41.出会いたくなかった存在
こんばんわ。お久しぶりです。
長い間お待たせしました。(誰も待ってないかな…)
新章の投稿を再開します。
私は、数えきれないほどのトンネルや橋を越え、何十台もの他の自動運転トラックを追い抜いた。
そして、ようやく大阪付近にやってきたころには、もう夜が明け始めていた。
助手席で寝ている知美を気にかけながら、私は赤く染まり始めた地平線を見つめていた。
山道を抜けて、前方の視界は開けていた。
300年前には大阪と呼ばれていた地域だが、やはり私のいた町と同じように、何度も地震があったかのように、建物は崩壊して、人間が生活している気配はまったくなかった。
でも、その中心に、1本だけ、光輝く巨大なビルがそびえたっているのが見える。
その光輝くビルは円筒形をしており、てっぺんは雲を突き抜けてのびていた。
こんなにも遠くから見えるのだから、相当巨大な建造物なのだろう。
もしかして、あれが麒麟の本拠地なのだろうか。
ふと、頭の片隅に違和感を感じた。
そう、ダンスパーティーのあとで、鈴子さんに天の裁きが降り注ぐ前と同じような感触。
何か人間でないものが、近づいてくる気配。
500メートル先に、なにかの気配を感じる。
道は直線で、障害物もない。目をこらせば、姿をとらえられるかも。
もし、麒麟もしくはその手下であれば、回避しなければならない。
でも、どうやって?
考えながら、私は瞳の高感度センサーと望遠機能を作動させる。
私の瞳が捉えたのは、見たことのある、さわやかな笑顔だった。
──ダンスパーティーの時の、エリナのパートナー…。どうしてこんなところに?
私はブレーキをかけて、トラックをその男性の10メートルくらい前で止めた。
止まるかどうか迷っていたので、急ブレーキになってしまい、衝撃で知美も目を覚ました。
「ど、どうしたの? 東京についたの?」
知美はあわてて、目をこすりながら、不安そうに周囲を見回す。
「お客さんみたい。ちょっと、お姉ちゃんが話してくるから、知美はこのまま乗ってて」
私はまだ心配そうな表情をしている知美にそう言い残して、トラックを飛び降りた。
そして、少し警戒しながら、その男性に歩み寄っていく。
だって、こんな早朝に高速道路のどまんなかに突っ立っているのだから、どう考えても普通ではない。
少し離れて、彼と対峙した。
どうしようか迷っていると、彼の方から話しかけてきた。その服は、ダンスパーティーの時にきていた、タキシードそのままであった。
「やあ、お久しぶり。マリさんっていったっけ。まさかこんなところで会えるとはね。ダンスパーティー以来だね。あ、この服はね、君にわかってもらうためにさ。どう、わかりやすかったろ?」
彼のわざとらしい笑い方に、私は警戒を強めた。自然と、口調も厳しくなっていた。
「あなたは、誰なの? エリナの友達って聞いてるけど」
私の問いかけに、彼はつぶやいた。
「私は、マリさんがもっとも会いたくなかった存在」
「…もったいぶらないでください」
「”かみ”の四天王の一人、欲望の麒麟だ」
麒麟は両手をひろげてにやりとした。
少年のように幼くて、色白で、整った顔立ちが、残酷にゆがんだ。
「そ、それで、何の用ですか。私は用事があるので、そこをどいてくれませんか? じゃまです」
私は精一杯の勇気を振り絞って叫んだ。
麒麟の顔が、トラックのハザードランプに照らされて、黄色く点滅している。
「そういうわけにはいかない。マリさんはこの世界にとって、危険人物だ。かといって、破壊することもできない。だから、私が永遠に君を管理してあげるのさ」
麒麟は歩み寄ると、そっと私の手をとった。まるで、女性をダンスパーティーに誘うかのように。
「さ、来てくれるかな。私の作り上げた、デザイアの塔へ」
そして、今は廃墟と化した荒野にそびえたつ、光輝く塔に顔を向けた。
私はパッと手を振り払う。
そして、麒麟をにらみつけた。
「おや、来てくれないのか。なら仕方がない」
麒麟が手を振って合図をすると、麒麟の後方の暗闇の向こうから、鉄のきしむような音が聞こえてくる。
がしゃがしゃと、それはものすごい数の何かがいることを思わせた。
「もしかして…」
「ふふ、頭のいいマリさんなら、もう気づいているかもしれないな」
私は心配になり、後ろの知美を振り返る。
フロントガラスに身を乗り出して、心配そうに、こっちを見つめていた。
私は腰に括り付けていたソウルセーバーを作動させた。
そして、目の前の麒麟に向かって、まっすぐに構える。
「そう、再生の1年で、人類とアンドロイドを根絶やしにした、鉄騎士団さ」
そして、いつのまにか、麒麟のうしろには、鉄騎士団の大群が整列している。
それは、高速道路の隅々を埋め尽くし、私と知美を乗せたトラックは、いつの間にか包囲されていた。
「おとなしく捕まるなら、辛い思いはしなくてもいいんだけど、どうだろう?」
私の足は震えていた。でも、こいつにつかまって、ただで済むとは思えなかった。
かといって、これだけの大軍をすべて倒しきることも不可能に思える。
すると、狙うのは麒麟だけ。
──【時間圧縮】。
私は心の中で唱えて、思い切り地面をけって、走りだした。
「そうか、それがマリさんの選択なんだね…」
目前で、ソウルセーバーを振り上げる私に、麒麟は冷静につぶやいた。
(つづく)
読んでくれてありがとうございました。
投稿のペースですが、当面は隔日にさせていただきます。(書くのが遅くてすみません…)
次回は、水曜日の午後7時に投稿します。
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