内し、私はこう言いました。
「さあ、こちらが客間ですわ。どうぞ今夜は、ここでのんびりと寛いでちょうだい」
「……」
すると、エルフの女は妙に静かになってバタンとベッドに横になり、そして無表情で黙り込んでしまいました。
あらやだ、もしかして気に入らなかったのかしら。
まあ屋敷に残っていた、壊れたベッドを補修して、古ぼけたシーツを綺麗に洗濯して敷いただけのものですから、寝心地がよくないのも当然ですけども……。
なんて私が困惑していると、そこでエルフの女はくわっと目を見開き……そして、屋敷中に響き渡る大声で叫んだのでした。
「あーし……ここに、住むッッッッッ!!!」
……どうやら、気に入りすぎて、何も言えなくなっていただけのようですわ。
ああ、チョロいにもほどがありますわっ。
なんて私が呆れていると、そこで、裏で色々と応対してくれていたクロが、困惑した様子でそっとささやきかけてきました。
「お嬢様。名誉あるお屋敷に、変な動物を連れて帰ってこないでください。我が家はペット禁止ですよ」
「ペット言うな。ほら、こやつは例の、森を占拠していた亜人ですわ。そのままだと森で材料集めもできそうになかったので、どうにか丸め込むために連れて来たのですわ」
「ああ、なるほど、そういうことでしたか。……しかし、聞いていた話とずいぶん違いますね。危険な亜人だと言うから、僕はてっきり、二足歩行のイノシシみたいな外見かと」
「中身はそんなものですわ。まあそういうわけで、どうにか話をつけたいのですけれど。どうすればいいかしら」
「それでしたら、僕に案がございます。ここはですね……」




