95.真実のバシレイア
こんにちは。せっかくの連休なので、がんばって投稿します。
休日なのに、読んでくれてありがとうございます。
雨の日(私の地域だけかな)の暇つぶしになれば幸いです。
はくたかさんが、本棚に向かって、私にとっては、意味の分からない不気味ことを、つぶやいている。
なんのことだろうか、あとで知美に聞いてみよう。本当のことを言ってくれるかは、知らないけれど。
「マリよ、もうかれこれ、300回目のループになる。おそらくこれが最後のチャンス。あるいはもう手遅れかもしれない。まもなく闇のエリスは、力を蓄え、異次元のカオスに進化する。もう時間がない…」
闇とか異次元とかカオスとかエリス…は、まあセーフかな。でも、中二病全開のフレーズだ。
聞いていると、自分も中学生のときは、そうだったかもしれないと思い、こっちも恥ずかしくなる。
「あなたはさっきから、なにを言っているんですか? 意味がわからないのですけど…」
「知りたいか?」
はくたかさんは、そう言って、初めて私を見つめた。
「はい…」
私がうなずくすぐ横で、知美はくちびるをかみしめて、うつむいていた。
「なら、その本を持ったまま、ついてきなさい」
はくたかさんは、私が胸に抱えていた、まだまっさらな本を見据えると、さっと身をひるがえして歩き始めた。
「知美、行こう」
私は、たたずんだままの知美に、そっと手を差し出した。
知美はためらいがちに、顔を俯かせたままで、そっと足を踏み出した。
本棚に囲まれた薄暗い空間を抜けると、そこには、読書机が並んでいた。
まだ午後3時とあって、座っている人はまばらだった。
シンとしていたので、なんとなく足音を立てないように、本棚の間から、そっと歩みだす。
机が並んだ読書席を抜けた先には、ドアがあって、その前ではくたかさんは足を止めて、私たちを振り返った。
「このドアは、真実のバシレイアに通じているんだよ」
「えっ?」
はくたかさんが、真顔で衝撃的なことを言うので、私は思わず声が出た。
「なら、旅はもう終わりということですか? この先に”かみ”がいらっしゃるのですか?」
「ふふっ、残念ながら、君の目指している、そのバシレイアとは違うものだよ。もっとも、これから行くバシレイアの方が、真実のバシレイアなのだか…」
はくたかさんは、私を見ながら、ドアノブに手を添えていた。
「どういうことですか?」
「つまり、バシレイアと名のつくものが、2つ存在するということさ。1つは地球の女神エリスが、地球を見守るため創り出した島、真実のバシレイア。これから行くのは、そちらの方だ。私の故郷さ」
はくたかさんの赤い瞳に、懐かしそうな色が浮かんだ。
「それじゃあ、もう一つの、私が目指している、”かみ”がいらっしゃるバシレイアというのは…」
「それは、人間がつくりだした、一部の選ばれた者たちのシェルターとしてのバシレイアさ。
こちらを、”まやかしのバシレイア”とでも呼ぼうか。
地球の危難があったときの避難施設というきれいごとの名目で、金持ちや政治家のやつらが、一般大衆をそそのかし、金と資源を時間を巻き上げて作っていたようだ。
でも、実際避難できるのは、一部の特権階級だけだったのにさ。まあ、結局、”かみ”に乗っ取られて、特権階級をはじめとして、ほとんどの人間は皆殺しにされた。
皮肉にも、自分たちが作り出した、”まやかしのバシレイア”に備えられていた、防衛システムによって、ね」
「防衛システム…」
私は思わず頭を抱える。
いろんな情報が一度に頭に入ってきて、整理するのに時間がかかりそうだ。
そっと知美を見ると、やっぱりうつむいたままだ。
でも、今のはくたかさんの話に、おどろいている、という様子はないみたい。
「防衛システム、それは、君も知っている、”天の裁き”、そして、”鉄騎士団”さ」
はくたかさんは、さらりとした口調でそう言った。さも、周知の事実であるかのように。
人間が作り出した、まやかしのバシレイアは、なぜだか人間を極端に憎んでいる”かみ”に乗っ取られている。
そして、今現在も、”天の裁き”で人間を殺し続けている。
問題は、”かみ”が何者かということ。
鹿児島の町で、町長の雪代さんは、”かみ”は暴走したコンピュータシステムだと話していた。
そうであれば、まやかしのバシレイアを守るコンピュータシステムが、人間の制御できない状態になったのかもしれない。
でも、私はある予感を感じていた。
どうしても、”かみ”が無機質なコンピュータシステムとは思えなかった。
デスベアーを倒したときに、対話した時も、そうだった。
”かみ”からは、感情というものを感じるのだった。
「さて、立ち話をしていると、司書さんから怒られてしまう。そろそろ行こう。真実のバシレイアに」
はくたかさんの指さす先を見ると、さきほどの受付カウンターの司書さんが、本を整理しながらも、こちらをじろりとにらんでいるのが目に入った。
私は、びくっとして思わずピンと背筋を伸ばした。
そんな私をみて、ちょっと笑顔になったはくたかさんは、ゆっくりとドアを開けた。
はくたかさんい続いて、ドアをくぐると、頬に、優しい香りのする、さわやかな風を感じた。
広々とした青い草原の向こうには、小高い丘が盛り上がっていた。
「このドアはなんでしょうか? どこでもドアですか?」
私は目を丸くしながら、はくたかさんに訊ねた。
「ドアはいたって普通のドアさ。真実のバシレイアが、この世ではない、どこかにあるからこそ、どこからでも行けるのさ。ただし、選ばれた者だけに限るのだが」
ふと知美を振り返ると、うつろな目で、草原の先を見つめていた。
私の目線に気づいたのか、わざとらしく、パッと表情を変えた。
「ん? どうしたの、私の顔じっとみたりして」
「なんでもないよ」
私も、同じような作り笑顔で答えた。
あせらなくてもいいんだ。もうすぐ、いろんな真実がわかるのだから。
(つづく)
次回の第96話「世界について、教えてください」の投稿日は未定です。
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飽きっぽい私がここまで書いてこれたのも、読んでくれる人のおかげです。




