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65.マリア様の三種の神器

こんばんわ。今日も読んでくれてありがとうございます。

次回は、明日、5月22日(金)午後6時更新です。

 そう、亨は両手に剣を持っている。一本を受け止めても、もう片方の一本は受けきれない、はずだった。


 ガチィンと音がして、私の側腹部めがけて飛んできた亨の剣がはじかれた。


 私は、【絶対防御】を発動させていた。


 【時間圧縮】は、たしかに時空転移ドライブの特殊機能に依存しているのだろうから今は使えないはず。

 でも、【絶対防御】が作り出すシールドは、時間には関係がない。

 だとしたら、エネルギーさえ十分あれば、できるかもしれないと、私は考えたのだった。


 そして結果は予想通り、【絶対防御】により出現させたシールドは、亨の剣をはじいたのだった。


 それにしても、発動してよかった。

 もし発動しなかったら、今度こそ、真っ二つに切られていたに違いない。


 予想外に剣がはじかれて、さすがの亨にも隙ができた。

 私の目はそれを見逃さなかった。きっと、町長との訓練のおかげだ。


 私は、亨の右手のグラディウスを受け流すと、そのまま体をくるりと回転させた。

 そして、舞い踊るようにして、亨めがけて、ソウルセーバーを振り下ろし、体ごと思い切り床にたたきつけた。


 私は気絶してしまった亨のそばに腰を下ろして、目を覚ますまで、ずっと待っていた。

 ホールは、さっきまで激しい剣戟がうそみたいに、静かだった。



 しばらくして、亨は目を覚ますと、頭を抱えて起き上がった。


「……粗大ごみのマリア様は、俺が気絶している間、ずっとそこにすわっていたのか」


 上半身を起こした亨は、そばにすわっていた私を見る。


 私は亨が生きていたことにホッとして、思わず笑顔になった。やっぱり、人殺しにはなりたくはない。


「そうだよ、ああ、よかったあ、安心した」


「そんな優しい顔を向けられたのは、いったい、いつ以来かな」

 

 亨は私の笑顔から、そっと顔をそむけた。厚化粧なので、顔色の変化はうかがえない。


 けれど、私はいたずら心をだして、瞳にサーモグラフィーのフィルターをかけて、亨を見つめてみた。

 すると、顔の温度が上がっているのが見て取れた。


「なんで、さっさとグラディウスを奪って、俺を奈落に突き落さなかったんだ? そしたら出られたのに」


「だって、私が殺したみたいで、嫌なんだもん」


「ほんとに、粗大ごみだな、お前は…」


「粗大ごみって言わないで! なら粗大ごみに負けたあなたは、産業廃棄物ってことかしら?」


「なんだそれは?」


 私が笑うと、亨も力が抜けたように笑った。


「さて、と」


 亨はゆっくりと立ち上がり、私の顔もそれにつれて、上を向く。

 

「これは、粗大ごみのお前にやる。大切に使え」


 グラディウスを放るようにして、私の前に置いた。

 私はちらりとそれをみて、また亨に目線を戻した。


「ところで、この後世界に伝わる、三種の神器は、知っているか?」


 亨にいきなり質問されても、ピンとこなかった。

 そういえば、前世界の社会科の授業で聞いたことがあったかもしれない、と思いをめぐらせる。


「えーっと、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫…でしょうか?」


私が自信満々に答えたけれど、亨はふきだした。


「はは、なんだそりゃ、昭和しょうわかよ。間違えるにしても、せめて草なぎの剣とかの方だと思ったがね。それに、この後世界のって言っただろう?」


「そんなのわかりません」


 亨は真面目な表情に戻り、床に転がっているグラディウスを指さした。


「そのうちの一つが、そこに転がっている、超伝導リニアブレード、通称神殺しの邪剣”グラディウス”だ」


 説明されて、私は床に転がっていたグラディウスを拾い上げる。そんなに重くない。これだけ軽くてあれだけ丈夫なのは、一体どんな金属でできているのだろう。


「威力はさっき見せたとおりだ。合わせて1本にしたときは、まるでレールガンのように、中央から強力な電磁砲を射出することができる。ただ、ものすごいエネルギーを要する。そして、俺がやったみたいに、2本に割って二刀流にすることもできる」


 私は黒光りする刃を、不思議そうに眺めていた。


「三種の神器というからには、あと2つあるのだろうが、他は知らない。塔の情報室になにか手掛かりがあるかもしれない」


 亨は懐から、たばこを取り出して、口にくわえると、それを吸い始めた。

 

 いつの時代でも、人間の風習はかわらない。前世界との共通点を見つけて、すこしホッとする。

 

 しろい煙が、形を変えながら、ふわふわと立ち昇っている。


「ところで、300年前の世界は、この後世界とくらべて、どうだ?」


 亨の指先から、たばこの煙がただよってきて、懐かしいにおいがした。

 私は、その匂いが嫌いではなかった。


「うーん、今と大して変わらないかな。違うといえば、やたら人が多いっていうところだけ」


「そうなのか。前世界の奴らが、自分の欲望のままに好き放題地球を食い荒らした、それで”かみ”が怒り、今みたいな世界になったと聞いたが」


 300年前の、私の何気ない便利な暮らしが、地球を食い荒らしていたと指摘されたような気がして、思わず縮こまってしまう。


 私はうつむいているのを見て、何かを思ったのかもしれない。


 亨はふと思い出したような顔をして、話題を変えた。


「そういえば、お前の連れ、なんていったかな、あの小さい方…」


 連れ、といえば、夏海か知美だけれど、小さい方といえば、知美だった。


「知美が、どうかしたんですか?」


 私は不安になり、思わず一歩足を踏み出して、亨に問い詰めていた。

 黒真珠ブラックパールの部下がなにか知美にいたずらをしたのだろうか。


「ああ、俺がここに来る前に、ウルフの獣人に連れていかれるのを見たんだ。それで、メンバーの情報通に話を聞いてみた」


 亨の言葉に、私の不安はいよいよ高まった。


「一体どこへ連れていかれたんですか?」


 高ぶった不安で、私の口から出た声が震えていた。


「赤ちゃん工場、と言っていたが…」


 亨の重い口から出た言葉は、私に嫌な予感が的中したことを抱かせるのに、十分なものだった。


(つづく)

ここまで読んでくれてありがとうございました。

これまでのPV、ブックマーク、ポイント評価は創作の支えになっています。うれしいです。


次回は、5月22日(金)午後6時更新です。

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