99.知美の記録3 私は死神です
こんばんわ。読んでくれてありがとうございます。
街に降り立つと、さっそく私は、いつもしてきたようにセンサーを作動させました。
テロリスト掃討作戦のような、軍事作戦の任務は初めてのはずなのに、なぜだか、体が覚えていました。
もしかしたら、初めてではないのかもしれません。記憶を消去されているだけで。
自分の立っている場所から、半球状のドームを広げていくように意識していくと、案の定、瓦礫のような建物から、私を狙っている銃口が、13人。
こんなに待ち伏せしているなんて、事前に作戦が漏れていたのでしょうか。
きっと、私は軍事関係者の間では、有名人なのでしょう。
──死神のMari、として。
もう、こんな女子生徒の制服を着て、かわいいリボンを揺らしていても、相手をだますことはできないのでした。
私は、背中に背負っていた、背丈ほどもある、細長い剣を抜き出しました。
これは、超電導リニアブレード。通称、神殺しの剣、ロンギヌスといいます。
人殺しの私には、ぴったりの名前です。
私はロンギヌスを前方へ突き出すようにして、構えました。
そして、瓦礫のような、崩壊しそうな建物から、一斉に私に向けて、銃口が火を噴きました。
その瞬間、私は、【時間圧縮】を作動させようかと迷いましたが、そうするまでもないと認識しました。
だって、あんな玉に当たったとしても、私は平気なのですから。回避する必要すらありません。
今、私の視界には、予想される弾道が白い線で、表示されています。
それらは、すべて、寸分たがわず、私に向いておりました。
相手のピストルも、また、自動照準機能があるのでしょう。
私は、向かってくる白い線にぴったりと重なるように、ロンギヌスから電磁砲を放ちました。
彼らの放った玉が、私の元に到達したのは、彼らの生命反応はすっかり消えた後でした。
死んでしまった彼らが放った玉は、私に当たると、ぱらぱらと、赤茶けた地面に落ちていきました。
リーダーの写真と居場所は、あらかじめ情報をインプットしてあります。
私は、街の一番立派な宮殿ではなくて、瓦礫に埋もれた廃屋に足を進めました。
すると、視界左上方から、熱源反応。
顔を向けると、ミサイルが、もう目の前にやってきていました。
当たっても良かったのですが、せっかくのおしゃれな制服が土埃まみれになるのは、いただけません。
これは、万里夫さんからの、私へのプレゼントなのですから。
──【絶対防御】
私は、ミサイルから視線をそらして、歩き始めました。
私の側方で、ミサイルがさく裂して、耳障りなほど大きな爆音を立てています。
幸い、【絶対防御】のシールドのおかげで、大切な制服には傷一つありません。
ロンギヌスを出すのもめんどくさいので、無視することにして、土づくりの廃屋に歩みを進めていました。
すると、また背中にドスンと衝撃が走りました。
さっきの人が、再度、私に向かってミサイルを放ったようでした。
今度は、シールドを張っていなかったので、まともに食らいましたが、私の体は無傷でした。
でも、万里夫さんからもらった制服の袖が、そしてスカートの先が、少し破れています。
──許さない。
私は無表情な目線を、ミサイルがやってきた窓辺に向けました。
と同時に、ロンギヌスを抜き出して、最高出力で、その窓辺に向けて放ちます。
あっという間でした。
建物は消し飛んで、そこには何もない空間が広がり、地平線と青空が見えていました。
気を取り直して、廃屋に進みます。
そこには、まだ1歳になるかならないかくらいの赤ちゃんを抱いた女性、薄暗い部屋で、地べたに腰かけていました。
そして、私に、涙ながらに訴えてくるのです。
「ああ、Mari様、ここにはなにもありません。どうか、どうか、この子に免じて、見逃してください。どうかおかえりくださいませ!」
母親は赤ちゃんをその胸に抱きながら、私に向かって、涙ながらに何度も頭を下げてきます。
でも、私の高感度センサーが、この廃屋の下に、リーダーがいると言っているのです。
私がどちらを信用するかは、いうまでもありません。
母親をぐいと押しのけて、私は部屋を物色します。
さすがに、一般市民、とりわけ、女性や子供、老人はむやみに殺さないように、インプットされているのです。
部屋の奥あったかまどの灰をどけると、動かせそうなコンクリートのふたがありました。
私がそれをどけようとすると、
「おお、神よ、この悪魔を葬りたまえ!」
と女性のがなり声と、赤ちゃんの泣き声がして、爆発が起きました。
振り返ると、私は無傷だったのですが、建物は崩壊して、薄暗い部屋には午後の日差しが差し込んでいました。
私は、爆発で部屋中に四散した、ついさっきまで母親と赤ちゃんだったもの、を一瞥してから、ふたを外して出現した、地下への入り口に進んでいきます。
這いつくばるようにしてかまどに入り、その穴に足の方から身を押し込めます。
穴は、成人男性がなんとか入れるほどの大きさでした。
でも、相撲取りなんかは無理でしょう。
コンクリートの壁面には、鉄の棒でつくった、コの字型のはしごがあったので、それを伝って降りていきます。
そして、地下へ降りて行った先には、薄暗い蛍光灯で照らし出されたさみしい廊下が続いていました。
先へ進むと、重たい鉄の扉があり、それを開いた先には、派手に装飾された、立派な部屋がありました。
そして、そこにはインプットされた写真と同じ顔の人間が、奥にある黒光りする高級そうな机に座り、私をじろりとにらみつけていました。
そう、この地域一帯に根を下ろす、テロリストのリーダーでした。
(つづく)
次回は、第100話「知美の記録4 エリスの花」は、8月2日(日)投稿予定です。
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