森のエルフと、エレガントに交渉ですわっ④
「…………はい?」
やだ、私の聞き間違えかしら……。
高貴なる森の妖精と呼ばれる、エルフ。
そんなエルフが、今……とっっっっても俗っぽい話し方をしたように聞こえたのですけど……まさかねえ?
「つーか、あーしのシマにノコノコ乗り込んできて、マジ何様。変な動く岩の塊まで連れ込みやがって、こっちゃ縄張りガッツリ主張してんのに、マジありえないんですけど~」
「……いやああああああっ! やっぱり、エルフがひどく低俗な言葉を使ってますわあああああ!!」
あっ、ありえないっ……こんなこと!
あって、いいはずがありませんわっ!
ああ、ああ。
私の中の、エルフに対するイメージが、ガラガラと崩れていきますわぁあああ!
「あのねえ、あーた、エルフでしょ!? なんですの、そのギャルみたいな喋り方! もうちょっと威厳のある感じで話せませんの!?」
「うわー、出たー。だるー。ゲーニーがエルフ村の年寄りと同じこと言ってて、マジでウケんですけど~。ジジババみたいなふっるい言葉、こっちゃサムくて、とても使えねーんだわ。ありえね~」
そう言って、本当にダルそうな顔をするエルフ娘。
ああっ、輝くような美貌とのギャップがありすぎて、こっちの頭がどうにかなりそうですわっ!
……ていうか、ゲーニーって、もしかして人間のことっ!?
「いやいや、今はそんなこと考えてる場合じゃありませんわ……。あなた! この土地は、バーンシュタインに与えられた領地の一部、すなわちこの私の土地でしてよっ! 勝手に住んでもらっては困りますわっ!」
「はー? 知らねーし。ゲーニーの土地がどうとか。つーかぁ、ここは元々あーしらエルフが、バリバリ仕切ってた森っしょ。その後ちょっとだけ引っ越してたけど、しょゆーけん? とかいうのは、先に住んでたあーしらに、ガチで有るんですけどー」
「さ、先に住んでた……? そんな話は聞いておりませんけど、いつのお話ですの?」
「さー? 二百年か三百年か、まあそんぐらいの、ちょい前じゃね」
に、二百年や三百年が、ちょい前!?
うわあ、エルフの時間感覚、マジでどうかしてますわ!
「つーわけでぇ、ここは今あーしが一人で住んでる、あーしのホームだから。入ってくるやつは、即ブッコロ。痛い目見ない間に、消えろし」
そう言うと、エルフの女は、またもやこちらに弓を向けたのですわ。
ああもう、我の強い亜人ですわー!
とはいえ、こうなると力づくで排除、というのはしにくいですわね。
相手にも相手の言い分があるようですし。
それに私、さすがに女の子をぶん殴る気にはなれませんわ。
ここは、なんとか話し合いで解決しないと。
「お待ちなさい。あなたがここの所有権を主張しているのはわかりました。ですけど、私たちもこの森を必要としておりますのよ。そもそも、話を聞いていると、どうやら前は、他の土地に住んでいたようではないですか。どうして、ここに戻ってきましたの?」
「む……。それには、ガチでふけー理由がある」
私が尋ねると、エルフの女は弓を降ろし、そして苦虫を噛み締めるような表情で続けました。
「そう、あーしが故郷のエルフ村を捨てて、一人でここに戻って来た理由。それは……」
「それは……!?」
もしかしてエルフの村になにかあったのかしら、と、ドキドキしながら続きを待つ私。
すると彼女は、ぐわっと目を見開き、そしてあまりにも予想外な言葉を叫んだのでした。
「それは……エルフの村が、マッジでど田舎で、年寄り臭くて我慢できなかったからだし!!」
「……はい……? えっ、そ……それだけ……?」
「それだけって言うなし! もうほんっと退屈で退屈で、口を開けば森との調和だとか、穏やかさを楽しむとか、眠くなるようなことばっかり言ってて、マージつまんないから! 生きてるのに死んでる気分ってやつ! あーしみたいなギャルに耐えられるわけなくねー!? ありえねー!」
そう言って地面に転がると、じたばたと手足を振り回すエルフの女。
……嫌だわ。これでは、ギャルというよりただの駄々っ子ですわ。
「しかし、あなた。そうは言っても、ここも森の中の、なーんにもない土地じゃありませんの。退屈なのは、なんにも変わらないのではなくて?」
「はー? ゲーニー見る目なさすぎ! ただの森じゃないし! あーしがハチャメチャ手ぇ入れて、めっちゃオシャンティな森になってるっつーの!」
私がそう言うと、エルフの女はガバっと跳ね起き、不満そうに叫び声を上げました。
……なんだかこの女、出会って数分なのに、ハチャメチャに駄目な部分を見せつけてきますわね……。
「オシャンティって、おしゃれ、って意味ですの? ……どこが?」
「お? 気になる? 気になっちゃう? 見る? 見ちゃう? あーしの森。ゲーニー、見学しちゃう?」
私がそう言うと、目をキラッキラに輝かせて食いついてくるエルフの女。
本当になんなのかしら、こやつ。
「しゃーねーなー、そんなキョーミ深々の顔されちゃ、あーしも無視はできねーわ。さあ、ついてこいゲーニー!」
「あっ、ちょっと!?」




