94.残念美人のはくたかさん
こんにちは。せっかくの休日なので、投稿させていただきました。
休日なのに、読んでくれてありがとうございます。
白いブラウスの上に、グレーのボレロを羽織り、スカートはすこし濃いめのチェック柄。
そして襟元には、スカートと同じ色と柄で、少し長めのクロスタイがちょこんと付いていた。
私と同じ、子供っぽい制服を着ていたけれど、本のページを見つめる横顔は凛としていて、そのせいか大人びて見える。
腰まで伸びた、さらりとした銀髪が、情報室の明かりで、光り輝いていた。
そして、袖口やスカートの裾からすらりと長い手足が伸びて、その肌は透き通るように白く、ルビーのような赤い瞳を一層際立たせている。
その美しさに心奪われながらも、私はそっと後ろを通り抜けようと、本棚に身を這わせる。
「今度は、いったいどんな”まり”さんを連れてきたんだい?」
唐突に話しかけられて、びっくりして立ち止まると、本から顔をあげたばかりの美少女と目があった。
その途端、眉毛の高さに切りそろえられた銀髪がさらりと揺れて、血のような赤い、神秘的な瞳が、私を見据えた。
「えっ…? どういうことですか? マリは、私ですけど…」
私が正直(本当は深山真理だけど…)に答えると、その美少女は、顔をゆがめて笑い始めた。
「あはは…、それで、前の”まり”さんは、どうなったんだい? やっぱり、突然未来に連れてこられてせいで、発狂して、帰ってしまったのかな?」
質問されている事の意味がわからなくて、知美を振り返ると、黙ってその銀髪の美少女を見つめいていた。
でも、銀髪の美少女が、とてもなれなれしいので、私は心配になってきた。
実は以前に出会っていて、私の方が、この人のことを忘れているのではないかと。
だって、暗黒龍ピーちゃんの力を使うたびに、私の記憶の一部、欠片が失われると言っていたのだから。
なので、名前を聞いてみることにした。
「あの、どこかでお会いしましたでしょうか? 失礼ですが、お名前は…」
「名乗るほどの者ではないのが…、知りたいか?」
ニヤリとする美少女に、私は、神秘的な見た目に似合わない、へんな言葉遣いで、残念美人だなと思っていた。
「せっかくですから」
ここで、別にいいです、というのもなんだか失礼なので、聞いてみることにした。
「”かみ”の四天王である、デスベアーを倒し、今また麒麟を脅かしつつある君なら、わかると思ったが」
美少女はヒントらしきものを出してくれているみたいだが、いまいちピンとこなかった。
「知美は、この女の人を、知ってるの?」
私が訊くと、知美は顔をそらして、うつむいた。なにかを隠しているときの、知美だった。
でも、隠したいのには、理由があるだろうから、あまり追及しないことにする。
目の前の美少女から聞けばいいのだから。
「私は、はくたか、だよ。”かみ”の四天王のひとり、天空のはくたか、さ」
「え、そうなんですか!」
私は思わずきょとんとして、少女の真っ赤な瞳を見返してしまう。
「ほんとうに?」
「さあ? どうかな。信じるかどうかは、君の自由さ」
ふっ、と声が聞こえてきそうなくらい、はくたかさんは、きれいに両手を広げて、首を傾げる。
「じゃあ、信じます」
「いいね。信じる者は救われるよ、君に”かみ”の祝福がありますように」
私は、はくたかさんに頭を撫でられた。なんだか、ちょっと嬉しい。
はくたかさんの方が、私より背が高いので、目の前には、チェック柄のクロスタイと、こじんまりとふくらんだ胸があった。
頭なでなでが一段落してから、私は、お願いするように、はくたかさんを見上げた。
「”かみ”の四天王なら、私たちを”バシレイア”に連れて行ってもらえますか?」
私の申し出に、はくたかさんは、笑って私の肩を手のひらで、ポンと叩く。
「あはは、面白いね君は。連れて行ってあげてもいいけれど、”かみ”の前に行くと、君が消えてしまうかもしれないから、それはできないな」
「どうして消えてしまうんですか?」
「それは、マリさんがよく知っているんじゃないのかな」
はくたかさんは、私をじっとみる。
でも、私が知るわけが──。
いや、はくたかさんの目線の先にあるのは、知美だ。もしかして、最初から、知美に話しかけていたのではないだろうか。
そして、私の考えのとおり、知美=アンドロイドのマリであり、そのマリが、前世界から、マリア様と呼ばれる誰かを連れてくるのを目的としているのならば、はくたかさんの質問もある程度はつじつまが合う。
知美の目的は、マリア様かもしれない私を、”かみ”のところへ連れていくこと。
そして、マリア様でないと、”かみ”に消されてしまう。
そしたら、その瞬間に、私の意識、深山真理の意識が入っている、このマリの体は、搭載されている【時空転移ドライブ】により、前世界の、再生の年が発生する以前の日へタイムリープする。
あるいは、知美の、マリの意識だけが、記憶を保持したまま、再生の年へ飛ばされる。
そして、また新しいマリア様を探して連れてくるに違いない。
私は、ひとつ前のマリア様だった人は、その時点で、消えてしまうのだろう。完全に。
その繰り返しは、今回で300回目になる。今まで消えてしまった、299人のマリア様。
次に消える300人目のマリア様は、私なのかもしれない。
でも、私はあえてそれに気が付かないふりをしていた。
自分でも、どうしてかわからない。
多分、答えを知ることが怖かったのだろう。
知美は何か知っていて、それを私に黙っている。そして、それは、私が消えてしまうかもしれないこと。
でも、それ自体は構わない。
私は知美のことが、好きだから。
ただ、私にそれを話してくれないことが、淋しかった。
あんなに、心を通わせたと思っていたのに。
「知美、行こう…」
私は後ろの知美に、そっと手を差し出した。
知美は、少しためらいがちに、私の差し出された手をとった。
私が歩き始めると、はくたかさんの、不気味なつぶやきが、静かな空間に響いた。女性にしては低い、よく響く声だった。
「闇のエリスが、異次元のカオスに進化するとき、世界は永遠の闇に閉ざされる…」
(つづく)
たくさんのポイントやブックマークをくださり、ありがとうございます。
継続の原動力になります。
次回、第95話「真実のバシレイアへ」の投稿予定日は、未定です。ただ、8月1日までには、投稿します。
また、活動報告でもお知らせします。




