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27.君を待っていた

「えっ、私をですか…」


「そうだ。マリさんは気が付いていないが、その体は、普通のアンドロイドと比べ物にならないほど高性能で、もはや別物といっていい。あえて言うなら、最終兵器といったところだ。通常のアンドロイドでは、バトルスーツを着ていないわしにすらかなわない。デスベアーなんてとてもじゃないが、倒せない」


「でも、いろんな経緯があって、武器は外されたみたいです」


「しかしながら、その驚異的な能力は残っている。私と戦っていた時に、なにか感じなかったかね」


「そういえば、時間がものすごくゆっくりになって、町長がほとんど静止するくらいになりました、あと、見えない壁を作って町長の剣をはじきとばすこともできました」


「そうだ。わしが発見した、300年前の記録にも、そう記されていた。政府は、驚異的な能力を持つ軍事兵器用のアンドロイドを作った。それは頭脳の思考速度を上昇させる【時間圧縮】によりものすごい速度で動作し、【絶対防御】によりミサイルが直撃しても壊されないという性能を持っていた。しかし、ある欠陥が発見され処分されるはずだった。しかし、実際は行方不明になっていた。それが、マリさんの入っているその体なんだ」


 私は改めてこの体を眺める。胸元には水色のリボンがあしらわれていて、胸はきちんとふくらんでいる。

 ほっそりとした指先は女の子ぽくてかわいらしい。足をあげると、スカートのすそから、真っ白なふくらはぎがのぞいていた。

 とてもじゃないが、この体にそんな能力が秘められているとは思えなかった。


「その力は、最終的に、”かみ”と戦うときに、必須となる」


 自分の体から目を離して、私は町長を見つめた。


「倒すのはデスベアーだけではないんですか?」


「”かみ”を倒さなければ、この世界の人間に自由と平和はもどらない。これからもずっと、バシレイアのために資源を作り続け、いつくるともわからない天の裁きにおびえて暮らす日々が続くのだ。マリさん…、あなたと出会うことができた。これは、いまこそ”かみ”を倒すときだという、本当の神からの啓示だと思うのだ」


「でも、”かみ”は、空のずっと向こうのバシレイアというところにいるんでしょう。どうやっていくんですか?」


「それは、デスベアーを仕留めてからの話になる。もし、首尾よくデスベアーを討伐できたのなら、続きを話そう。今話しても、無駄になるかもしれないからね」


 そっか、まずはデスベアーを倒すことに全力を注ごう。

 私は、机のしたで両手を固く握ったのだった。

 そして、もしかしたら、”かみ”のところ、バシレイアに行けば、私がもとの世界に帰る方法を見つかるかもしれない。

 根拠のないことだったが、私はそのかすかな希望に心をあずけることにした。


 それから、私は寝ているエリナをよそに、町長からこの世界で生活していくための基本的な事項を教わった。

 机の上には、教科書もノートもなかったけれど、頭の中あるホワイトボードのようなものに書いておけば、この体は決して忘れないのだった。


 ひと段落したのか、町長はペンをボードの受け皿に戻した。


「さて、今日は早いが、午後はどうするかね。明日に備えて、休もうか」


町長の提案に、私はふと時計を見る。もうそろそろお昼だった。


「なんだか、不安なので、午後から剣の稽古をつけてくれませんが? 私は【時間圧縮】を使いません。平常の状態で、バトルスーツを着た町長の動きを追うことができれば、私の認知能力の底上げができるかもしれないと思うのです」


 【時間圧縮】を使わずに訓練することで、【時間圧縮】を使用したときは、さらに早く動作できるようになるかもしれない。


 私の提案に、町長は納得したようにうなずく。


「よしわかった。でも、無理するんじゃないぞ。壊されそうになったら、遠慮なく、【時間圧縮】をつかって、わしを叩きのめすんだぞ」


「町長さんも、無理しないでください」


 町長の目を見て、私は、遠慮がちにこっくりとうなずく。ふと、隣から声がしたので見てみると、


「おわったぁ…?」


と、起きたばかりのエリナが背伸びをしていた。



 午後から、エリナを管理室に閉じ込めて、私と町長は、この1週間いつもしてきたように、ホールの中央で向き合った。

 例によって、町長は薬を打ち、バトルスーツを着用して、準備万端だ。


「では、いこうか…」


 相変わらず、性格が狂暴になった町長の目線が怖くて、私はそっと目をそらすけど、それがいけなかった。

 気がついたら、後ろの壁まで吹き飛ばされていた。

 とっさに、【時間圧縮】を発動しそうになるが、ぐっとこらえる。

 この体が危険を感じると、自動的に発動しようとする、安全機能があるようだ。


「おらおらぁ! じっとしてないで、すこしは楽しませてくれよぉ!」


 町長は相変わらず、狂気の笑みを浮かべて、両手に持ったソウルセーバーで私をなぐりつける。

 薬が行けないのか、町長の普段のストレスが激しいのか、でも、楽しそうだからストレス発散になっていていいことかもしれない。


 私はそんなことを考えながら、【絶対防御】のシールドで、その攻撃を受け止める。

 そして、町長の動きを必死に目で追っていた。


「もっと壊したい! 破壊したい! 殺したいんだよぉ!」


 私は、シールドで町長の攻撃をはじきながら、ホールのなかを逃げ回っていた。そうすることで、【時間圧縮】を使わなくても、すこしずつ町長の動きが認識できるようになってきた。


 不意に、町長の剣が、シールドを突き抜けて、私の肩に命中した。

 私はあっという間に、壁にたたきつけられる。

 おかしい、たしかに【絶対防御】を発動させていたはずなのに。

 壁に埋もれながら、もう一度発動を試みたが、シールドは出てこない。

 そっか…、エネルギー切れか。そういえば、頭がぼんやりするし、体もだるい。


 それでも、町長はソウルセーバーを揺らしながら、こちらにせまってくる。

 もうやめたいけど、その声は今の町長には届かないだろう。

 エネルギーが切れているので、【絶対防御】の何倍もエネルギーを使う【時間圧縮】も使うことができず、狂った町長をぶっ叩いて正気に戻すこともできない。


──どうしよう、町長を止められない。私、ここで死ぬのかな…


(つづく)

こんばんわ。今晩もお付き合いただいてありがとうございます。

ブックマークありがとうございます。

PVも今までこんなになかったので、うれしいです。

明日も、午後7時に投稿予定です。

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